ニュース

IBM、次世代IBM ZメインフレームのAI性能を強化する「Telum IIプロセッサー」「Spyreアクセラレーター」を発表

 米IBMは現地時間26日、半導体に関する国際学会「Hot Chips 2024」において、次期IBM Telum IIプロセッサーとIBM Spyreアクセラレーターのアーキテクチャーの詳細を公開した。この新しいテクノロジーは、次世代のIBM Zメインフレームシステム全体での処理能力を大幅に拡大するように設計され、新しいAIのアンサンブルメソッドにより、従来のAIモデルと大規模言語AIモデルの併用を加速するとしている。

 IBM Telum IIプロセッサーは、次世代のIBM Zシステムを強化するために設計された新しいIBMチップで、周波数、メモリ容量が増加し、キャッシュ容量は40%増加、統合型AIアクセラレーターコアと、第1世代Telumチップと比較してコヒーレントに接続されたデータ処理ユニット(DPU)を特長とする。この新しいプロセッサーは、LLM向けのエンタープライズコンピューティングソリューションをサポートし、業界の複雑なトランザクションニーズに対応することが期待されるとしている。

 I/Oアクセラレーションユニットは、Telum IIプロセッサーチップに搭載された新しいデータ処理ユニット(DPU)で、メインフレーム上のネットワークおよびストレージにおける複雑なI/Oプロトコルを高速化するように設計されている。 DPUはシステム操作を簡素化し、主要コンポーネントのパフォーマンスを向上する。

 IBM Spyreアクセラレーターは、Telum IIプロセッサーを補完する、追加のAIコンピューティング能力を提供する。Telum IIとSpyreチップが連携することで、AIモデリングのアンサンブル手法(複数の機械学習またはディープラーニングAIモデルをエンコーダーLLMと組み合わせる手法)をサポートする、拡張性の高いアーキテクチャーを形成する。

 IBMでは、各モデルのアーキテクチャーの長所を活用することで、アンサンブルAIは個々のモデルよりも正確で安定した結果を提供できる可能性があると説明。IBM Spyreアクセラレーターチップは、アドオンオプションとして提供される予定。各アクセラレーターチップは、75ワットのPCIeアダプターを介して接続され、IBM Researchと共同開発された技術に基づいており、他のPCIeカードと同様に、Spyreアクセラレーターは顧客のニーズに合わせて拡張できる。

 Telum IIプロセッサーとIBM Spyreアクセラレーターは、IBMの製造パートナーであるSamsung Foundryが製造し、高性能かつ電力効率に優れた5nmプロセスノード上に構築される。両社は連携して、ビジネス価値の最大化と新たな競争優位性の創出を目的とした、AIを活用した幅広い先進的なユースケースをサポートすると説明。AIのアンサンブルメソッドにより、顧客は予測結果をより迅速かつ正確に得られるとしている。

 また、これらの処理能力の統合により、LLMと従来のニューラルネットワークを組み合わせて、パフォーマンスと精度を向上させたアンサンブルAIによる、住宅保険請求詐欺の検出強化や、疑わしい金融取引を高度に検知し、規制要件へのコンプライアンスをサポートして、金融犯罪のリスクを軽減する高度なマネーロンダリング対策、アプリケーションライフサイクルの加速、知識と専門性の移転、コードの説明、変換を推進するAIアシスタントといった、生成AIを活用したユースケースへの適用を加速するとしている。

 Telum IIプロセッサーは、IBMの次世代プラットフォームであるIBM ZおよびIBM LinuxONEを支える中央処理装置となる。IBM Zおよび LinuxONEの顧客への提供開始は、2025年を予定する。現在技術プレビュー中のIBM Spyreアクセラレーターも、2025年に提供を開始する予定。