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NEC、顔情報を保存せずに顔認証を実現する生体情報利用デジタル署名技術を開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)は26日、顔認証の精度を維持したまま、顔情報を保存することなく顔認証を実現可能な生体情報利用デジタル署名技術を開発したと発表した。これにより、顔情報の漏えいリスクを抑えたより安全・安心な認証を実現する。

 開発した技術は、登録時と認証時でゆらぎのある顔情報からであっても、本人の鍵を生成可能な技術。従来の顔情報の照合ではなく、顔情報から生成した鍵の照合により顔認証を実現できるため、顔情報の保存が不要となる。

技術の概要

 認証時に撮影した顔情報は、顔の向きや表情、撮影環境などにより、同一人物でも登録時からのゆらぎが生じ、これにより他人の鍵が生成されるリスクがあった。この課題に対して、撮影ごとに変化する顔情報においても本人の鍵を生成する、独自のアルゴリズムを開発した。

 同アルゴリズムでは、登録時と比較した撮影時の顔情報のゆらぎの大きさを推定し、推定されたゆらぎが大きい場合には他人と判定することで、他人の鍵の生成を防止する。これにより、従来の顔認証と同等の高精度な認証を実現する。照合の際は、総当たりではなくゆらぎの小さな鍵のみを照合させることで、不要な処理を削減し、大規模な認証に耐える高速な処理を実現する。

ゆらぎ量を推定し高精度に本人の鍵を生成

 顔情報から生成した鍵を用いて認証する方法における、鍵の漏えいリスクに対しては、生成した鍵を保護したまま照合可能な秘密計算手法を開発した。同技術により、顔情報を鍵に変換してから照合するまでの一連の認証処理を、暗号化された状態で実行できる。これにより、鍵の漏えいリスクがなくなり、安全・安心な顔認証を実現できる。

秘密計算による鍵漏えいリスクの防止

 技術は、顔認証だけではなくすべての生体認証において適用可能。また、同技術は、ECDSAやEdDSAなどの標準デジタル署名方式に準拠したデジタル署名を生成できるため、電子文書に対する真正性の証明や、電子契約、デジタルアセットの取引、デジタル証明書の提示などにも利用できる。

 NECは、2025年度中にまずは決済や入退場などの用途で同技術の実証を進めるとしている。