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日立、研究開発拠点「協創の森」にローカル5G実証環境を開設、社会インフラ向けエッジコンピューティング技術を実証

 株式会社日立製作所(以下、日立)は23日、東京都国分寺市の日立製作所中央研究所にあるイノベーション創生を加速するための研究開発拠点「協創の森」において、商用局免許でのローカル5G実証環境を開設し、5Gを活用したデジタルソリューションを現場に迅速に導入して安定的に運用できる、高信頼なエッジコンピューティング運用技術を実証したと発表した。

 日立では、5Gの特性を生かした映像伝送技術やシステム制御技術を現場に導入することで、生産性が飛躍的に向上することが見込まれるが、安全と品質を担保する社会インフラ事業のシステムには高い信頼性が求められると説明。今回、こうした社会インフラ分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の仮説検証の場として、協創の森にローカル5G実証環境を整備し、稼働を開始するとともに、顧客が5Gを活用する際の基盤となる、5Gソリューションの導入と運用を容易にする技術を開発した。

 顧客ごとに機器制御や映像伝送などのアプリケーションに求める通信品質は異なり、現場ではこれら複数の通信が混在している。開発した技術では、配備するアプリケーションの通信要件と現場のネットワーク環境に応じて通信品質保証する最適な通信方式を選択することで、アプリケーションに応じた信頼性の高い5G通信環境を迅速に提供できる。

 アプリケーション要件を満たすためには、通信遅延を削減できる現場(エッジ)での処理と、大量の演算を行えるクラウドでの処理を組み合わせる必要がある。開発した技術では、現場におけるスペースや電力、レイアウトなどから生じるコンピューティングやネットワークの制約を把握して、現場のシステム環境などに応じて最適な機能の配備と追加を容易に実施でき、柔軟なシステム運用を可能にする。

 また、現場のエッジデバイスにはコンピューティング性能に限界があり、画像認識などの高負荷なAI処理のリアルタイム実行が困難だった。開発した技術では、エッジデバイスで動かすディープニューラルネットワーク(DNN:推論モデル)の認識精度を維持しつつ、不要な計算部分を削減するための学習を効率的に行うアルゴリズムにより、推論モデルを自動的に計量・圧縮生成する。これにより、制約のあるエッジデバイスで高負荷なAI処理のリアルタイム実行を可能にする。

 日立では、今回開設したローカル5G実証環境で、製造ラインの機能変更が頻繁に発生する多品種少量生産の製造現場を模擬し、映像による作業者支援の検証を行った。その結果、機器制御や映像伝送など複数系統の無線通信が混在する環境でも、パケット誤り率0.0001%、遅延時間50ミリ秒以下と、システムの運用に必要な高信頼かつ低遅延の通信環境が構築できたとしている。

 さらに、従来1時間以上かかっていたアプリケーションの配備も、専門的な知識なしに1分以内で実施でき、この結果から技術により長時間の生産ライン停止を抑制でき、5Gを活用したシステムの導入・運用が容易にできることを確認したとしている。

 日立では、今回の取り組みを含めた日立グループの5Gへの取り組みについて、11月4日~6日に開催する「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」において紹介する。