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Google Cloud、自治体のゼロトラストセキュリティ導入を支援する新プログラム提供開始
宮崎市の担当者が登壇、同市での取り組みを説明
2024年10月10日 06:15
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社は8日、自治体が段階的にゼロトラストセキュリティを導入するための新プログラム提供を始めると発表した。多くの自治体では、境界型防御に依拠した3層の対策によってセキュリティを確保しているが、2024年5月、デジタル庁が2030年ごろまでにゼロトラストセキュリティへの移行を呼びかけた。今回の新プログラムはそれに呼応したもので、自治体が段階的にゼロトラストセキュリティ導入することを支援していく。
記者説明会には、先行してGoogle Cloudを活用しゼロトラストセキュリティを実践している宮崎県宮崎市の担当者が登壇。Google Cloud、Google Workspaceを利用しながら、セキュリティを確保しながら課題となっている働き方改革を進めている様子を紹介した。
自治体のセキュリティ強化を支援する2つの支援を提供
今回Googleでは、「自治体のゼロトラストセキュリティ導入に向けたロードマップの策定支援」と「Chrome EnterpriseおよびGoogle Cloudのゼロトラスト対応ソリューションの導入支援」の2つを提供する。前者では、ハイブリッド型からクラウドネイティブ型まで、ゼロトラスト環境実現のため、タイプ別に推奨モデルを基に簡易アセスメントを行い、導入に向けたロードマップの策定、実施項目の洗い出しなどの支援を行う。
また、先行応募した20自治体を対象に、事前アセスメントおよび移行ロードマップ策定支援を期間限定で無償提供する。同時に、Chrome EnterpriseおよびGoogle Cloudのゼロトラスト関連製品の特別なオファリングをしていく。
新プログラム提供の前提として、コロナ禍でテレワークなど会社外で働く機会が増えたことで、従来型のオフィス内を守る境界型セキュリティの限界が明らかになったことが挙げられる。
グーグル・クラウド・ジャパン パブリックセクター営業本部 本部長の和泉綾志氏は、「職場中心のこの働き方から、人中心の働き方へのシフトが進んできた。この観点からゼロトラストも普及しているが、調査によれば、企業や公的機関における業務のクラウド化が進み、ブラウザ上で重要なデータを取り扱う傾向が増加している。ガートナーでは、今後の動向として、『2030年までには、エンタープライズブラウザはシームレスなハイブリッドワークを実現するプラットフォームの中心となる』と発表している」と指摘。エンタープライズブラウザが重要な役割を果たすと強調した。
ゼロトラストについては、5月の記者会見で当時のデジタル庁大臣だった河野太郎氏が、自治体が三層分離からゼロトラストへ移行する必要性をアピールしていたが、「今後、公的機関においても当然このゼロトラストセキュリティの必要性が高まり、場所やネットワーク強化にとらわれずに業務環境にアクセスすることが求められていくだろうと考えている」と前置き。
「国でゼロトラストを実現している事例となるのがデジタル庁。今年の我々の基幹のイベントであるGoogle Cloud Nextでデジタル庁に登壇いただき、1700を超える全国の自治体や中央省庁が利用するガバメントクラウドに、アクセスを保護するブラウザを主体としたゼロトラスト戦略を用いて、コストをかけず、シンプルな運用で安全にアクセスする環境実現という話をしていただいた」(和泉本部長)と、事例を紹介した。
ブラウザについては、セキュリティを担保した「Chrome Enterprise Premium」を提供している。グーグル 企業向けChromeブラウザ アジア太平洋地域 本部長の毛利健氏は、「クラウドやWebアプリケーションの増加に伴い、環境に依存しない働き方を実現する上で、ブラウザが重要なエンドポイントの役割に進化している。コストをかけず、ブラウザの持っているセキュリティの機能で、クラウドネイティブなゼロトラストを実現していく動きも活発になってきている」とブラウザに求められる役割が変わってきたと説明した。
こうした背景を受け、ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティソリューションであるChrome Enterprise Premiumが発表され、その後も機能強化が続いている。
「エンドポイントというとパソコンやモバイルなどの端末のイメージが思い浮かぶが、ブラウザをエンドポイントとしてとらえると、マルチOS上の運用を一元化することができ、環境に依存せずにシンプルなセキュリティ対策を実現できる」(毛利本部長)。
そしてグーグルでは、Chrome Enterprise Premium、ChromeOS、Google Workspaceを連携して利用することで、より効率的でセキュリティが守られた状態で仕事ができるとアピールした。
宮崎市が実際に進めている大きな変化を紹介
実際にGoogleのソリューションを使ってゼロトラストセキュリティへの移行を進めている宮崎県宮崎市の総合政策部デジタル支援課 課長補佐 兼 デジタル第一係長の松浦裕氏は、「宮崎市がDXや改革に本格的に取り組み出したのは、ここ1、2年のことになる。その契機となった1つ目は、大災害・大震災への対策のため。南海トラフ(地震)は必ず起こるが、このような大規模災害が起こっても行政のサービスを止めないでほしいというニーズがある。大災害にも耐えられるようなインフラにしないといけない。もうひとつの契機は、新市長とCIO補佐官が民間から来たこと。民間で仕事をされていた人なので、『今の時代、インターネット、クラウドにつながらないのはおかしい。どんどんスピードを上げて仕事をしていこう』という方向にかじを切ったことで、宮崎市でもGoogle Cloud、Google Workspaceを活用した働き方改革を進めている」と述べ、宮崎市が進めている大きな変化を紹介した。
セキュリティのコアにGoogle Cloudのサービスを利用し、Google Workspaceを使ってアプリケーションの制限、データ共有の制限などを行う。また、Context Aware Accessを利用して条件ごとのアプリ接続制御を、Chrome Enterprise Premiumを利用してデータ漏えい防止や挙動制御を、そしてChrome Enterprise Upgrade利用してログインドメイン制御などを行っている。
さらに、Googleの生成AI「Vertex AI」を使って議事録作成、内部検索など業務効率化を進めている。「実証実験の結果、自動文字起こしと議事録要約機能により議事録作成にかかっていた時間を約6割削減することに成功し、内部検索においても平均で20分の時間短縮を実現しているという結果が出た」(松浦氏)。
さらにデータ分析基盤、災害時の情報収集などにもGoogleのソリューションを利用し、スピードアップ、意識改革などにつながるプラス効果が出ていると松浦氏は説明した。