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Coltが事業戦略を説明、欧米/日本企業の要求に合う最適な形でサービスを提供

NaaSや低軌道通信衛星サービスなど次世代テレコムを目指す

 英Colt Technology Services(以下、Colt)は19日、同社の通信サービスや今後のロードマップ、低軌道(LEO)衛星通信を活用したサービスなど、製品および技術のグローバル/APAC戦略に関する説明会を開催した。

 Coltは、2023年11月に米Lumen Technologies(以下、Lumen)のEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域事業買収完了を受け、両社のサービス、ポートフォリオの統合を進めてきた。

Colt アジア太平洋地域社長の水谷安孝氏

 Coltのアジア太平洋地域社長の水谷安孝氏は、APACにおいてColtは西日本のネットワーク強化を進めるとともに、オーストラリアではシドニーにメトロサービスの構築を進めるなど、APACでの存在感が増していると説明。

 また、ここ最近起きていることとして、1つはインバウンドの需要が高まっており、欧米の顧客から、アジア全体のネットワークもColtがカバーしてほしいという引き合いが増えており、例えば小売業が、APAC各地の拠点を結ぶネットワークを作りたいという要望が多いという。

 もう1つはアウトバウンドの需要も増えており、日本の企業が欧米でのネットワークを構築するにあたって、一括でColtに任せたいという要望が増えていると説明。Coltの強みは、日本国内で担当者とやりとりをして、海外のネットワークを包括的に提供できる点にあるとした。

 3月には、大西洋横断海底ケーブルをニュージャージー/ニューヨークに接続する新ルートの提供も発表しており、Lumen買収以降、海底ケーブルの陸揚げ局からデータセンターまでをつなげる取り組みを進めているという。

 また、日本への投資がグローバルでも注目されており、Coltでは世界各国を回って顧客の要望をヒアリングしているが、特に日本のAIに対する投資は群を抜いており、より積極的に日本への投資を進めていくと語った。

 水谷氏は、Coltは顧客の要求に合う最適な形でのサービス提供を進めていくとして、顧客を大別すると「ネットワークが事業の核であり、差別化要因でもある」通信会社やハイパースケーラーなどの企業と、「ネットワークは事業にとって重要だが、差別化要因でもサービスの核でもない」エンタープライズ企業などの、2つのカテゴリーが存在し、Coltとしては両方に力を入れていくべきだと考えているとした。

 具体的には、前者の企業はネットワークのスペシャリストが社内に存在し、ネットワークも社内で管理、統合する傾向があるため、Coltが提供する個々のインフラや回線コンポーネントを自動化およびデジタル利用できるできるようにするとともに、コストリーダーとしてネットワーク構築をさらに強化していくと説明。一方で後者の企業は、できればネットワークはアウトソースしたいという傾向があるため、コンサルティングも含めた統合ソリューションとしての提供を進めていくとした。

顧客の要求に合う最適な形でサービスを提供

 さらに、現在の顧客の課題としては、AIの活用にあたってセキュリティを担保したい、複雑化するネットワークを簡略化したい、世界各国で事情が違う通信インフラを一元化したい、技術の進歩スピードに追いつけないといった問題を紹介。これに対してColtは、SASEなどを活用したセキュリティ向上、ほぼリアルタイムでの問題特定と対処、世界各国で統一したプラットフォーム、自動オーケストレーションを実現するNaaS(Network as a Service)といった「デジタルインフラストラクチャ」を提供し、通信業界の進化を牽引する次世代テレコムを目指すとした。

通信業界の進化を牽引する次世代テレコムを目指す

 今後の戦略については、「統合、簡素化と自動化、成長、ワンチーム」の4つを挙げ、引き続きColtとLumenの統合を進めていくとともに、より自動化されたネットワークサービスの提供と、それによる利用企業のビジネスの成長、そしてそれらをColtがワンチームとなって対応していくと語った。

Coltの今後の戦略

AIで変化する市場、クラウド型でネットワークサービスを提供

Colt インフラストラクチャー/接続性ソリューション担当バイスプレジデントのPeter Coppens氏

 Coltのインフラストラクチャー/接続性ソリューション担当バイスプレジデントのPeter Coppens(ピーター・コペン)氏は、技術面での戦略を説明した。

 Coppens氏は、グローバル市場は動的に遷移しているとして、海底ケーブルの断線など地政学的緊張が通信業界を直撃しており、一方ではAIによるデータセンター投資の急増があり、電源や用地確保のためデータセンターが都市部から脱出する傾向が見られると説明。また、欧米では国際通信キャリアが事業を縮小し、自国内のビジネスに専念する傾向もあるとした。

 また、通信衛星回線を含めたアクセス多様化は進み、持続可能性への注目も着実に進行しており、コンプライアンスおよび規制の重要性は、欧州だけでなく日本を含む世界各国で拡大しており、こうした課題に対してもColtは対応を進めているとした。

動的に遷移するグローバル市場

 AIが主導する市場の進化としては、分散配置された事前訓練エンジンでは広帯域が求められ、データセンターが都市部から脱出する動きがある一方、小型の事前訓練エンジンはエッジでホスティングする動きもあり、クラウドでホスティングされた遅延センシティブなアプリケーションは、分散型ピアリングポイントが必要になると説明。大手クラウド事業者もAIについて日本への投資を表明するなど、市場はさらに成長することが予想され、こうした状況はColtにとっても大きなチャンスだと語った。

 ColtはLumenの事業買収により、欧州最大の光ネットワークプロバイダーとしての地位を獲得し、欧州および日本で最多のクラウド接続を提供していると説明。Coltは欧州の企業がAPACで、またAPACの企業が欧州で活動するのにベストなネットワークプロバイダーだとした。

 Coltではネットワークの各種機能を「Colt OnDemand」として、クラウド型のNaaSで顧客企業に提供しており、見積もりや可用性確認、発注、導入、回線のアップグレード/ダウングレードといったほとんどの機能を、顧客はリアルタイムで利用できると説明。さらに、ColtネットワークでのCO2排出量を表示するなど、ESGにもフォーカスしており、適切な情報に基づいて顧客が購買を決断できるとした。

Network as a Service(NaaS)、ネットワークの各種機能をサービスとして提供

 新たな取り組みとしては、低軌道(LEO)通信衛星を活用したサービスを紹介。現在はStarlinkを使ったインターネットアクセスを提供しており、日本およびほとんどのAPAC諸国で利用でき、利用用途としては、光ファイバーの敷設が困難な地域や、イベントなど短期間だけ利用したいといった需要があるという。さらに今後は、SD-WANのアンダーレイとしても利用可能になる予定だとした。

 また、低軌道通信衛星サービスの他にも、2025年には日系キャリアとの相互接続拡大やハイパースケーラーとの接続拡大を図っていくと説明。さらに、欧州や北米を終点とする接続を支援するため、より多くのプロジェクトを予定していると語った。