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日立、製品の打音や設備の稼働音などの音響データからAIにより異常音を検知するソリューションを提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は22日、製造現場における製品検査や設備保全を対象に、製品の打音や設備の稼働音などの音響データから異常音を検知するソリューションを11月2日から販売開始すると発表した。

 ソリューションは、日立の自社工場での実績・ノウハウをもとに実用化したマイク機能搭載の無線センサーなどにより収集した音響データを、日立が独自に開発した高精度に音響を解析するAI技術で解析し、製品不良や設備故障による異常音を検知する。

 ソリューションにより、検査員の経験に基づいて行われていた製品や設備の聴音点検の高度化・効率化が可能となり、品質トラブルや設備故障を未然に防ぐことで、安定した製造現場の操業や設備稼働および、企業の品質保証体制の強化を支援する。

 日立では、製造現場の業務効率化などデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは、コロナ禍においてさらに加速しており、製品検査や設備保全においても、目視や聴音といった人の感覚に頼った従来の検査や点検から自動化・省力化することが求められていると説明。特に、多様な情報を持つ音を活用した聴音点検に対するニーズが高まっているが、後継者不足のなか、いかに品質トラブルや設備故障の予兆となる異常音の判定に必要となる熟練者の経験やノウハウを継承するかが、喫緊の課題となっているとしている。

 こうした背景を受け、日立では製品検査や設備保全を対象として、AI技術や無線センサー技術を活用し、音響データから異常音を検知するソリューションを販売する。

ソリューションの概要図

 ソリューションでは、製品検査と設備保全の利用用途に合わせて、音による製品検査を可能とするIoTデータモデリングサービスと、音による設備保全を可能とする設備点検自動化サービスの、2つのサービスを提供する。

 これらのサービスにより、従来、検査員の経験やノウハウに基づいて現場で行われていた判定を、データ解析に基づいた定量的な判定により補完することで、安定した品質の維持や、遠隔での設備監視などが可能になる。また、AI技術を使った解析により、検査員では気づかなかった新たな特徴まで検知できるようになるため、検査の品質をより向上させ、企業の品質保証体制の強化を支援することができるとしている。

 IoTデータモデリングサービスでは、製品の異音検査に向けたIoTデータ監視サービスを提供。サービスではまず、製品の聴音検査を対象として、製品の稼働音や加工音、打音などを、音の特徴や製造現場の環境に合わせた市販の汎用マイクで収集した上で、AI技術により音源を分離して雑音を除去するとともに、対象となる検査音の特徴量を抽出し、音の異常度を算出・可視化することで、異常音を検知する。

 音分析においては、稼働音の変動や、周囲の環境音の変化など、条件や時間により音のブレが大きいという課題があるが、日立のAI技術ではそうした音のブレに対応しながら、幅広い条件下で高精度に異常音を検知できる。これにより、空調の強さなどが変化する環境にも導入でき、リアルタイムに収音と判定を行うため、製品検査工程における迅速な検査結果の確認や不良音の検知が行える。

 IoTデータモデリングサービスの価格は個別見積もり。提供開始時期は2021年4月。

 設備点検自動化サービスでは、設備の点検を対象として、マイク機能を搭載した日立独自開発のレトロフィット無線センサーにより設備の稼働音を収集・解析して、異常音を検知する 異音検知システムを提供する。

 レトロフィット無線センサーは、日立の自社工場での実績・ノウハウをもとに実用化したもので、電池駆動・防水防じんかつ無線通信が可能で、電源や通信ケーブルの設置が難しい屋外や高所の現場でも容易に導入できる。さらに、日立独自の高度な電源制御技術を適用した省電力設計により、電池による5年間連続稼働を実現。分析には、AI技術を適用し、正常時の音響データをAIに学習させるだけで、すぐに音の異常を可視化できる。

 日立は、2018年からアナログメーターの目視点検を自動化するカメラ機能を搭載したレトロフィット無線センサーを販売しており、今回のマイク機能を搭載したレトロフィット無線センサーとの併用により、設備点検自動化の範囲を拡大できるとしている。

 設備点検自動化サービスの提供価格は個別見積もり。提供開始時期は2021年1月。

 日立では、今回のソリューションの継続的な強化を図るとともに、既存のIoTデータモデリングサービスなどと連携することで、音響以外のデータも利活用し、顧客のオペレーションコストや製造プロセスの継続的な改善までを支援していくと説明。また、ソリューションの先行的な顧客との取り組みをLumadaのユースケースとし、幅広く提供することで、企業のDXを支援していくとしている。