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OracleとRed Hat、OCI上でRHELを利用できる「Red Hat Enterprise Linux on OCI」を発表

 米Oracleおよび米Red Hatは2日、Red Hat Enterprise Linux on OCIを発表した。

 Oracle Cloud Infrastructure(OCI)が持つ全世界22カ国、41カ所のグローバルリージョンを活用して、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を利用できるようになる。

 米Oracle Oracle Cloud Infrastructure プロダクト・マネジメント担当バイスプレジデントのレオ・リョン(Leo Leung)氏は、「複数段階の協業における第1歩であり、極めてエキサイティングなものになる。分散クラウドの実現に向けてOSの選択肢を広げることが可能になり、既存のワークロードだけでなく、新たなワークロードにも革新をもたらす」とコメント。「フォーチュン500社の9割が、OracleとRed Hatを利用しており、今回の協業により、多くの顧客が恩恵を受けることができる。さらに、OracleとRed Hatによる共同サポートも受けることもできる。今後、OCIへの統合を進め、透過性を高めていく」と述べた。

米Oracle Oracle Cloud Infrastructure プロダクト・マネジメント担当バイスプレジデントのレオ・リョン氏

 OracleとRed Hatでは、OCI上で動作するOSの選択肢を拡大するとともに、OCI とRed Hat Enterprise Linuxの両方を活用してDXを推進し、ミッションクリティカルなアプリケーションのクラウド移行を促進する組織においては、エクスペリエンスを向上させることができるほか、OCI上で動作するRed Hat Enterprise Linuxにより、クラウド運用を標準化し、データセンターから分散型クラウドまでをカバーする共通プラットフォームを手に入れることができる点などをメリットとして強調している。

 Red Hat Enterprise Linux on OCIでは、4つの特徴があるという。

Red Hat Enterprise Linux on OCIの4つの特徴

 ひとつめは、必要な要件を持ったクラウド環境でワークロードを実行できる点だ。「OCIを活用することで、政府向けパブリッククラウドやハイブリッドクラウド、Oracle Dedicated Regionにも対応することができる。また、2023年後半に登場するOracle Alloyにも対応し、ユーザーエクスペリエンスのカスタマイズを可能にできる」とする。

 さらに、「カスタムアプリケーションをはじめとして、多種多様なアプリケーションが活用できるようになる。Oracleの複数のデータベースサービスを活用することもできる。Red Hat Enterprise Linux により、ISVのパッケージアプリケーションも、クラウドサービスのなかで利用できる」とした。

 2つめは、Red Hat Enterprise Linuxの機能やイメージを、そのままOCI上で利用できる一貫性を実現している点だ。「Red Hat Enterprise Linuxで得られていたものはすべて担保している、実績があるOSをそのままOCIで利用可能になる」とする。

 Red Hat APAC Office of Technology, GTMストラテジストの岡下浩明氏も、「Red Hat Enterprise Linuxの機能面は変わらず、OCIによって選択肢が広がることになる」と述べた。

Red Hat APAC Office of Technology, GTMストラテジストの岡下浩明氏

 3つめは、柔軟な仮想マシンシェイプの活用が可能になる点だ。必要な「CPUやメモリを、仮想マシンで利用できる能力を提供。OCIのフレキシビリティを活用して、パフォーマンスやコストを最適化した形で提供できる」と語る。

 1CPU単位で最大80CPUコアまで利用できるほか、CPU単位では最大1GBメモリ、プロセ
ッサ単位では最大1024GBのメモリを提供する。

 4つめは、OracleおよびRed Hatの両社がサポートを提供。どちらの会社にも問い合わせることができ、両社間のエスカレーションも行うという。「Oracleのエコシステムによるフルサポートも受けられる」と述べた。

 OCI上で提供するのは、Red Hat Enterprise Linux 7.9以降、同8.7以降、同9.1以降のとなり、インテルおよびAMDのx86、armに対応する。

認定されたRHELのバージョンおよびOCIコンピュート・シェイプ

 Red Hat Enterprise Linux on OCIを利用者する際には、ポータルでイメージをダウンロード。これをOCIにアップロードし、インポートするだけでいい。さまざまなワークロードに対応するとともに、リスクを低減し、リワークの量を減らすことができるとしている。

OCIへのRed Hat Enterprise Linuxのデプロイ

 なお、ライセンスや費用については、Red Hat Enterprise LinuxはRed Hatに、OCIはOracleに課金する方法となっており、Bring it on Your subscriptionモデルになると定義した。

 また、OCIのベアメタルサーバーにRed Hat Enterprise Linuxを搭載し、オンプレミス環境と同等のパフォーマンスと、高い分離性を実現するための計画も開始しているという。

 事例としてはIndus Towersを紹介した。意思決定支援および分析プラットフォームなどにOCIを利用。今回のRed Hat Enterprise Linux on OCIにより、特定の主要アプリケーションスタックやワークロードをリコンパイルせずにクラウドに移行することができ、開発とテストのコスト、およびリスクを回避することができたという。また、OCIのスケーラビリティと信頼性を生かして、Indus Towersが持つアプリケーションスタックを、より多くのサブセットで利用できるようになるとしている。

Indus Towersの事例

 なお、Oracleは、Red HatのCertified Cloud and Service Provider(CCSP)プログラムのメンバーとなっている。今回のRed Hat Enterprise Linux on OCIについては、アクセンチュア、IBM、キンドリルなどのパートナーが強い支持を表明していると説明した。