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米Microsoftが働き方に関するレポートを公開、日本と世界の違いも明らかに

日本人は生産性は高いが“疲れている”

 米Microsoftは22日、働き方に関するレポート「Work Trend Index」の最新版を発表した。同レポートは、31カ国3万人以上を対象にした調査と、Microsoft 365およびLinkedInからのシグナルを分析したものだ。

 同調査に関する説明会にて、米MicrosoftでMicrosoft Teams担当ゼネラルマネージャーを務めるニコール・ハスコウィッツ(Nicole Herskowitz)氏は、「調査によって7つのトレンドが明らかになった」として、そのトレンドを紹介した。

米Microsoft Microsoft Teams担当ゼネラルマネージャー ニコール・ハスコウィッツ氏

 1点目は、柔軟な働き方は今後も続くということだ。「従業員の7割以上がどこからでも仕事ができる新しい柔軟な働き方を本格的に取り入れたいと考えており、企業側もそのような働き方ができるようツールを用意する必要がある」とハウスコウィッツ氏。同時に、人とかかわる時間やコラボレーションの時間も重要だと考えられていることから、「ハイブリッドな働き方を念頭に新しい職場づくりを検討するべきだ」としている。

今後も柔軟な働き方を続けたいと答えた従業員は73%にのぼる

 この点について、米Microsoft 未来の働き方担当シニアコミュニケーションマネージャーのロニー・マーティン(Ronnie Martin)氏は、「66%のリーダーが、今後1年で物理的なオフィススペースをハイブリッドな働き方に合わせて再構築する計画を立てている」というデータを紹介した。

米Microsoft 未来の働き方担当シニアコミュニケーションマネージャー ロニー・マーティン氏

 2点目は、リーダー層と従業員との間に溝ができている点だ。ハウスコウィッツ氏は、リーダーの61%は仕事がうまくいっていると回答している一方で、一般従業員でそう答えた人の割合はその数字を23%も下回っていた点を指摘。中でも、「Z世代や女性、フロントラインワーカー(現場で働く作業員)などが特に苦労しており、会社から多くのことを求められていると感じている」と述べた。

 3点目は、多くの従業員は生産性を維持できているものの、疲労を抱えているということ。「ツールのデータを見ると仕事量は増えており、54%の従業員が過労状態にあると感じている」とハウスコウィッツ氏。また同氏は、会議時間が前年比2.5倍に増加し、50%の人はチャットを5分以内に返信していると述べ、こうしたことが疲労の原因だろうとしている。

 4点目は、Z世代がリスクを抱えているという点だ。「若くてキャリアも浅いZ世代は、十分なサポートやトレーニングを得られておらず、ネットワーキングもできていない」とハウスコウィッツ氏。「60%のZ世代が、ぎりぎり生き延びている、もしくは苦しんでいると答えている」とのデータを示した。マーティン氏も、「Z世代は、ワークライフバランスや仕事に対する前向きな思い、他人とのコラボレーションといった分野で、ほかの世代より苦労している」と述べている。

さまざまな分野でリスクを抱えるZ世代

 5点目は、人的ネットワークが縮小し、これによってイノベーションが起こりにくくなっていることだ。ハウスコウィッツ氏は、幅広い人的ネットワークこそイノベーションを促進すると述べ、「ネットワークをいかにして再構築するか考えなくてはならない」と話す。ただし、マーティン氏は「ロックダウンが緩和されたニュージーランドや韓国では、コラボレーションが盛んになってきており、ハイブリッドな働き方がネットワークを再活性化する鍵になる」としている。

 6点目は、信頼が高まることで生産性や健全性も高まるということだ。リモート会議で家庭の様子が見えるようになったことから、「以前よりもチームメイトと人間的な関係を持てていると感じている人が増えた」とハウスコウィッツ氏は語る。

 7点目は、ハイブリッドな働き方に移行することで、才能を持つ人材を獲得しやすくなるということだ。ハウスコウィッツ氏は、2020年3月から12月の間でLinkedInにてリモートワークの求人が5倍以上に増えるとともに、リモートワークができることから引っ越しを検討している人が46%にのぼっているというデータを紹介、「これまで手に入らなかったような才能を持つ人材が手に入るようになる」としている。

 一方で、41%が今後1年で転職する可能性があると答えていることから、「リーダーは従業員を失うリスクも意識し、新たな働き方に対応していくべきだ」と指摘している。

今年転職を考えている人は世界平均で41%にのぼる

 このようにハイブリッドな働き方が進む中で、リーダーがやるべきこととしてハウスコウィッツ氏は、「柔軟性の高い環境で人の能力を高めること、空間やテクノロジに投資すること、トップダウンでデジタル疲労対策を採ること、社会資本と文化を再構築すること、従業員体験を再考すること」を挙げている。

日本人は、生産性が高いものの“疲れている”

 説明会では、今回の調査で明らかになった日本と他国との違いも示された。そのひとつが生産性の高さだ。ハウスコウィッツ氏によると、生産性レベルが去年と変わらないと回答した人は、世界平均が40%となる中、日本では63%にのぼったという。

 いっぽう、仕事で孤立感を感じている人が多く、その割合は35%。世界平均は27%だった。また、疲労とストレスを抱える人も多く、疲労を感じている人の割合は48%(世界平均は39%)、ストレスを感じている人は45%(世界平均は42%)だった。

 ただし、転職の意向は低く、1年以内に転職を検討する可能性があると回答した人は38%にとどまった。世界平均は先ほど紹介したとおり、この割合が41%となっている。

日本の傾向について