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NEC、リモートセンシングとAI技術を組み合わせて橋の重大損傷を発見する技術を開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)は6日、衛星SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)を用いたリモートセンシングとAI技術を組み合わせて、橋の崩落につながる重大損傷を発見する技術を開発したと発表した。

 この新技術は、衛星SARとAI技術により、国土交通省が定める橋の点検項目のうち、従来は発見が困難だった“異常なたわみ”をミリ単位の精度で検知し、橋の崩落につながる重大損傷を発見するもの。

 橋は、構造や温度などによる影響を受けて変化するため、従来は異常性を見つけるためのしきい値を設定しづらかったという。しかしこの技術では、衛星を利用したリモートセンシングで得られた変位データと、橋の構造や気温の変化を独自AIに学習させ、橋の変位予測モデルを作成。“いつもの状態”を理解したうえで、予測から大きくはずれる変異がある場合に、いつもとは違う、異常なたわみがあると見なせるようになる。

 また変位予測モデルにおいて、橋の長手方向の位置によって異なる変位値をまとめて扱うことにより、橋全体に対する異常なたわみのしきい値を簡単に設定可能になるとのこと。

 NECでは、こうした仕組みにより、目視では気付きにくい程度の異常なたわみを、複数の橋に対してまとめて検知可能になるため、近接での目視点検が困難な河川・海・谷などに架かる橋の点検業務を効率化できると、そのメリットを説明した。さらに、定期点検の期間外において、橋の異常なたわみの有無を継続的に遠隔から確認し、異常なたわみがある橋を優先的に点検するといったことも可能になるとしている。

 なお同社はこの技術を評価するため、2021年10月3日に崩落した、和歌山県 紀の川 六十谷水管橋を撮影した過去2年間の衛星SAR画像を入手し、崩落前の六十谷水管橋の変位を計測したところ、崩落個所において、崩落1年前から他径間と比較して1.5倍程度の大きさの、崩落の前兆現象と考えられる変位が継続して観測されていたことが分かったとのことだ。

 NECは今後、この解析技術を強化し、2025年度を目標に、橋の管理者や点検従事者向けの製品化を図る考えだ。