ニュース
AWSジャパン、製造業の「フィジカルAI」取り組みを解説――Hannover Messe 2026の最新デモも紹介
2026年5月22日 12:08
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)は21日、「製造業界のフィジカルAIにおけるAWSの取り組み」を紹介する記者向け勉強会を開催した。これまでロボット工学をベースに進展してきた製造業のロボットへの取り組みだが、「フィジカルAIによって従来手法から根本的に変化した」(AWSジャパン エンタープライズ技術本部 自動車・製造グループ 本部長の岡本京氏)と指摘。製造現場がフィジカルAIによって大きな変化を始めていることを紹介した。その実例として、2026年4月にドイツで開催された「Hannover Messe 2026」での基調講演や展示などの様子を交え、世界中の製造業で行われている取り組みを紹介した。
AIとロボティクスの融合がもたらす、従来手法からの根本的変化
AWSジャパンでは、フィジカルAIの進展によって産業構造が転換するスピードが加速していると指摘する。従来のロボット工学では、高精度、安定、高速といった要素と、さらにこれまで培ってきた実績が重視されてきた。
その一方で、事前プログラミングが必須で、すべての動作を事前に定義しなければならず、予期しない状況への対応が難しいといった技術的な課題があったという。またティーチング作業についても、1ラインごとに数週間から数カ月の教示時間がかかる上、段取り替えの度に再教示が必要となるなど、長い時間がかかり柔軟性が欠如していた。
こうした課題については、ビジョンセンサーで3Dマッチングし、複雑な形状の物体をピッキングするなどの方法でカバーすることが模索されてきた。しかし、それでも課題が残り、完全に解決することは難しかったとのこと。
それを大きく変えたのが、フィジカルAIによるアプローチだ。フィジカルAIを活用することで、開発アプローチはプログラミングから学習・推論ベースへ、動作パターンは固定動作から適応的動作へ、判断方式はルールベースから学習ベースへと、手法が根本的に変化した。
これまで別々に進化を続けてきたAIとロボティクスの融合がスタートしたのは、AI側にVLA(Vision-Language-Action)モデルが登場したことが一因であり、自然言語指示と視覚情報からロボットの行動を直接生成することが可能になった。また、物理法則を理解して世界の次の状態を予測するWFM(World Foundation Model)の進化により、Sim-to-Realのギャップを劇的に縮小できるようになった。
ロボティクス側においても、ヒューマノイドの実用化が進行し、アクチュエータ、バッテリー、素材などの要素技術が進化して、高精度化と低コスト化が進行した。さらには、倉庫や工場での大規模な実稼働事例が公開されるなど、産業ロボット大手のオープン化も影響しており、従来はクローズドだったロボット制御がソフトウェアで拡張可能になった。加えて、NVIDIA Physical AIスタックによる高度なシミュレーションが可能になったなどの変化もあった。
こうしたAI側、ロボティクス業界側の変化とともに、Amazon Web Services(AWS)は2026年に「フィジカルAI開発支援プログラム」を実施し、AWSの技術、実績を活用したフィジカルAI開発を支援した。「Physical AI on AWS」のリファレンスアーキテクチャも公開している。
「Hannover Messe 2026」で披露されたフィジカルAIの具体像とデモ
こうした成果の発表の場となったのが、4月にドイツで実施された「Hannover Messe 2026」だ。AWSのGM, Automotive & Manufacturing,であるOzgur Tohumcu氏が、「AWSによる大規模な産業AI実現」をテーマに基調講演を行い、「産業AIは、大規模展開してこそ意味がある」とアピールした。
ブース展示では、フィジカルAIとしてエージェントが複数のロボットを連携させて工程を実行する様子を紹介。二足歩行ロボットは、クラウドでVLA学習を行っている。シミュレーションではクラウド上で強度シミュレーションし、その結果を生成AIが診断することで、設計のアドバイスを行う様子をシーメンスとの共同展示で公開している。また、エージェンティックAIとしては、サイロ化したERP/MESなどのデータを横断的に確認して問題解決するデモが紹介された。
また、AWS自身が活用しているAIをブース内で紹介した。「従来のブース展示は、弊社よりもパートナーの展示が多くなっていたが、今回の展示では弊社自身の展示割合が多くなった」(AWSジャパン 自動車・製造事業開発本部 インダストリーソリューションアーキテクトの山本直志氏)。
フィジカルAIのデモでは、物理的な装置の計画・制御にAIを活用している様子を紹介。コースター積み下ろし用協働ロボット、コースター積み込み用協働ロボット、レーザー彫刻機、AI品質検査装置など各フィジカルAIが、エージェントAIによって協調して柔軟に動作し、メタルコースターを作る一連の流れを展示した。
エージェントAIによるオーケストレーションとしては、注文を受けるとエージェントAIが起動し、各装置からの情報をもとに操業全体をオーケストレートする様子が紹介された。また、画像生成AIによるデザイン生成として、Amazon Novaを利用してコースターのデザインを生成し、デモ生産ラインへ発注する様子も展示された。
また、ロボットビジョンにより物体検知を行うことでコースターを正確に積み上げ・積み下ろしを行う様子や、AWS上で学習されたVLAを用いたヒューマノイド「Unitree G1」が完成したコースターを机まで運搬する様子も紹介された。
なお、フィジカルAIとしてヒューマノイドを活用したデモなどが行われることが多いものの、フィジカルAI=ヒューマノイドと考える必要はないという。「ハノーバーメッセの会場でも、同様の議論をしている様子を見かけたが、従来型のFAの中にフィジカルAIを組み込んだものも十分にあり得る。ヒューマノイド型は、センサーなどの技術を紹介できることもあって取り上げられることが多い」(AWSジャパン 自動車・製造事業統括本部 インダストリースペシャリスト & ソリューションズ APJ本部長の川又俊一氏)と説明している。













