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Dell、生成AI環境を“完パケ”にしてオンプレ向けに提供する「Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIA」を発表

Ada Lovelace世代RTX6000を最大4つ搭載できるPrecision Workstationも8月より提供開始

Dellが発表した3つの生成AI向け新製品、Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIA、Dell Professional Services for Gen AI、Precision Workstationの新モデル

 米Dell Technologies(以下、Dell)は、5月に米国ラスベガスで開催したイベント「Dell Technologies World」にて、生成AIの開発・実行環境を完全パッケージとして提供し、エンタープライズが生成AIの活用環境を容易に整えられる開発コードネーム「Project Helix」(プロジェクト・ヒーリックス、ヒーリックスとは螺旋という意味)の構想を、パートナーとなるNVIDIAと合同で発表している。

 今回、7月31日(現地時間)に、そのProject Helixの正式ブランドとして「Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIA」が発表され、今年中に提供が開始されることが明らかにされた。

 Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIAは、DellのPowerEdgeサーバー、NVIDIA H100 GPUなどのハードウエアから構成されており、その上にNVIDIAの生成AI開発環境となるNeMoなどを標準で搭載。Dellの顧客が買ってきた状態ですぐに、LLM(大規模言語モデル)を利用した開発とサービス提供がオンプレミスで可能になる。

 従来、こうした生成AIの開発環境はクラウド経由で提供されるのが一般的だったが、最近はデータをクラウドに置いて生成AIに学習されることに、データ保護上の懸念を持つエンタープライズが増えており、すべてを自社で制御できるオンプレミスでも手軽に生成AIの環境を構築できるソリューションが求められていた。Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIAはそうしたエンタープライズのニーズに応えるソリューションとなる。

Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIA

生成AIのオンプレミスでの展開を容易にするDell Validated Design for Gen AI with NVIDIAの提供を開始

 生成AIへの注目はもはや社会現象のようになっている。このため、多くのエンタープライズがLLM(大規模言語モデル)を利用した新しい機能提供を計画するなど、それを実現するソリューションにも注目が集まっている。

 そうしたソリューションの多くは、現状はSaaSやIaaSなどの形で、クラウド経由で提供されているのが現状だ。クラウドベースのソリューションを利用する場合には、エンタープライズが持つデータをクラウドストレージ上にアップロードするか、オンプレミスのデータをクラウド向けに公開して、利用できるようにする必要がある。というのも、こうしたLLMを利用するには、エンタープライズが持つデータを活用して、モデル(AIではあらかじめ作成しておいたプログラムなどのことをモデルと呼んでいる)を学習できるようにする必要があるからだ。

 しかし、このように、自社のデータをクラウドに上げたりクラウドに向けて公開したりすることを懸念するエンタープライズは少なくないため、生成AIブームに乗れないというエンタープライズも少なからずいるのが現状だ。

 今回「Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIA」として発表されたProject Helixでは、そうしたエンタープライズに、ハードウェアからソフトウェアまでを完全にパッケージ化した形で生成AIを構築・運営する環境を提供する。具体的には、NVIDIA H100 GPUのようなGPUを採用したPowerEdgeなどのサーバー機器、Dell PowerScaleやDell ObjectScaleといったストレージなどのハードウェアと、NVIDIAが提供するNeMo、NVIDIA Triton Inference Server、NVIDIA Cluster management softwareなどのGPUを利用して生成AIの学習・推論を実現するソフトウェアなどを、完全なパッケージとして提供する。

 また同時に、すぐに学習から始められるように、学習済みのLLMのモデルなどを提供する。これにより、エンタープライズはシステムを導入してすぐに学習を始められ、最終的に、同じシステム上で推論までを行いサービスを提供することを可能にする。こうした仕組みにより、エンタープライズは従来よりも短期間で生成AIのサービスを提供可能になるわけだ。

Dell Validated Design for Gen AI with NVIDIAの構造

RTX 6000 Adaの採用で従来製品から80%ほど生成AI性能を向上させたPrecision Workstationも発表

 Dellはこのほかにも「Dell Professional Services for Gen AI」の提供を開始する。このDell Professional Services for Gen AIでは、エンタープライズにとっての課題となる、データの安全な管理を実現する。Dellが提供するストレージ上にあるデータを効率よく管理し、それを活用してセキュアな生成AIサービスを構築していくことを可能にしている。

Dell Professional Services for Gen AI

 またDellでは、オンサイトの技術者向けのワークステーションPCとして「Dell Precision Workstation」を提供しているが、今回の発表に合わせたAda Lovelace世代のGPUを採用した「NVIDIA RTX 6000 Ada Generation GPU」を最大4基搭載する新製品の提供を開始する。

 Ada Lovelace世代は、クライアントPC向けではGeforce RTX 40シリーズとして提供されているGPUのアーキテクチャで、従来世代の製品に比較して、約80%性能が向上していることが特徴になる。提供されるのは7960 Tower、7865 Tower、5860 Towerというタワー型のワークステーション3製品で、8月より提供開始される計画だ。

 また、AIによる生成AIの学習や推論時の性能最適化機能を搭載したDell Optimizerの最新バージョンの提供も8月31日より開始される計画である。

Precision WorkstationにNVIDIA RTX 6000 Adaを最大4つ搭載できる新製品を発表