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Treasure Data社CEOが語る、オープンソースをビジネスにするためのカギ

Hiro Yoshikawa(芳川裕誠)氏(Treasure Data)

 初日最後のキーノートセッションでは、Treasure Data社CEOのHiro Yoshikawa(芳川裕誠)氏が、オープンソースをビジネスにするためのカギとして、エコシステムの重要性を語った。なお、芳川氏はRed Hatや三井ベンチャーズなどを経て2011年に米国でTreasure Dataを創業した。

 Treasure Dataはクラウド型データ分析プラットフォームを提供しているが、芳川氏は「『Treasure Dataはオープンソースの会社だ』と私は言っている」と言う。キーコンポーネントとなるソフトはオープンソースで公開しており、ログ収集ソフト「Fluentd」はGoogleをはじめ世界の企業で採用されているという。そうしたデータ処理のソリューションがいろいろある中で、「シンプルなend-to-endのフルマネージドなサービスを提供する」のがTreasure Dataのソリューションだと氏は説明した。

 芳川氏は、プロプライエタリの時代からオープンソースの時代への移り変わりをふり返り、オープンソースソフトウェアの初期のビジネスモデルとして、オープンソースライセンスと商用ライセンスのデュアルライセンスを挙げた。

 時代はさらに移り変わり、GoogleやFacebookがコモディティハードウェアとオープンソースソフトウェアの組み合わせで莫大(ばくだい)なユーザーに対応する、クラウドとモバイルの時代となった。また、Amazon Web Services(AWS)によって企業がクラウドに移行するようになり、ソフトウェアの販売や開発の形態にも影響した。「従来のソフトウェアは地理的に小規模に展開してきた。オープンソースだけが、クラウドの需要に対応できる」と芳川氏。

 そのうえで芳川氏は、「オープンソースプロジェクトの成功要因は、参加してもらうこと」としつつ、オープンソースプロジェクトの98%は初年度以降開発されておらず、84%は協力者がいないというデータを紹介。「それをどう避けるか。私の意見は、プロジェクトをハブとみなして、エコシステムとなるべきだ」と主張した。

 その例として、まずRed Hatの例が挙げられた。「当初はほかにも高度な技術をもっているところがあったが、Red Hatは“仕事しやすいディストリビューター”を目指した。そのために、たくさんのソフトやドライバーをサポートし、パートナーシップに投資し、長期的なサポートを提供した」(芳川氏)。

 続いて、Fluentdの例が挙げられた。Fluentdはプラグイン機構により、さまざまなログ収集元やログ集積先に対応している。「これをセキュアで堅牢に実現することで、データ収集でデファクトスタンダードになった」(芳川氏)。同様に、APIでエコシステムを作って成功した例として、社内チャットツールのSlackも挙げられた。

 最後に芳川氏は成功のカギとして、「モバイルとクラウドの組み合わせで成功すること」「ハブとなってエコシステムを作ること」とまとめた。

「オープンソースだけが、クラウドの需要に対応できる」
多くのオープンソースプロジェクトがうまくいかない現実
Fluentdのエコシステム
「ハブになろう」

(高橋 正和)