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SCSK、FPGAの活用で従来比1000万倍高速化した量子AIシミュレーターを開発

 SCSK株式会社は14日、SCSK独自の量子AIアルゴリズムを搭載した量子回路シミュレーターを開発したと発表した。

 SCSKでは、国内において量子技術は重要な技術と位置付けられている一方、量子コンピューターの実用化には、アプリケーションの開発環境や技術的な課題があり、現時点では時間を要すると考えられていると説明。この課題の解決に貢献すべく、SCSKでは量子AIシミュレーターの研究開発を進めてきたという。

 開発した量子AIシミュレーターでは、量子カーネル行列生成をFPGA実装することで、CPUで実行した場合と比べ、機械学習データ1000件に対する演算処理が、約470倍高速であることを実証しており、AIの学習サイクルを高速に実行することが可能になるとしている。

 従来の汎用向け量子コンピューティングシミュレーターでは、100パラメーター程度の処理が可能であったが、量子SVMモデルに特化することで、衣類画像の2クラス分類において780パラメーターまでの実証をしており、理論上は1000パラメーターまで対応できるという。

 機械学習データ400件に対する演算処理では、従来シミュレーターでは16.5時間を要するのに比べて、量子AIシミュレーターは5.8ミリ秒で処理できることを実証しており、約1000万倍の高速を実現。また、量子AIシミュレーターは、現在クラウド環境(Amazon EC2 F1インスタンス)で動作しており、インターネット環境があればどこからでも利用できる。

量子カーネル行列生成の演算処理におけるデータ量と処理時間(* CPUとの通信時間を含む、** 計算処理のみ)
量子AIシミュレーターの構成イメージ

 SCSKでは今後、数百パラメーターが必要とされる、価格や材料特性などの数値を予測する回帰問題など、より多くの機械学習用途に対応する量子AIアルゴリズムの実現により、量子AIシミュレーターの用途をさらに拡大する研究開発に引き続き取り組んでいくと説明。顧客やアカデミアとの共創・実証実験などを通じ、セキュリティ分野における不正検知や製造分野における異常検知をはじめ、量子コンピューターのユースケースとして想定されている領域に対し、ソリューション開発を推進していくとしている。