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NEC通信システム、養豚業のDX化とアニマルウェルフェア対応の実証実験を実施

 日本電気通信システム株式会社(以下、NEC通信システム)は28日、養豚管理獣医師の大井宗孝氏指導のもと、5月より実養豚農場にてDX化とアニマルウェルフェア対応の実証実験を開始したと発表した。

 実証実験は、「NEC アニマルウェルフェアソリューション ベーシック」で提供している機能を元に実施した。アニマルウェルフェアは、国際獣疫事務局(WOAH)では「動物の生活や死の状況における肉体的および精神的状態」と定義されており、動物を手厚く管理するということではなく、取り扱い方に配慮しようとする考え方を指している。

 紙による管理の場合には、現場で記入して現場に残す紙(母豚カードなど)に加えて、事務所でデータ入力するための転記(各種管理野帳や管理項目別集計)、現場作業終了後に事務所に戻ってから転記した集計記録を用いてのパソコンへのデータ入力が必要だった。

 実証実験では、現場でタブレット入力することにより、即座にクラウドシステムにデータが送られ記録・蓄積され、事務所とタブレット端末にてデータの集計結果の閲覧、分析が可能となった。これにより、飼養管理以外の作業の大幅な時間短縮が可能となることを確認でき、タブレットの入力操作では、できるだけ手書き入力をなくし、必要な入力項目を選択肢から選ぶ方式など簡易操作を実現した。

 これらにより業務全体の効率化が図られ、よりレベルの高い飼養管理への時間の有効活用、従業員の負担軽減につながると説明。今回の実証実験で、紙による管理に比べた場合の試算では、データの記録と処理作業時間を60%削減できる見込みとしている。

 また、各母豚の出産履歴のデータをもとに母豚の成績順位が容易に分かるため、優良母豚と不良母豚の把握が容易になった。正確な母豚成績把握による精密管理により、試算では一母豚あたり年間0.18頭、母豚1000頭あたり年間180頭の出荷増を見込めるという。

 ソリューションでは、アニマルウェルフェアの達成度をWOAHの基準と農林水産省の指針を参照し、独自に定めた5つの指標(良い給餌方法、良い舎内環境、良い健康状態、正常な行動、良い飼育管理)を用いて、それぞれの項目ごとに具体的な評価項目を定義、その達成度をレーダーチャートで表している。実証実験では、まず通常の飼養管理を進める中で、アニマルウェルフェアの評価を実践する試みを開始した。今後、データの記録・蓄積と共に適正なアニマルウェルフェア評価の検証を実施していく。

 NEC通信システムでは、今回得た知見をもとに「NEC アニマルウェルフェアソリューション ベーシック」の機能を強化し、さらに実証実験を行う。また、実証実験のトライアルを希望する養豚業者を募集している。