ニュース

“集中力の途切れ”がもたらす年間損失は、10カ国合計で約370兆円に――Dropbox調査

国内の管理職の年間損失時間は683時間、一般社員よりも130時間増

 Dropbox Japan株式会社は12日、集中力の途切れがもたらす労働生産性損失に関するグローバル調査の結果を発表。今回の調査対象となった10カ国合計で、約370兆円(2兆5200億ドル)の集中力低下による労働生産性損失が起こっているという結果となった。

 特にコロナ以降、さまざまなコミュニケーションツールが利用されるようになったことで管理職は一般社員以上に集中力の途切れが起こりやすくなっていると調査では指摘しており、これをカバーするためにAIを活用したツールなどを利用することが有効だとしている。

 ファイルの保管、共有などに利用されてきたDropboxだが、UIの改善、機能拡充などによって保管しているファイルやデータを活用するプラットフォームとしての活用を訴えている。労働生産性損失をカバーする際に同社が提供するツール活用が有効だとしており、「Dropbox AIは、さらに生成AI活用やUi改善によって集中力の途切れを最小化する」(Dropbox Japan アジア太平洋・日本地域総括ソリューション本部長 岡崎隆之氏)とアピールしている。

Dropbox Japan株式会社 アジア太平洋・日本地域総括ソリューション本部長 岡崎隆之氏

世界10カ国のナレッジワーカー1000人以上を対象に、“集中力の途切れ”が原因の経済損失をモデル化

 Dropboxが実施した調査は、エコノミスト・インパクトに依頼し2023年に実施したもの。北米、欧州、日本を含むアジア、豪州など世界10カ国のナレッジワーカー1000人以上を対象に、集中力が途切れることが原因で引き起こされる経済損失をモデル化した。

 その結果、10カ国合計で370兆円(2兆5200億ドル)の労働機会損失が起こっていることが明らかになった。調査対象の42%が、生産的な作業を1時間以上連続で行うことができない状態となっているという。日本単体では25.8兆円(1760億ドル)の機会損失となっている。1人あたりで換算すると、日本人ナレッジワーカーは集中力途切れによる作業中断によって年間511時間を損失していることになるという。

ナレッジワーカーの集中力を最適化した際の潜在的な年間経済貢献

 集中力途切れが起こっている原因だが、同様の調査を行ったコロナ禍初期には、「くつろぎのため(テレビ等)」という理由がもっとも多く、次いで「家事」、「同僚から切り離されたと感じる」となっている。「在宅勤務に慣れていなかったことが大きな要因となっていると考えられる。また、インターネット回線が不安定という回答もあり、在宅勤務環境が整っていない状態で在宅勤務がスタートしたことが原因となっている」(岡崎氏)ことが特徴となっている。

 それに対し今回の調査では、「家族からの用事」、「くつろぎのため」という原因が上位となっているが、前回調査にはなかった、「メールへの応答」、「チャットメッセージ」など、コミュニケーションツール活用が集中力を妨げる原因として挙げられている。

 「さまざまなデジタルツールの利用が当たり前になった結果、ほそぼそとメールによる確認作業に時間をとられる、チャットでメッセージが頻繁に届き、その都度、手を止めるといった新たな課題が出てきている」(岡崎氏)。

集中力の途切れが生じる原因

 特に影響が大きいのが管理職の生産性損失で、管理職の機会損失。一般社員は年間553時間の機会損失であるのに対し、管理職は683時間と、機会損失がより大きくなっている。これは一般社員以上に業務範囲が広く、コミュニケーションの対象も他部署などより多くなっていることが原因となっている。

管理職の生産性損失
管理職が経験する集中力の途切れ

 この結果を受けDropboxでは、「集中力が途切れることによる労働機会損失を減らしていくことができれば、生産性向上につなげていくことができる。AIなど適切なツール活用によって、できるだけ機会損失を減らすことを考えることが望ましい」(岡崎氏)と分析する。

 さらに「働き方のデザイン」として、デジタルツールの活用など、生産性向上につながるような見直しを行うことを訴えている。具体的には、「Dropbox Paper」を活用し、ミーティング前に数分で読める資料を配布することや、プレゼンテーションや操作説明などを動画で収録し、共有することができる「Dropbox Capture」の活用、配布したドキュメントや動画のどの部分が繰り返し見られていたのかなどを追跡する機能を持つ「Dropbox DocSend」などの活用が有効だという。

働き方のデザイン

 「企業の生産性を上げることにつながる新しいツールを提供しており、例えばDropbox Captureは、情報システム部門の担当者から好評。新しいシステムを披露するためにデモ動画や操作方法を紹介した動画を記録し、社内で共有するといった使い方ができる点が評価されている。Dropbox DocSendは、配布したもののどの部分を見ている人が多いのかを明らかにすることで、今後、集中してアピールしていくべき箇所が明確になっていく」(岡崎氏)。

より伝わりやすく、より簡単に

 また、新たにAIを活用した新機能の提供を予定している。今年6月に英語版の提供が始まった「Dropbox Dash」は、接続されたアプリ、ファイル、コンテンツから関連情報についてAIを活用して探し出す機能を持つ。情報を探す作業が多くなって集中力が途切れることを防止するツールとなっている。

 「当社の強みは、特定のクラウドストレージやベンダーに依存していないこと。例えば、社内資料でDropboxに保存されたものだけでなく、一緒にセールスフォース上に保存されたデータを利用するといった使い方ができる。これは他社にない当社ならではの強みとなる」(岡崎氏)とした。ただし日本での提供時期は現在のところは未定となっている。

Dropbox Dash

 Dropbox AIは、生成AIを活用することで質問への回答や、契約書や会議記録などの大きなファイルの概要をプレビューで把握できる機能を持つ。必要なファイルを探し出す際にも、数秒内に回答や探していたファイルを見つけ出す機能を持っている。

 こうしたAIの活用を実現するために、NVIDIAとの提携、ネットワークインフラの強化などの施策も実施。「製品開発を強化していくと共に、信頼性を確保するための投資などを行い、スマートな働き方を支援する機能をさらに強化していく。クラウドを使いやすく整理することで、集中力途切れを最小化するような機能を拡充していきたい」(岡崎氏)とアピールしている。

Dropbox AI