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富士通とAMDが省電力AIコンピューティング基盤の開発で協業、ArmベースCPUとAMD GPU、両社のソフトウェアを連携

 富士通株式会社と米AMDは1日、AIのオープン化を加速するサステナブルなコンピューティング基盤の実現に向けて、戦略的協業を発表した。

 2027年を目標に、両社が共同で開発したAIおよびHPCコンピューティング基盤を提供。電力を抑えながら、多くの顧客がAIを活用できる環境の構築を目指す。これにより、大規模なAIワークロードの処理を実現し、データセンターのTCO削減を促進する新たな選択肢が提供できるとしている。

富士通 執行役員副社長 CTO、CPO、システムプラットフォーム担当のヴィヴェック・マハジャン氏(左)と、AMD エグゼクティブ バイスプレジデント兼チーフコマーシャルオフィサーのフィル・グイド氏(右)

 具体的な協業内容は、富士通のCPUであるFUJITSU-MONAKAと、AMDのGPUであるAMD Instinctアクセラレータのハードウェアおよびソフトウェアの連携強化による「エンジニアリング協業」、両社のソフトウェア資産を活用したオープンソースエコシステムの成長による「エコシステム協業」、ユースケースの拡大とインフラストラクチャーのグローバル展開を加速する「ビジネス協業」となる。

具体的な協業内容

 富士通 執行役員副社長 CTO、CPO、システムプラットフォーム担当のヴィヴェック・マハジャン氏は、「AIが注目を集める一方で、GPUの価格が高く、利用しにくいという課題がある。また、データセンターにおける電力の課題もある。AIのオープン化とサステナブルを両立した基盤を新たに構築し、より多くの顧客、パートナーが利用できるようにする。さまざまなチャネルを通じた展開も想定しており、富士通のパートナーとAMDのパートナーにより、大きなエコシステムを構築することができるだろう。技術面の協業だけでなく、事業を創出し、ビジネスを成長させるための協業であり、1+1で2以上の価値を提供したい」と述べた。

富士通 執行役員副社長 CTO、CPO、システムプラットフォーム担当のヴィヴェック・マハジャン氏
AI市場の課題を解決できるソリューションを提供するという

 また、AMD エグゼクティブ バイスプレジデント(EVP)兼チーフコマーシャルオフィサーのフィル・グイド氏は、「両社が持つ最先端のテクノロジーを持ち寄ることで、オープンソースのAIハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)プラットフォームを強化できる。エネルギーコストを改善できるだけでなく、富士通のクリティカルシステムと、AMDのテクノロジーを組み合わせて、サステナブルなソリューションも提供できるようになる。さらに、オープンイノベーションによって、選択肢の自由度を高めることができるのも特徴であり、エコシステムの広がりにも貢献できる。AIの進化におけるさまざまな課題を解決できる」とコメント。

AMD EVP兼チーフコマーシャルオフィサーのフィル・グイド氏

 また、「AMD ROCmソフトウェアは、AIモデル向けのプログラミングモデルやツール、コンパイラ、ライブラリ、ランタイムといった幅広いセットを、オープンソースエコシステムを通じて柔軟性を持ちながら提供でき、選択肢をもたらすことができる。多くのユーザーのイノベーションに貢献できる」と語ったほか、「日本は、AMDにとって重要な市場である。今回この協業を通じて、TCOのメリットだけでなく、日本のエネルギー事情にも対応した提案も可能になる」とも述べた。

 FUJITSU-MONAKAは、最先端の2nm半導体プロセスを採用した次世代の高性能・省電力CPUで、Armv9-A SVE2アーキテクチャを採用する。CPUコアは富士通独自の設計で、144コアの2ソケット構成としており、AIやHPC、データセンターなどの幅広いワークロードをカバー。あらゆる場所で能力を発揮する高いコストパフォーマンスが特徴だとした。

 一方のAMD Instinctアクセラレータは、シングルサーバーソリューションから、世界最大級のエクサスケール級スーパーコンピュータまで、あらゆる規模のデータセンターでの活用を想定したGPUで、マトリックスコアテクノロジーによるAMD CDNAアーキテクチャ上に構築。高効率のINT8やFP8のほか、HPC向けのFP64まで、幅広いサポートが可能だ。

 ArmのテクノロジーをベースにしたCPUであるFUJITSU-MONAKAと、AMDのテクノロジーをベースにしたGPUのAMD Instinctアクセラレータを組み合わせて、AIの推論だけでなく、学習に適した環境を構築。データ解析やデータ生成にも活用できるようになるという。

 コンピューティング基盤の提供方法は、サーバーとしての導入や、クラウドサービスの活用など、ニーズにあわせて柔軟に検討していくとのこと。

富士通とAMDが培ってきたテクノロジーを融合して提供する
2027年の提供を目指して開発を進める

 また、AMDのオープンなGPU用AI/HPCソフトウェアスタックであるAMD ROCmソフトウェアと、富士通のFUJITSU-MONAKAのソフトウェアを基盤として、OSSコミュニティや団体との連携を強化。AIコンピューティング基盤に最適化したOSSベースのAI向けソフトウェアの開発を推進するほか、AIコンピューティング基盤をグローバルに展開し、マーケティング活動や顧客との共創活動を共同で実施する。さらに、企業におけるAIユースケースの拡大や、AIの社会実装の促進に向けて、共同でカスタマーセンターを開設することにも取り組むという。

 今回の協業による2027年以降の事業規模などについては公表していない。

協業締結の覚書に署名する、富士通のマハジャン執行役員副社長と(左)、AMDのグイドEVP
署名された協業締結の覚書