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楽天モバイル、仮想化Open RANの技術検証環境「楽天モバイルオープンイノベーションラボ」を開設

 楽天モバイル株式会社は23日、仮想化されたOpen RANの商用モバイルネットワーク構築で得られた知見や技術を活用した技術検証環境「楽天モバイルオープンイノベーションラボ」を開設し、国内外の通信事業者やベンダーなどの企業、学術機関といったパートナーへの仮想化Open RANの技術検証環境の提供を開始した。

 モバイルネットワーク技術の一つであるOpen RANは、無線の送受信装置などの仕様をオープンにして、さまざまなベンダーの機器やシステムとの相互接続を可能とする標準化された無線アクセスネットワーク(RAN)。モバイルネットワークへの需要が多様化していく中、Open RANでマルチベンダー構成を実現することで、柔軟な機器調達やネットワークの構築コストを削減することが可能になる。オープンな規格に準拠しているため、安全性や透明性の高いRANの構築にもつながる。

 国内においては、ラボの機能を楽天クラウドイノベーションラボに設置することに加えて、国立大学法人東京工業大学および国立大学法人東京大学大学院工学系研究科中尾研究室の構内に、ラボと遠隔で接続した仮想化Open RANの技術検証環境を提供していく。また、楽天モバイルは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業」における委託研究において、東京工業大学および東京大学と共同で研究開発を実施している。

(左)東京工業大学の仮想化Open RAN設備、(右)東京大学の仮想化Open RAN設備

 楽天モバイルオープンイノベーションラボでは、パートナーが遠隔からラボに接続することで、仮想化Open RANの技術検証をすることができ、検証地点への移動が不要となるほか、自前で検証環境を構築することなく、迅速かつ簡単に開発を進められる。また、楽天モバイルは、パートナーが所有する施設において技術検証環境を構築することもできる。

 楽天モバイルは、国際的な標準化団体である「O-RAN ALLIANCE」の技術仕様(O-RAN)に準拠した仮想化Open RANを構築して、商用サービスを提供している。楽天モバイルのネットワークは総務省が掲げるBeyond 5G時代に求められるネットワークの基本構成要素を満たしており、ラボを通じて知見をパートナーに提供することで、マルチベンダー構成による複雑なエンドツーエンド接続確認や、O-RANの技術仕様への準拠試験を容易にするとしている。

 また、楽天モバイルは、すでにOpen RANベースの商用ネットワークにおいて、分散ユニット(vDU)と集約ユニット(vCU)を完全に分離した、柔軟な仮想化モバイルネットワークを構築している。ラボの検証環境でも、vDUとvCUを完全に分離し、仮想化ネットワークを構築することで、さまざまな拠点における検証を可能にし、パートナーが求めるネットワークの用途に応じた柔軟な仮想化Open RANベースのアーキテクチャ構築を実現する。

 ラボは、Beyond 5Gを見据えて、RANを管理・制御するインテリジェント機能「RAN Intelligent Controller」(RIC)によりネットワーク設計や運用の最適化の実証を支援することを目指している。楽天モバイルでは、RICプラットフォームと人工知能(AI)アプリケーションの開発を行っており、RICプラットフォームでAIアプリケーションを活用することで、ネットワークへの負荷や障害の可能性をあらかじめ検知してネットワークを自動的に最適化するほか、仮想化Open RANのパフォーマンスを向上し、安定した通信環境の開発にも取り組んでいく。

 楽天モバイルでは今後、ラボの提供を拡大することで、国内外における仮想化Open RANの研究開発を加速させるほか、クラウドネイティブなネットワーク機能を汎用ハードウェア(COTS)上で実行する分散型アーキテクチャとコンテナ化により、パートナーの仮想化Open RAN導入における総所有コスト(TOC)削減や自動化、イノベーションの推進に貢献するとしている。

(例)東京工業大学の仮想化Open RAN技術検証環境