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安全・安心な公共インフラや教育、医療機関のデジタル化などに協力――、シスコが日本の取り組みを支援

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は12日、「カントリー デジタライゼーション アクセラレーション(CDA) プログラム」を、日本においてよりいっそう推進していくと発表。同日に、メディア向けの説明会をオンラインで開催した。

 CDAは、Ciscoが事業展開している各国において国家的なデジタル施策を支援する取り組みであり、デジタル化を加速し、その国の抱える課題解決や経済成長に積極的に関与・貢献していくことを目的としている。すでに世界40カ国で900以上のプロジェクトを実施しているとのことで、日本においてもIT人材の育成、ネットワークセキュリティ、教育、医療など、多くの取り組みが実施されている。

カントリー デジタライゼーション アクセラレーション(CDA)とは

 「ニューノーマルな時代に対応するため、デジタル化の加速が急務となっている。日本でも今年の9月にデジタル庁が設置されることを見据え、シスコジャパンにおいても今後より一層CDAを加速していく」とシスコ 代表執行役員社長 中川いち朗氏は述べる。

カントリー デジタライゼーション アクセラレーション(CDA)とは

 シスコは120カ国で事業を展開しているが、これらのすべての国でCDAが推進されているわけではない。米Cisco バイスプレジデント兼グローバル イノベーション オフィサー ガイ・ディードリック氏は、「世界各国でデジタル化が国家的な取り組みとして実施されるという流れが加速した。各国の先見の明を持ったリーダーと、パートナーシップを持ってデジタル化を推進するため、5年ほど前からCiscoが選び抜いた40カ国ほどの国においてCDAを展開している」と述べた。

CDAはシスコが選び抜いた40カ国で900以上のプロジェクトを実施

 グローバルで共通しているCDAのテーマは「GDPの成長」「雇用の創出」「イノベーションのエコシステムの構築」「インクルーシブ(包摂的)な将来」の4つだが、中でも特に重要なのはインクルーシブな将来、つまり1人も取り残されない社会の実現であるとディードリック氏は説明する。

 「現在、世界人口の40%の人がインターネットに接続できない状況にある。パンデミックによって、そのインパクトが浮かび上がってきた。特に誰でも質の高い医療サービスにアクセスできることの重要性が増している。そのほかにもCDAは『教育』『スマートシティ』『サイバーセキュリティ』『5G』『Wi-Fi6』『交通・輸送分野』『エネルギー』など多岐に及んでいる。日本はインクルーシブな世界の実現にしっかりコミットメントしており、それが日本でもCDAを展開する流れになった。シスコは今後もCDAへの投資を加速していくが、CDAが目指しているのは、誰もがつながる社会実現だ。なぜなら、つながることは、基本的人権の1つだと考えているためだ」(ディードリック氏)

米Cisco バイスプレジデント兼グローバル イノベーション オフィサー ガイ・ディードリック氏

 シスコ 代表執行役員会長の鈴木和洋氏は、「ニューノーマル下における日本のさらなるデジタル化を支援し、日本の持続的な経済成長と安心・安全な社会に貢献したい」という日本におけるCDAのビジョンを紹介。さらにシスコの注力する分野として、「安心・安全な公共インフラ」「教育のデジタル化」「テレワークの推進と高度化」「新型コロナウイルス対策と遠隔医療」「サプライチェーン」「規制改革とデジタル社会」の6つを挙げ、すでに複数のプロジェクトが進行していることを明らかにした。

シスコ 代表執行役員 会長 鈴木和洋氏
日本における注力分野

 安全・安心な公共インフラに対する支援の例として鈴木氏は、先日発表されたアラクサラ、NECと日本の重要インフラに向けた情報セキュリティ対策における戦略的協業を挙げている。

 教育機関へのデジタル化支援については、1人1台端末時代において、安定、安全、安心の大容量な無線ネットワーク環境、オンライン授業などをサポートするコミュニケションツール、教育現場におけるセキュリティソリューションなどのプロジェクトが進行中であるという。鈴木氏は現在進行中のプロジェクトとして、相模原市教育委員会、玉川聖学院、東京都教育庁、研修プログラムであるネットワーキングアカデミーなどを例に挙げている。

安全・安心な公共インフラに対する支援
教育機関へのデジタル化支援

 医療機関へのデジタル化支援について鈴木氏は、「すでに医療の現場では、規制改革を含めたさまざまな取り組みが行われている。特にコロナ禍によって人との接触が制限されている現状では、現場に多くの苦労がある」と述べる。具体例として発熱外来においてタブレット端末を利用した遠隔問診、Web会議システムを利用したオンライン診察などがある。

 新しいデジタル社会の事例としては、デジタル・スポーツ(スポーツの新しい観戦体験)に関連する取り組みを紹介している。具体的な例としてスタジアムに行けない人向けにデジタルで観戦できる環境の提供、あるいは試合後にWeb会議システムによって選手とコミュニケーションできるような新たなファンサービスの実現などを挙げた。

医療機関へのデジタル化支援
デジタル・スポーツの取り組み(新しいデジタル社会の事例)

 5Gについては、現在主要キャリアが取り組んでいる公衆の無線ネットワークだけではなく、ローカル5G(自営による5G、5Gによるプライベートネットワーク)による新しい働き方の実証実験を、NTT東日本や新潟県と進めていることを紹介。高精細カメラ映像による遠隔会議や、3DVR(仮想現実)による遠隔協調作業システムなどの構築において、5Gに最適化したハイパフォーマンスなシステムを実現することを目的としているという。

ローカル5Gの実証実験

 鈴木氏は「日本が持続的な成長をしていくためには、新しい社会インフラが必要。前回の東京五輪で高速道路や新幹線といった新しい社会インフラが日本の高度成長を支えたように、今後も日本が持続的に成長するためにはデジタル技術を実装した新しい社会インフラが必要になる。そのインフラ構築をパートナーとともに支援し、日本の成長に貢献していきたい」と述べた。

 説明会では、平井卓也 デジタル改革担当大臣もゲストとしてビデオで登壇し、「IT人材教育、ネットワークセキュリティ、産業、医療などCDAの取り組みは、日本のデジタル庁が目指す方向性と同じ。その上でGIGAスクール、ローカル5G、遠隔医療などシスコの支援は、アフターコロナを見据えたときに非常に大きい」とシスコの取り組みを歓迎するコメントを寄せている。

 さらに平井大臣は「今国会では規制緩和も含めデジタル化に関連する法案が多数審議されるほか、今年の9月1日にはデジタル庁が発足する。今回のパンデミックによって、目指す社会の姿が見えてきたように思う。人が動けなくなっても経済成長していける社会モデルとはどういうものなのかを、これから模索していかなければならないだろう。日本には優良なインフラやデジタルテクノロジーはあるものの、これらを活用したDXは各国と比べて進んでいないことは認めなければならない。リソースはあるので、マインドセットを変えれば、デジタル庁がDXの司令塔や経済成長の推進役にもなれる。今後、日本なりのデジタル化をどう進めていくかが、一番大きなテーマになる。そのためにも、シスコには今後も協力いただきたい」と述べた。

平井卓也 デジタル改革担当大臣