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日本マイクロソフト、Azureに最適化したクラウド型ERP「Dynamics AX クラウド」

 日本マイクロソフト株式会社は22日、クラウド型ERP「Microsoft Dynamics AX クラウド」の提供を開始した。

Microsoft Dynamics AX クラウドの画面

 Microsoft Dynamics AX クラウドは、ユーザー単位の月額サブスクリプションモデルとして提供するパブリッククラウドサービスで、2016年下期には、プライベートクラウドやオンプレミス環境でも提供する予定だという。なお、既存のDynamics AX 2012は継続販売する。

 米Microsoft、WW Product Marketing ERP, Microsoft Dynamics担当のPepijn Richterディレクターは、「新たなMicrosoft Dynamics AXは、すべてをクラウドで提供している。クラウドに乗せただけでなく、全体を見直してAzureに最適化したものである」とした。

 経営情報を統合管理し、可視化することで、戦略的な経営判断ができるようになり、さらにIoT対応することでデータを活用した革新的なビジネスが提供できるようになるという。

米Microsoft、WW Product Marketing ERP, Microsoft Dynamics担当のPepijn Richterディレクター

 Microsoft Dynamics AX クラウドでは、137の国と地域の法制度に対応しているほか、40言語および各国通貨に対応。日本向けのサービスでは、日本リージョンを構成する東京、大阪の2つのデータセンターから提供されるAzureを中心基盤に提供する。また、組織の変化に応じて、最適なシステムを選択・拡張することが可能で、プライバシー保護やサイバー犯罪の防御についても、高いセキュリティを維持しているのが特徴だという。

 さらに、新たな管理ツールであるDynamics LifeCycle Services(LCS)により、環境構築や管理を強化。クラウド型データ分析ツールであるMicrosoft Power BIと接続することで、最新の分析結果を可視化し、いつでも、どこでも、どのデバイスからも情報にアクセスして、素早い意思決定ができるようになるとした。

 「250~5000人規模の企業、グローバル対応やIFRS対応を図る企業のほか、導入・運用コストの低減とともに、小さく入れて、大きく拡張したいといったユーザーがターゲットになる。また、販売パートナーでは、バーティカルソリューションを持つパートナーのほか、パートナー間の協業による提案、ISVパートナーとの連携を通じた提案を行っていくことになる」(日本マイクロソフト 執行役 Dynamicsビジネス統括本部長の岩下充志氏)。

日本マイクロソフト 執行役 Dynamicsビジネス統括本部長の岩下充志氏

 ライセンスレベルは、財務会計や経理処理、プロジェクト管理、在庫管理などのEnterpriseユーザー、申請承認、作業指示のディスパッチなどのTaskユーザー、人事、経理管理の申請などの一般社員向け機能のSelf Serveユーザーを用意。「既存ERPの複雑なライセンス体系とは異なりシンプル化した」という。

 追加オプションとして、開発用、受け入れテスト、大規模受け入れテスト、パフォーマンステスト、大規模パフォーマンステストなどを提供するほか、サポートプランも用意している。

 販売は、従来のライセンスソリューションパートナー(LSP)に加えて、クラウドソリューションプロバイダー(CSP)経由でも販売開始するとのこと。

日本における販売戦略
製品構成

 またRichterディレクターは、「すでに、10社が本番環境で活用している。この10社の企業はさまざまな規模であり、各国に広がっている。また、48のパートナーソリューションがマーケットプレイスを通じて提供されており、Trust Centerにおいて、コンプライアンス、セキュリティ、プライバシーに対応した透明性の高いソリューションとして提供している」との現状を説明した。

 日本マイクロソフト Dynamicsビジネス統括本部Dynamics BGの杉本奈緒子シニアプロダクトマネージャーは、「新たなDynamics AXは、顧客の業務に深く入り込んだソリューションとなる。組織の変化に応じて柔軟な拡張が可能であり、信頼性の高いクラウドで安定稼働できること、短期間での構築と継続的な更新が可能であり、IT投資を短期間でビジネス価値にすることができる。また経営情報を可視化し、いつでも、どこでも、どのデバイスでも利用できるという特徴を持つ。また、管理ポータルであるLCSでは、自動デプロイが可能であり、テレメトリー情報での管理も可能になる。今回から、月額サブスクリプションモデルを用意しているため、小さくスタートすることもできる」とした。

日本マイクロソフト Dynamicsビジネス統括本部Dynamics BGの杉本奈緒子シニアプロダクトマネージャー
特徴と新しい価値

 日本マイクロソフトの岩下執行役は、「Microsoftでは、3つの野心を掲げており、そのうちのひとつが『プロダクティビティとビジネスプロセス』。今回のDynamics AX クラウドの投入によって、『プロダクティビティとビジネスプロセス』が完成系に近づく。マイクロソフトにはプロダクト中心のビジネスが多いが、Dynamics AXではビジネスソリューションを提供するものであり、BI、AI、IoTへの対応を図ることで、クラウドを通じて、よりよいサービスをクライアントに提供できる」とした。

 さらにRichterディレクターは、「ERP市場におけるナンバーワンシェアを目指したい。現在、200万以上のユーザーがあり、これを指数関数的に増やしたい。多くの企業が俊敏性を高めたいと考えており、われわれには大きなチャンスがある。中堅企業向けにエンド・トゥ・エンドのソリューションを実装できる強みと、エンタープライズ市場向けには管理部分の強みを訴求したい」と述べた。

 日本においては、Soup Stock Tokyoを展開するスマイルズが早期導入を行った。

 同社 経営企画本部情報システム部の佐藤一志副部長は、「Dynamics AXは、カスタマイズがしやすく、APIによって、ほかのシステムとの連携が可能であるという点が特徴。連携にかかわるコストが低いため、さらに多くの連携を試すことができ、システム開発コストの削減や、アジリティを高めることにつながった。約30分でAPIを経由したデータ連携が可能であり、さらに、データを分析する部分がうまく機能し、拡張性が高い。規模の小さい企業にとってはメリットが大きい」としたほか、「LCSから簡単に環境構築ができる点、開発がVisual Studioから行える点、AAD(Azure Active Directory)認証が標準である点も大きなメリットだ」などとした。

スマイルズ 経営企画本部情報システム部の佐藤一志副部長

大河原 克行