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富士通、コンサルサービスの事業ブランド「Uvance Wayfinders」を発表

コンサルティング事業における13の注力領域を策定

 富士通株式会社は22日、コンサルティングサービスの事業ブランドとして、「Uvance Wayfinders(ユーバンス ウェイファインダーズ)」を発表。ビジネスコンサルティングとテクノロジーコンサルティングの両軸から、コンサルティング事業における13のプラクティス(注力領域)を策定し、業種知見とテクノロジーの専門性を融合した「コンサルプラクティス」を強化するという。富士通が中期経営計画で推進している事業モデル変革の「最後のピース」と位置づけた。

Uvance Wayfindersの強み

 また、コンサルティングスキルを持つ人材を、2025年度までに1万人規模へ拡充する計画も明らかにした。

 富士通 執行役員 SEVP CRO兼グローバルカスタマーサクセスビジネスグループ長の大西俊介氏は、「富士通が本格的に、本気を出してコンサルティングビジネスに取り組む」とし、「これまでのコンサルティングビジネスは業界を区切りにしていたが、産業構造が変わるいまは、それでは駄目だ。業種を超えた新たな事業モデルを作る必要がある。また、富士通の世界中のR&D拠点を含めて、大きなインパクトをもたらす価値提供につながるテクノロジーを提供でき、ここに富士通の強みが発揮できる」と述べた。

富士通 執行役員 SEVP CRO兼グローバルカスタマーサクセスビジネスグループ長の大西俊介氏

 ビジネスコンサルティングでは、「社会を俯瞰する広い視野で解決すべき課題をとらえ、机上の空論に終わらないリアリティのある事業変革を実現する」という役割を示しながら、Customer Experience(CX)、Sustainability & Verticals(SV)、Management Excellence(MX)、 Operational Excellence(OX)、Employee Experience(EX)、Technology Excellence(TX)の6つの領域で展開する。

 また、テクノロジーコンサルティングでは、「データとテクノロジーがもたらすインパクトを武器に、オファリングの活用実践知を組み合わせて、ビジネスアジリティの向上を実現する」と位置づけ、Applications、Data&AI、Agile、IT Value Transformation、Hybrid Infrastructure、Security、Key Focus Technologiesの7つの領域で展開する。

 時系列に沿って3つのステップに渡って、13のプラクティスを展開。現時点では、Wave2の段階にあるとし、SecurityおよびKey Focus Technologiesを除く、11の領域での提案と実行支援が可能だとしている。Wave1となるCX、Applications、Data&AIの3領域については、すでにロールモデルを構築しており、認定コンサルタントも配置しているとのこと。

 大西CROは、「富士通の強みは、クロスインダストリーである。デジタルの会社がクルマを作り、製造業によるサービスシフトという次元の話ではなくなっていたり、イオンやソニーのような企業はすでに業種の切り口では対応できない状況にあったりする。サステナビリティの世界も業種を超えないと実現できない。また、テクノロジーについては、これだけの研究施設を世界中に持っているのは富士通以外にあまりないと自負している。AIや量子などのキーフォーカス領域から、どのような社会構造が生まれるのかということに対するパラダイムシフトを描き切るコンサルタントの力を組み合わせることで、他社との差異化を図りたい」とした。

コンサルティング重点領域

 コンサルティング人材の育成に向けては、業種にとらわれないクロスインダストリー型コンサルタントを育成。2024年1月から、認定コンサルタントを順次輩出しているという。

 Ridgelinezを含めた富士通グループの世界全体で、2025年度には1万人のコンサルティング人材を育成。現在の2000人から急拡大する。そのうち、ビジネスコンサルティングでは、現在はRidgelinezを中心とした約600人の体制を3000人に拡大。テクノロジーコンサルティングでは、富士通を中心とした約1400人の体制から、7000人に拡大する計画だ。6000人をリスキリング、3000人を外部採用するほか、M&Aで1000人以上の獲得を想定している。人材採用においては、市場にマッチした報酬を用意するという。

