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富士通が新トラッキング技術を開発、高い精度で複数人を安定して追跡可能

 富士通株式会社は5日、高い精度で複数人を安定して追跡し続けられる、新たなトラッキング技術を開発したと発表した。1月3日より米国ハワイで開催されている、画像処理に関する国際会議「WACV2023(IEEE/CVF Winter Conference on Applications of Computer Vision)」にて発表されるという。

 富士通では、映像から人の行動を認識する行動認識AI「行動分析技術Actlyzer(アクトライザー)」を提供しているが、イベント会場や公共施設、店舗などへの社会実装が進み、その広がりとともに、混雑したショッピングセンターでの顧客の動線解析など、より高度な利用シーンでのニーズが高まっているとのこと。そこで同社は、歩行速度にかかわらず、多くの人の移動を正確に捉えられるトラッキング技術を開発した。

 人の移動を時間ごとにカメラ映像で追う、既存の一般的なアルゴリズムでは、時間ごとのフレーム(映像中の1コマの静止画)における、人を捉えた対象領域の重なりから同一人物として判別している。そのため、人が高速に移動するとフレーム同士に重なり合う領域が存在しなくなるので、同一人物であるという対応付けができなくなってしまうといった課題があった。

 今回はこれを解決するため、人を捉える対象領域を拡大して重なり合う領域を作り出し、独自のマッチングアルゴリズムを用いることで、同一人物であるという対応付けを可能にしたという。

開発した技術のイメージ

 富士通によれば、ショッピングモールや公共施設などでも高精度な追跡が可能になるため、長時間にわたる顧客の動線解析や見守りなどに活用可能とのこと。さらに、画像特徴量に依存しないことから、少ない計算リソースで利用でき、かつ顔や服装などの個人を特定する情報を用いないので、プライバシーに配慮した処理も可能としている。

開発したトラッキング技術の結果例

 なお同社の検証では、トラッキング分野で一般的に用いられている、画像特徴量や動きに対する仮定を用いた従来技術と比較したところ、トラッキング精度が17%向上することが示されたという。さらに、国際学会である「ECCV2022(European Conference on Computer Vision 2022)」で開催されたトラッキングコンペティションにて、参加19チーム中2位の精度を達成したとしている。

 富士通では今後、工場での作業行動認識や店舗内での顧客移動特性の分析をはじめ、自社の行動認識AIソリューションや画像処理AIソリューションへの適用検討を進めていく考えである。