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デル、2025年を「水冷サーバー元年」と宣言――背景にAI需要と熱問題
2025年3月10日 06:15
デル・テクノロジーズ株式会社は7日、コンピューティングの過去25年とこれからの動向に関する説明会を開催した。2000年から四半世紀経ったいま、長年コンピューティングの世界に身をおいてきた同社 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏は、「2025年は水冷サーバーの元年になる」とした。
説明会の冒頭で上原宏氏は、「2000年からの四半世紀の間に、めざましいテクノロジーの進化があった」として、サーバーコンピューティングの世界におけるLinuxや仮想化ソフトウェアの登場、その後のクラウドサービスの進化、そしてAIの到来などを挙げた上で、「今後はAIによる代行や代替が進むだろう」と述べた。
また、2000年から2024年にかけてのインテル製ミッドレンジCPUの性能を独自に調査した結果、「インテルCPUのパフォーマンスは400倍進化した」と上原氏。さらに、CPUの性能だけでなく、国内におけるx86サーバーの出荷台数や、平均5年というサーバーの利用期間などから、日本市場で使われているコンピューティングパワーの推移を算出し、「2004年から2024年の20年間で、総コンピューティングパワーは278倍になった」とした。
次に上原氏が示したのは、x86サーバー市場におけるGPU搭載サーバーの伸長だ。GPU搭載機はAIが使われていることが想定されるが、「出荷台数では、x86サーバー全体に対してGPU搭載機は限られた割合にすぎないが、出荷金額を見ると急激に伸びていることがわかる。つまり、ビジネス規模として、GPU搭載機が非常に大きな影響を持っているということだ」と上原氏は強調した。
このように、CPUの性能が高まるとともに、GPU搭載機への需要が伸びる中、上原氏は「サーバーのインフラストラクチャーにとって最大の問題は熱対策だ。熱設計電力は右肩上がりになるため、いかにして電力をまかなうか、どのように冷やすかが最大の関心事になる」と語る。「冷却方式の変更は避けられない。今年は水冷元年になる」(上原氏)。
デル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏によると、同社が水冷サーバーの提案を始めたのは2017年。その後、「2022年から急激に案件が増加し、2024年には2022年比で3倍の案件数になった」(水口氏)という。
その背景として水口氏は、現在のCPUの発熱量が500ワット近くにまで高まっていることを挙げる。「500ワットというと、家庭用ハロゲンヒーター1本分に近い熱量だ。あの熱を空気で冷やすことはできない」と水口氏。また、消費電力の高いCPUは、より低い温度にしなければパフォーマンスが安定しないことも、水冷サーバーが注目される理由のひとつだとした。
現在デルが提供する水冷サーバーのラインアップは10機種を超えるというが、「水冷サーバーの実装には、新しい生態系が必要になる」と水口氏はいう。
これまでは、ITシステムインテグレーターが中心となってサーバーを導入していたが、「水冷サーバーの導入には、空調や電源、通信の専門家が必要になるほか、水冷や三相電源に対応する専用の設備、さらには床耐荷重が大きいデータセンターも必要となる。そのため、今後はデータセンター事業者や建設事業者も巻き込んで導入することになるだろう」と水口氏は述べた。