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「パフォーマンスが50%以上向上」、CCCMKホールディングスがSnowflakeの導入効果を説明

 Snowflake合同会社は27日、CCCMKホールディングス株式会社によるSnowflakeの活用について説明会を開催した。Snowflakeの導入により、CCCMKホールディングスではパフォーマンスが50%以上向上するなどさまざまな効果を実現している。

 CCCMKホールディングス IT戦略本部本部長の松井太郎氏によると、CCCグループでは2021年よりCCCMKホールディングスを中心に、グループ各社でSnowflakeの導入を開始したという。

 「まず、CCCMKホールディングスにて3つに分散していたデータベースをSnowflakeに統合した。次に、グループ会社の株式会社Catalyst・Data・Partnersでは、出版業界向けのオープンデータプラットフォームをSnowflake上に新規に構築した。また、カルチュア・エクスペリエンス株式会社では、TSUTAYA事業の分析環境をモダン化。さらに、データ基盤を保有していなかったカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社では、Snowflakeのデータシェアリング機能を活用してストレージレスのデータウェアハウスを構築している」と松井氏は説明する。

CCCMKホールディングス IT戦略本部本部長 松井太郎氏

 2024年4月にTポイントとVポイントを統合して新たなVポイントをスタートさせた際にもSnowflakeを活用し、三井住友カード株式会社と共に両社が持つデータを統合した。新生Vポイントの有効ID数は1億5400万で、アクティブユーザーは8600万人にのぼるという。

新生Vポイントのアクティブユーザーは8600万人

データ活用の高度化に向け基盤が限界に

 Snowflakeの導入前、CCCMKホールディングスでは激増するポイントデータやデータ活用の高度化に対応するにあたり、基盤の限界を迎えていたという。その要因のひとつが、分散したデータベースだ。「データベースが分散してコストも増大し、パフォーマンスの低下が深刻化していた。パフォーマンスを改善するには、クラウドでより大規模なリザーブド契約を結ぶか、オンプレミスであればさらに大きなハードウェアを購入する必要があり、分析基盤が事業の負担となる可能性があった」と松井氏は語る。

 また、加盟企業の増加や分析業務の高度化で、ワークロードが年々増加していたことも課題だった。月初や繁忙期にはクエリ遅延やクエリ待機が発生し、業務に支障が出ていたことから、「データ活用をさらに高度化するには、既存のアーキテクチャでは対応しきれない」と松井氏は判断した。

 データ活用の民主化を促進するにあたっても、スケーラブルな基盤が必要だった。同社では、非エンジニアや非アナリストを含め全社員にBIアカウントを提供していたが、高負荷に耐えられないためデータベースよりファイルを抽出してBIとの連携を図っていた。ただ、「これでは中間作業が発生する。やはり拡張性があり、幅広いワークロードに耐えられる基盤でなければ」と考えたという。

 こうしてCCCMKホールディングスでは、まずオンプレミスの分析データベースをクラウド化し、Azure Synapse Analyticsへと移行した。しかし、それでも増加するワークロードには対応しきれなかったことから、さらなる移行に向けて新たなビジョンを掲げた。それは、データベースを統合しつつ、リソースの競合を解消できるアーキテクチャであることと、ヘビーなクエリやBIようなライトなクエリ、さらには機械学習のような突発的なワークロードなど、さまざまなワークロードに対応できること、そして新規事業やコラボレーションが加速できる柔軟なデータ機能を備えていることだ。

 「これらの要素に適合するアーキテクチャを模索した結果、Snowflakeにすべてを移管することになった」(松井氏)という。

CCCMKホールディングスの分析基盤史

パフォーマンスやコスト効率が大幅に向上

 Snowflake導入の効果について松井氏は、「パフォーマンスの改善やコスト効率の向上だけにとどまらないさまざまな効果があった」と話す。

 まずパフォーマンスに関しては、データクエリの速度が飛躍的に高まり、「控えめに見ても従来比50%以上は向上した」と松井氏。特に、月初などのクエリ繁忙期でもクエリ遅延がゼロになったほか、BIとの親和性や目的に応じたリソースの提供により、「迅速な意思決定にも貢献できるようになった」としている。

 またコスト面では、従量課金のためリザーブド契約よりもコスト効率が良く、必要なリソース消費に応じたコスト管理が可能となったことから、「インフラコストはリプレース前の費用と比べて60%以下になった」という。また、データを活用した新規サービスにおいても、「データシェアリングを通じて瞬時に分析リソースを提供できている」と松井氏は説明する。

 データサイロも解消した。Oracle Exadata、Azure Synapse Analytics、Verticaに分散していたデータベースをSnowflakeに統合したことでサイロが解消し、データ更新のリードタイムも向上した。また、システム構成が集約されたことで、エンジニアの保守作業やスキルの育成も最適化されたという。

 さらには、セキュリティとプライバシーの強化も実現した。従来より同社では、会員のプライバシーを保護するため非常に厳しいセキュリティアクセスコントロール要件を運用していたというが、「Snowflakeの機能によってプライバシー保護がより強固なものとなった」と松井氏。また、シンプルな設計になったことで、運用業務が効率化し、これまで以上に安全な運用が可能になったという。

Snowflakeの導入効果

データ活用の最大化に向けて

 今後について松井氏は、「Snowflakeを活用して4つのテーマに取り組みたい」としている。

 1点目は顧客価値の追求だ。「より一層データドリブンな経営を目指し、真のOne To Oneレコメンドを実現したい」と松井氏はいう。

 2点目はグループシナジーの最大化だ。「TSUTAYAの起源であるエンタメ・ライフスタイル提案をグループ全体で最大化したい。グループ内外のさまざまなエンタメ情報を統合し、日本のエンタメ市場をより一層盛り上げていく」と松井氏。

 3点目は新規事業の促進だ。「CCCグループの誰もがデータにセキュアにアクセスし、データを活用したビジネスの加速や、さまざまな企画にチャレンジできる環境を整備する」という。「CCCグループには『世界一の企画会社を目指す』というテーマがある。その実現に向けてもこのような環境を準備することが重要だ」と松井氏は述べている。

 そして4点目はコラボレーションの拡大だ。「Snowflakeユーザー同士であれば、データコラボレーションがセキュアにできるようになっているため、異業種とのコラボレーションを通じて自社だけでは提供できない顧客体験を模索する。オープンかつセキュアなデータ企業に進化する上でも、Snowflakeの機能を活用していきたい」と松井氏は述べた。