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富士フイルムシステムサービス、自治体の罹災証明書発行の時間と作業迅速化目指す新システム提供開始

 富士フイルムシステムサービス株式会社は、水害・地震・風害に対応した「被害調査統合システム」と「家屋被害判定アプリ」を6月1日から提供する。

 天災で被害を受けた住宅に対しては、自治体が罹災証明書を発行し、住民はそれをもとに復興のための援助を受けることになる。罹災証明書の発行が遅くなると、被災者の生活再建も遅れることになるが、天災後自治体自身も混乱している中、住家の被害認定調査や調査計画の策定など作業が多く、自治体職員の負担となっている。富士フイルムシステムサービスは、提供するシステムを利用することで、調査計画の策定、住家被害認定調査に関わる作業工数、期間をおおよそ50%削減するとアピールする。

罹災証明書の利用場面

 この事業を担当する富士フイルムシステムサービス 経営統括本部 デジタル戦略推進部部長の竹中稔氏は、「今回のシステム開発は、2020年に罹災証明書交付が遅れた自治体からの問い合わせがあったことが端緒となった。実際に罹災証明書発行まで数カ月かかった例があり、大規模自治体ではシミュレーションを行ったところ半年くらいかかるのではないか?という結果となった例もある」と説明。作業工数効率化できることなどをアピールし、2026年度末までに100自治体への導入を目標として、新システムのビジネスを進める。

富士フイルムシステムサービス 経営統括本部 デジタル戦略推進部部長の竹中稔氏

 富士フイルムシステムサービスは、民間企業向けソリューションと自治体・公共機関向けソリューションを事業の柱としている。

 自治体向けシステムは、1972年に戸籍を長期間保管していくためにマイクロフィルムに撮影を行うところから事業がスタート。1994年の戸籍法改正のタイミングで戸籍総合システムを提供したのをはじめ、住民情報ソリューション、自治体の業務のアウトソーシング、デジタル窓口ソリューションなどを提供してきた。「戸籍総合システムは、1741自治体中、1214自治体に導入しており、シェア70%でナンバー1となっている」(竹中氏)。

 今回提供するのは、罹災証明を迅速化するソリューション。自治体内システムと連携し、災害が起こった際に調査計画を自動で策定する「被害調査統合システム」を提供。進捗に応じてシステム上で受援計画、調査を行うスタッフの班編制、適切な調査ルートのシミュレーションを行う。

 現地の被災住宅を調査する「家屋被害判定アプリ」は、これまで紙に手書きメモを行っていた被害判定を、タブレットによるデジタル作業に切り替える。タブレットの中には被害調査統合システムの結果が反映されているので、あらためて事前準備を行うことなく、必要な情報がタブレットに入っている状態となる。さらにタブレットには、現場でどんな調査を行うのか手順が入っているため、経験が浅い人でも必要な調査を行うことができるようになる。また、これまで現地での調査結果を戻って登録する作業が必要だったが、タブレットを操作することで現地で作業が完結する。

今回の新システム導入による業務改善イメージ

 「従来は3人組で調査を行う必要があったが、このシステムを使うことで2人のスタッフで現場調査が行える。また、現場調査は担当者ごとに判断のばらつきがあり、再調査が行われるケースも多かった。アプリを使って作業をシステム化しことで、判断のばらつきが減ったという声があがっている。さらに、戻ってからの作業がなくなるので、残業時間が減少したという声もあり、工数、コストともに50%削減ができる」(竹中氏)。

罹災証明書交付が遅延する原因

 お試し版として無償で利用できる小規模水害被害対策アプリを提供している。これを利用していた大分県日田市では、「職員の声が反映された実際の現場を支援するシステム」との声があり、6月1日からは有償版を利用することが決定している。

 石川県小松市では、無償版のトライアルを開始直後に豪雨被害が起こった。「災害の規模が小規模水害被害用の無償アプリではカバーしきれない規模と判断したため、開発途上のベータ版を利用してもらったが、UIに対する評価が高く、一度触れば誰でも使える、入力工程の所要時間が従来の半分以下といった声をもらっている」(竹中氏)。

 水害は地震とは異なり、起こる頻度が多いことから、無償で利用できるアプリを小規模水害対策用とした。自然災害の発生頻度は増加傾向にあり、被害が激甚する傾向にあることから、「対策システムを導入し、被害が起こった際の備えの必要性をアピールしていきたい」と説明する。

 利用する場合には、各自治体が利用しているシステムとの連携が必要になるが、「当社のシステムを使っていない場合でも利用していただくことができる」という。競合となる製品についても、「連携できる部分もあるので、連携して利用してもらうことも可能」と説明している。

 価格については、住民の数、さらに連携するシステムによって価格が異なってくるため、個別相談としていく。

 今後は被災証明の交付や生活再建手続きなど被災者支援システムとの連携を実施する予定で、「被災者支援システムとは6月中に連携を実現したい」としている。

今後の展望