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マルチクラウド環境で顕在化する問題の解決を支援――、シスコが最新ソフトウェアソリューションを紹介
2020年12月14日 06:00
シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は11日、「マルチクラウドの課題とシスコの最新ソリューション」と題したプレスラウンドテーブルを開催した。管理ツールIntersightを中心に、マルチクラウドを想定したコンテナやハイパーバイザー、リソース最適化などのロードマップが解説された。
冒頭でシスコの石田浩之氏(執行役員 データセンター/バーチャライゼーション事業担当)は、マッキンゼー・デジタルの調査結果から、パンデミックによりクラウド利用が増加していることや、セキュリティとコストとガバナンスがクラウドの大きな課題となっていること、クラウド移行の最も大きな課題はアプリケーションの相互依存関係の把握であることなどを紹介。マルチクラウド環境で顕在化しているさまざまな問題をいかにCiscoが具体的に解決するかについて解説すると述べた。
クラウド型サーバー管理のIntersightがKubernetesに対応
シスコの吉原大補氏(データセンター/バーチャライゼーション事業テクニカル アーキテクト)は、まずCisco製品のポートフォリオを、既存領域と、強化するエリアであるソフトウェア中心のポートフォリオに分け、今回は後者について説明すると述べた。
まず、サーバーのUCSシリーズとHCIのHyperFlexシリーズで、管理ツールとして従来のCIMC(Cisco Integrated Management Controller)に加えて、クラウド管理のIntersightが提供されていることを紹介。Intersightは「無線LANのMerakiのサーバー版と考えていただければ」と吉原氏は説明した。サーバーをラックマウントしてネットワーク接続し、登録すれば、あとはクラウド経由で運用管理できる。
ここで吉原氏はIntersightの全体像の図を見せ、現状では基礎となるIntersight Infrastructure Serviceまでの提供であるとして、以降は図で空白になっている今後の機能を紹介した。
まずはコンテナと仮想サーバーだ。CiscoはCiscoは2018年5月にKubernetesディストリビューションの「CCP(Cisco Container Platform)」をリリースしている。これをクラウドで提供する「IKS(Intersight Kubernetes Service)」を、2021年第1四半期にリリースする予定(10月に発表)。
「オープンソースのKubernetesを利用しようとしたときの問題の一つとしてバージョン管理があり、アドオンのバージョンが安定して動く組み合わせで苦労する。それをCCPでコンポーネントをパッケージ化して解決する。その一方で、CCP自体のバージョンもけっこうな頻度で上がるという問題があって、これをIKSが解決する。IKSはクラウドで提供されるので自分でバージョンを上げる必要がない」(吉原氏)。
独自ハイパーバイザーも
IKSの対象はHyperFlexのみだが、将来は他社のサーバー製品やパブリッククラウドにも対応とする予定だという。
その動作基盤となるハイパーバイザーも、VMwareに加え、Cisco独自ハイパーバイザーである「HXAP(HyperFlex Application Platform)」もIntersightで提供する予定だ(4月発表)。
HXAPは、リリース当初はKubernetes専用だが、やがては汎用HVにしていくという。なお、KVM(Linuxのハイパーバイザー)ベースのハイパーバイザーで、「ネットワーク製品をKVMベースで開発してきたノウハウを生かしている」と吉原氏は説明する。
「これまでIntersightでハードウェアを管理してきた。IKSとHXAPにより、KubernetesもハイパーバイザーもIntersightで管理できるようになる。将来は、サーバーレスにも対応する考えがある」(吉原氏)。
Terraform対応とワークロード最適化
IKS以外に、Intersightによる運用合理化の機能も2つ紹介された。
まずはオープンソースの構成管理ツールTerraformへの対応だ。オンプレミスやパブリッククラウドのサーバーをIntersightの管理下に置き、そのIntersightをIntersightからコントロールすることで、Infrastructure as Codeを実現できるという。すでに一部実現しており、今後はAnsibleにも対応していく予定と語られた。
2つめはワークロード最適化のCisco Intersight Workload Optimizer(IWO)だ(10月発表)。「クラウドに仮想マシンのインスタンスを立てたはいいが、アクセスされないで、コストだけかかる、というのはよくある」と吉原氏。そこで、リソースの拡張・縮小や、インスタンスのサイズ変更などの最適化を提案し、ワンクリックで対応できるようにする。
このIWOで、マルチクラウドやハイブリッドクラウドの最適化に対応していることを吉原氏は紹介した。需給のサプライチェーンを自動的に1枚のグラフ図にまとめて、リソースの不足や過剰を見つけ、割り当てを最適化できるという。API経由で、エージェントレスで情報を取得し、「登録して40分ぐらいで図が描かれる」(吉原氏)。
ACIとAppDynamicsのハイブリッドクラウド対応
最後に吉原氏は、Intersight以外のソリューションで、ネットワークとアプリケーションでのハイブリッドクラウド対応について紹介した。
ネットワークでは、SDNソリューションのACI(Application Centric Infrastructure)のハイブリッドクラウド対応だ。Cisco Multi-site Orchestratorにより、各パブリッククラウドの“方言”を吸収し、ACIから統合的に管理できる。「セキュリティとしても、一環したポリシーが適用されるようになる」(吉原氏)。
アプリケーションでは、APM(アプリケーションパフォーマンス管理)ソリューションのAppDynamicsだ。このAppDynamicsの新しい機能としては、ACI / DCNM(Nexus Dashboard)によるアプリケーションとネットワークの同時の最適化、IWOとの連携、2020年に買収したThousandEysのネットワークの可視化との連携が紹介された。
さらに吉原氏は、AppDynamicsやThousandEys、IWOのCisco社内での導入事例を紹介して、「この効果を利用企業にも提供する」とアピールした。