 大西CROは、「規模にこだわっていくことが重要である。規模がなければ、大きな社会的インパクトを創造できない。また、海外展開に向けては、M&Aとシニアハイヤリングによる地盤づくりを進めている。マッキンゼーやボストンコンサルティング、アクセンチュアなどの企業と競合する部分もあれば、協業する部分もある。さらに、サステナビリティの世界においては、新たな企業と競合になることも想定される」とした。

コンサルティング人材の拡充に向けて

 なお、ブランド名の「Uvance Wayfinders」は、「課題に立ち向かい、新たな冒険に飛び出す羅針盤をイメージである。テクノロジーと、長年培ってきたさまざまな業種の知見を融合することで、顧客とともに社会全体の『知のエコシステム』を創出し、より良い未来を創造するためのパートナーとなる想いを込めた」と説明。「誰も行かない道こそ、未来だ」をブランドメッセージに掲げている。

「誰も行かない道こそ、未来だ」をブランドメッセージに掲げた

社会変革に対応するためには富士通自らが変わらなくてはならない

 富士通は2023年5月に、中期経営計画を発表し、「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニー」になることを目指している。それにあわせて事業ポートフォリオの変革を推進。顧客を対象としたカスタマーサクセス戦略においては、最重要なアイテムとしてコンサルティング戦略の拡充を掲げていた。

中期経営計画における重点戦略

 「業種や業界の区切りがなくなり、産業構造化が変化するなかで、未来のサステナビリティをトレードオンにするための新たなビジネス創出が求められること、テクノロジーのインパクトが想像以上に速く、スケールが大きく、これにより社会がどう変化するかを想定しなくてはいけないこと、そして、社会変革に対応するためには富士通自らが変わらなくてはならず、お客さまから要件を聞いて、その通りに正しく作る世界から、対等な立場でパートナーとして、事業を作っていくこかなくてはならない。富士通が、行動様式に変えていくためには、コンサルティングとしてのケイパビリティとキャパシティを広げていくことが必要になる。行動変容は、まだ3合目ぐらいの成果である。国内の行動変容ができていない。お客さまとSEの距離が相対的に遠く、お客さまがやってはいけないことに対して、ノーとはいえないフロントの体質がある」(富士通の大西CRO)と指摘した。

 また、富士通 執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ長兼全社Fujitsu Uvance担当の高橋美波氏は、「Fujitsu Uvanceでは、7つの重点領域において、社会課題を解決していくことになる。価値をしっかりと提供していくためにはコンサルティングのケイパビリティが必要である。テクノロジーコンサルティングにより、面で顧客ニーズをとらえて、そこに、ソリューションをあてていくことが必要である。富士通は自社でテクノロジーを持ち、量子、シミュレーション、画像解析などに強みがある。さらに他社のIPも徹底的に活用でき、広いアセットを持っている点が、ほかのコンサルティング会社にはない強みになる。2025年度には、Fujitsu Uvanceの売上高で7000億円を目指しているが、コンサルティングのケイパビリティは、その達成に向けて重要な要素になる」とコメントした。

富士通 執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ長兼全社Fujitsu Uvance担当の高橋美波氏

 さらに、Ridgelinez 代表取締役CEOの今井俊哉氏は、「日本の企業は、DXのXの部分ができていない。テクノロジーを入れただけでは組織は変わらない。ただ、ゴルフのフォームと一緒で、いろいろと直されると、ぐちゃぐちゃになる。ひとつか、2つに絞ってしっかりと直すことが大切である。本当に解決しなくてはならない課題に優先づけする手法で、Ridgelinezは過去4年間やってくきた。うまくいったと思っている」とする。

 その上で、「Ridgelinezには、ストラテジー、オペレーション、テクノロジーの3種類のコンタルタントがいる。それぞれのコンサルタントがフェーズを分けてサービスを提供してきたが、この2年間は、3つのコンタルタントがひとつのチームに入り、コンカレントにサービスを提供している。富士通はテクノロジー中心のコンサルティングであったが、Ridgelinezでは、経営の観点からの提案も可能にしており、この経験が蓄積され、今後加速していくことになる。コンサルティング会社が持つレガシーを打破し、新たなことをやってみたいという人に、Ridgelinezに参加してもらいたい」などとした。

Ridgelinez 代表取締役CEOの今井俊哉氏