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NEC、倉庫や工場における自動搬送ロボットの安定稼働を実現する通信技術を開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)は6日、倉庫や工場における自動搬送ロボット(AGV: Automatic Guided Vehicle)を遠隔制御する際に、無線通信の遅延を抑えて安定化することで、AGVの停止や不安定な稼働を回避し、高い作業効率を実現する技術を開発したと発表した。

 NECでは、倉庫や工場などの作業現場における慢性的な人手不足という課題に対し、作業現場の生産性を向上するために、AGVを活用したソリューションの開発・商用化を進めている。

 AGVには自律的に稼働するものと、遠隔地やクラウド上のサーバーから制御するものがある。遠隔制御の場合、現場の無線ネットワークを通じて、AGVの状態認識および制御データの配信、搭載カメラで撮影した周辺映像の配信などを行う。この際、柱・壁・設備などの遮蔽物や、移動の影響で通信品質が低下し、円滑な制御に必要となる通信の遅延要件を超過することがある。また、映像データや制御データなど通信トラフィックが混在し、無線リソースの競合(順番待ち)が発生することで、通信遅延が変動することがある。

 これらは、AGVの稼働停止や状態認識・制御の不安定化を引き起こすが、複数の無線ネットワークでつながりやすい環境を構築することで、ある程度防げる。しかし、通信量が増大してアクセスが集中(輻輳)すると、通信の断絶や遅延が発生し、制御が不安定になることが課題となる。

 これらの課題に対してNECでは、通信品質の変動を予測して最適な無線ネットワークに切り替えることで、AGVの停止を回避する技術と、通信トラフィックの制御により、AGVの安定稼働を実現する技術を開発した。

開発技術の概要

 通信品質の変動を予測して最適な無線ネットワークに切り替えることで、AGVの停止を回避する技術は、通信の状態をパケット単位でリアルタイムに分析し、変動する通信品質を予測した上で、最も遅延が少ない無線ネットワークに切り替える。これにより、品質の良いネットワークに接続し続けられるため、通信遅延を抑え、AGV制御における通信の遅延要件の超過を避けることで、稼働停止を回避できるようになる。

 通信トラフィックの制御により、AGVの安定稼働を実現する技術は、あらかじめ設定したデータの内容や、要求される通信性能の要件(帯域、通信遅延および遅延の変動など)に応じてデータの送信タイミングを調整する、通信トラフィックを制御する。これにより例えば、映像データはAGVの稼働に影響のない範囲で遅延を許容しつつ、制御データは優先して送ることで、AGVの安定稼働を実現する。

技術の詳細

 NECは開発した技術について、2024年度中に実際の倉庫で実証実験を行い、2025年度の実用化を目指す。同技術は、遠隔地のサーバーがロボットの監視や制御を行う、あらゆるシステムに適用が可能で、将来的には、自動運転の遠隔管制、ドローンの遠隔操縦、建設機械の遠隔制御など、さまざまなシステムの安定稼働に貢献するとしている。