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ICTで疾患予防・克服――富士通、高度医療研究機関と共同研究へ

 富士通株式会社は24日、健康長寿社会の実現をめざし、高度医療研究機関との共同研究に関する協定を締結した。

 協定を結んだのは、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センター、ならびに東京医科歯科大学の4者。国立高度専門医療研究センター3者との共同研究では、日本人の死因上位を占める「がん」「循環器疾患」「認知症」などの予防と克服を目的とし、それぞれの機関の特色に沿った研究を行う。東京医科歯科大学との共同研究では、疾患の重症化予防の鍵となる医療分野のビッグデータ解析手法を開発する。

 具体的に国立がん研究センターとは、ゲノム情報と診療情報の統合をめざし、2016年度末までにゲノム医療実施体制のプロトタイプを整備。最新のゲノム医科学とICT技術、知識を動員したがんの治療・予防・先制医療の実現をめざす。

 国立循環器病研究センターとは、循環器疾患の克服・制圧に向け、生活習慣(食事・運動・睡眠・口腔ケアなど)のデータを解析。習慣の改善を促す介入方法や効果判定法を開発し、2018年度末までにエビデンス構築(医学的エビデンスに基づき構築される情報基盤)をめざす。ICTを活用した新規医療サービスや健康関連ビジネスの創出が期待される。

 国立長寿医療研究センターとは、認知症の早期発見システムを構築し、対象者の医学的情報と日常生活情報をビッグデータとして認知症の予兆を予測するため、2018年度末までに技術の確立をめざす。

 東京医科歯科大学とは、網羅的生体分子情報(ゲノムをはじめとする生物の体内にある分子の網羅的情報:以下、オミックス)を統合したデータベースと解析技法を確立し、オミックスを基盤とした次世代医療システムに関する情報収集方法と情報構築方法を研究。2014年度末までにプロトタイプの作成をめざす。オミックスと生活習慣情報を効率的に収集・構築する手法を確立することで、臨床現場での個別化医療を実現する分析手法の実現が期待される。

 富士通は、1970年代に医事会計システムを提供して以来、医療情報システムを数多く構築してきた。そのノウハウを「国民の健康寿命が延伸する社会の実現」という政府のテーマに生かすため、2013年12月に「未来医療開発センター」を設立。ICT活用による健康増進、重症化予防、疾患の早期発見、新薬創出、個別化医療などの実現について、国内外の機関や専門家と検討を重ねてきた。今回の協定もその一環となる。

川島 弘之