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NEC、ESJ、日立など5者、分野を超えてデータの発見と利用ができる「CADDE」のフィールド実証を実施

 日本電気株式会社(以下、NEC)、エブリセンスジャパン株式会社(以下、ESJ)、株式会社日立製作所(以下、日立)、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)、株式会社ザイナスの5者は7日、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」において、分野を超えてデータの発見と利用ができる仕組みであるCADDE(Connector Architecture for decentralized Data Exchange)のさらなる普及に向けた実証を実施したと発表した。

 CADDEは、分野を超えてデータの発見と利用ができる仕組みとして、各分野のデータ基盤を横断して連携するための機能・サービス群で構成される、分散型データ交換のためのコネクタ・アーキテクチャ。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が管理法人として運営を支援する、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期」で採択された「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」事業の一環で、日立、SBテクノロジー株式会社、国立大学法人東京大学、NEC、富士通株式会社、NII、株式会社NTTデータ、JIPテクノサイエンス株式会社が共同開発した。

 最新版のCADDE4.0は、SIP分野間データ連携基盤のWebサイトに掲載されている、GitHubのWebサイトからダウンロードできる。

 5者のプロジェクトでは、分野間データ連携の社会実装を進めるため、CADDEの活用が想定される企業とともに、具体的な業態、業務、データの提供、データの利活用を想定した4つの実証を、2022年11月から2023年2月にかけてそれぞれ行った。

 産業・商業で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:ザイナス)では、クラウド型調達・購買システム「SAP Ariba Network」を活用し、中小企業のグローバルな調達案件への参入可否を検証することで、CADDEの社会実装に向けた課題を抽出した。実証に参加したSAP Ariba Networkのユーザー企業からは、CADDEのデータ連携機能に対する指摘はなく、商取引へのCADDEの活用が可能であることを示した。これにより、国内の調達・購買システム事業者、ECサイト事業者などがCADDEを自社システムへ実装していくことが期待されるとしている。

 オープンソースのデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:NEC)では、札幌市のデータ連携基盤として利用されている「FIWARE Orion」とCADDEを相互運用した。実証では、不動産ディベロッパーや飲食店が、人流データ、気象データ、イベントデータなどの複数のデータを取得し、リアルタイムに可視化するアプリケーションからデータ活用の可否を検証することで、データ流通における課題を抽出した。その結果、CADDEにおけるID管理の方法や、マーケティング・業務の最適化につながるデータの詳細化・多様化といった面で課題を確認した。今後のデータ利活用の本格的な推進に向けて、データの質・量の両面での拡充が進むよう、データ提供者側への働きかけも実施していく。

 データ取引で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:ESJ)では、社会におけるデータの流動性を高めるため、データ利用権およびデータを取引の対象とするデータ利用権取引市場システムを開発し、実証を行った。データは無体物であるとともに、一般的には法的な財産保護の対象にならないことから、システムではデータ利用に関わる権利の条件を標準化したデータ利用権証と対象データを組み合わせて取引する。データ利用権証により、信頼できる第三者機関(TTP)がデータを利用する権利の保証と、取引の関与者それぞれの真正性とデータの完全性を保証することで、安心・安全かつ効率的なデータ取引を支援する。

 実証では、DATA-EXに参加するデータ提供者とデータ利用権取引市場に参加するデータブローカー間における、データ利用権取引市場への上場申請完了後の「データ提供者によるデータ生成」「データブローカーによるデータの受領」に該当するデータ収受にCADDEコネクタを利用し、データセットが適切なタイミングで遅滞なく、かつ真正性、完全性が保証された状態での収受の可否を検証した。実証にはPwCコンサルティング合同会社や株式会社MILIZEをはじめとする6社が参加し、実際に利用権証の生成、売買、利用権の行使が可能であることを確認するとともに、実証後のアンケートではすべての回答者が、システムが現在のデータ取引における課題の解決に資すると回答した。今後、実証ではスコープ外とした機能の追加開発やUXの改善、電子署名技術を提供する事業者との連携により、可能性・有用性をさらに向上させ、商用化を目指す。

 スマートシティで利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証(担当:NEC)では、前述した3つの実証における、複数分野のデータ連携基盤とスマートシティのデータ連携基盤をCADDEを介して接続し、相互連携したデータを用いたユースケースを、三井住友海上火災保険株式会社とともに検証し、地域のスマートシティの現場を踏まえた技術的課題を抽出した。

 具体的には、各実証環境にCKANカタログサイトを配し、横断検索機能により検索取得したデータカタログを元にCADDEコネクタを用いてデータを収集、BIツールを用いて分析・可視化することで、保険商品の開発や保険のリスク判定へのデータ活用の可否を検証した。CADDEにより複数分野のデータ連携が効率的に実施できることを確認したほか、事業者がデータ取引を出口とすることで新たにデータの提供側となることへの有意性も確認できたという。今後、CADDEによる分野間データ連携の環境を提供し、事業者が自社の領域を超えた分野でのデータを入手・活用することが可能になれば、業務の効率化やデータ連携による新たな価値の創出につながるユースケースが拡がることが期待されるとしている。

 また、CADDEの利用ユースケースや具体的なサービス利用方法を理解するためのドキュメント「外部仕様書」を新たに作成し、3月31日に公開した(担当:日立、NII、NEC)。外部仕様書は、作成に当たって必要となる事項などの洗い出し・詳細化を行うとともに、実証結果から反映すべき事項も整理した上で、サービス要件や機能概要、API仕様などを取りまとめたもの。

 外部仕様書は、実証で得られた成果を取り込み、CADDEの普及に関わる企業・団体や、その依頼を受けてITシステムを整備するベンダー、契約管理などの各種CADDE支援サービスの提供者などに向けて広く参考となる情報を記載しており、CADDEの一層の普及促進に寄与するとしている。外部仕様書は、SIP分野間データ連携基盤のWebサイトに掲載されている、GitHubのWebサイトからダウンロードできる。

 5者は、実証を通じて得られた考察、課題、改善策などは、内閣府のスマートシティ・リファレンスアーキテクチャにも提案しており、地域におけるスマートシティを通じたCADDEの認知度の向上や利活用シーンの拡大が期待されると説明。今後も分野を超えたデータ連携基盤技術への貢献を加速することで、デジタルを活用した地域社会の課題解決・魅力向上やわが国産業の競争力強化を推進していくとしている。