ニュース

NEC、AIの予測精度を効率的に維持しつつ運用できるよう支援する2つの新技術を開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)は20日、AIの予測精度を効率的に維持しながら運用できるように支援する2つの新技術を開発したと発表した。

 AI、特にデータ分析を行うAIにおいては、運用中の社会環境の変化などにより、開発時点で学習したデータから傾向が変化し、予測精度が低下する場合があるため、予測精度の低下を防ぎ開発当初のAIの効果を維持・向上させ続けるために、開発と運用を統合したMLOps(Machine Learning Operations)という概念が注目されている。

 しかし、こうした精度の低下を防ぐには、AIを監視し、精度低下が発生した場合には原因分析を行った上で再学習する必要があるものの、こうした作業には高度な知識が求められ、多くの時間・コストがかかる点が課題とされていた。

 そこでNECでは、こうした課題の解決に向けて、今回、1)MLOpsツールとして一般的な監視の自動化だけでなく、原因分析および可視化を行う技術、2)正解していたデータを再学習後に不正解にせず一貫性を維持する高度な再学習を可能にする技術――の2つを、国内で初めて開発したという。

 このうち1)では、学習時と運用時におけるデータの傾向変化や、予測への影響度などの指標を独自に組み合わせて、精度低下の原因を自動で分析し、注目すべきデータを根拠とともにレポートとして提示してくれる。AI運用時の精度低下の原因を探る場合、従来は例えば、需要予測であれば、専門家が過去の売買データや気温など多数のデータから精度低下の原因を手動で分析していたが、この技術を利用すれば、専門性を持たない人でも短時間で精度低下の原因分析が可能になる。NECが実施した実証では、精度低下の原因分析の工数を約50%削減できたとした。

 一方、従来の再学習では、全体的な精度は向上するものの、再学習前に正解していたデータの一部を不正解としてしまう部分的な劣化が発生することがあり、一貫性の低い再学習によって、運用者の混乱を招きAIの信頼性を損なってしまう場合があったという。2)は、こうした事態を防ぐための技術で、正解したデータの重みを大きくして再学習することによって、正解部分を継続的に正解し、部分的な劣化を防止できる。NECによれば、機器故障予測や金融の不正取引検知など、まれにしか発生しない事象を扱う不均衡データの再学習に対して有効に働くとのことだ。

 NECでは、これらを単独または組み合わせて活用することにより、AIの精度を維持しながら、時間・コストをかけずに運用できるようになると説明。2023年度中に、すでに提供中の「NEC MLOpsサービス」に新技術を適用する予定としている。