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日立、NEC、富士通、東大など8団体、「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」で分散型の分野間データ連携基盤技術を開発

 株式会社日立製作所、SBテクノロジー株式会社、国立大学法人東京大学、日本電気株式会社、富士通株式会社、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)、株式会社NTTデータ、JIPテクノサイエンス株式会社の8団体は28日、「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の研究開発において、分散型の分野間データ連携基盤技術を開発し、社会実装に向けて実証を開始したと発表した。

 8団体では、2018年から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が管理法人として運営を支援する内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期」で採択された、「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の研究開発を推進してきた。

 この研究により、データ利用者・提供者によるデータ利活用に向けたサービス開発効率や相互運用性を高めるため、産官学のさまざまな分野にまたがるデータを接続する分散型の「分野間データ連携基盤技術」と、その中核機能のソフトウェアツールとなる「コネクタ」や、データの取得方法やデータの内容を管理するデータカタログの横断的検索機能を開発した。

分散型の「分野間データ連携基盤技術」

 8団体では、開発した分野間データ連携基盤技術の有効性を検証するため、交通分野や観光・旅行分野などの複数分野において、データ利活用の実証を開始すると説明。これらの実証においては、複数の分野にまたがるデータの取得を始め、データカタログの作成、データ交換、データ来歴管理などの検証結果を知見として蓄積し、分野間データ連携基盤技術の社会実装を実現していくとしている。

 8団体では、近年、政府が主導する「Society 5.0」によるデータ利活用の提唱により、国、地方公共団体、民間企業などで分散して保有するデータを連携して、施策立案や新たなサービス、ビジネスの創出などを通じた民間企業の競争力強化や行政サービスの高度化が求められていると説明。一方、産官学のさまざまな分野のデータ連携においては、データカタログに記載される情報の表記が統一されていないなど、相互運用の観点で課題があるという。

 そこで、研究ではさまざまな分野のデータ連携を実現する技術を開発し、さらに技術の有効性を検証するため、複数分野におけるデータ利活用に関する実証を開始する。

 8団体による研究の取り組みでは、分野間データ連携基盤技術において、産官学で形式が異なるデータカタログを共通化させ、データを見つけて取得し、利用して管理するといったさまざまな分野のデータ利用者と提供者をつなぐインターフェイス機能となるコネクタを開発した。

 これにより、従来課題であったデータの取得方法やデータカタログに記載される情報の表記が統一され、データ利用者はデータ提供者と個別に調整をする必要がなくなり、効率的なデータ利活用ができると説明。また、データの各分野にまたがる横断的検索などの独立した、中央集中型サービスとコネクタを連携させられるとしている。

 データカタログの横断的検索機能については、NIIがインターネット上で試行公開している。また、これら分野間データ連携基盤の社会普及を目指して、関連する情報をNIIが開設するWebサイトを通じて積極的に公開していくとしている。

 今回開発した、分野間データ連携基盤技術の社会実装に向けては、交通、観光・旅行など複数分野でのデータ利活用に向けた実証を開始する。

 交通分野の実証では、地方公共団体が保有するEV公用車の諸データを取得・活用するための、コネクタ機能の有効性の検証および地方公共団体の環境・交通施策におけるデータ活用の実効性確認を行う。

 観光・旅行分野の実証では、地理空間情報の活用を中心に、航空情報や気象情報、周辺の交通情報を組み合わせて空港内の人流情報を可視化・分析し、旅客などに対し、商業施設への効果的な誘導を行う。

 これらの実証を通じて、データカタログ作成やデータ交換、データ来歴管理などの検証結果や、分野間データを利活用したサービスとしての課題を把握していくとしている。

 今後、8団体では、分野間データ連携基盤技術の社会実装に向け、交通、観光・旅行など各分野での利活用に向けた実証により有効性を確認するとともに、利用者を限定せずに段階的にコネクタをOSS公開するなど、産官学のデータ連携の普及促進を図っていくと説明。また、産官学の連携により、分野を超えた公正、自由なデータ流通と利活用による豊かな社会の実現を目的とする、一般社団法人データ社会推進協議会(DSA)と連携し、DSAが推進するデータ社会を実現する連携サービス(DATA-EX)における本格的な運用をすることを目指すとしている。