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NEC、ロボット導入・活用を容易にするティーチング作業自動化AIを開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)は27日、これまでロボット専門家が人手で行っていたティーチング作業を自動化するAI技術「目標指向タスクプランニング」を開発したと発表した。

 ティーチング作業とは、作業目標を達成する一連の作業手順の設計、および作業手順に沿ってロボットを動作させる制御命令の作成と設定をする作業のことを指す。この技術により、ロボットを利用する現場の作業者が作業目標を指示するだけで、作業目標を達成する動作をロボットに自動実行させることが可能になり、作業変更が頻発し、作業環境が変化しやすい現場でもロボット導入・活用が容易になる。

ロボット導入における技術の効果

 NECでは、組立業や倉庫業、食品工場をはじめ、作業内容が週・日単位で頻繁に変更になる現場においてもロボット導入の検討が増えており、こうしたロボットに作業をさせるためには、一般的には専門家によるロボット動作のティーチングが手動で行われていると説明。特に、物品の整列や箱入れなど、ロボットにとって複雑な作業では、作業手順とロボットの動かし方を最適化するための試行錯誤が必要で、作業設定に数時間程度必要なため、作業変更が頻発する現場では、ロボットの導入あるいは継続的な活用が困難だったという。

 今回、NECではこうした現場向けに、ロボット専門家によるティーチングがなくてもロボット活用を可能にするAI技術として、目標指向タスクプランニングを開発した。これにより、たとえば現場作業者が「複数の部品を棚上のトレイに仕分ける」という作業目標を指示すれば、ばらばらに置かれた複数の部品を適切な順序でピックアップし、棚にぶつからずにトレイに運ぶように、作業手順とロボットの動かし方を自動で最適化できる。

 目標指向タスクプランニングによるティーチングプロセスの自動化により、ロボット稼働までの時間を大幅に短縮できる。たとえば、入荷部品の棚入れ作業の場合は、部品や棚の配置に応じた作業手順の作成およびロボット動作の設定に、専門家が人手で2~3時間かけていたが、今回開発した技術により自動で数分程度に短縮できる。

 また、設定外の事象にも自動で対応が可能。ロボットを設定する場合、棚の付近や作業台に関係ない部材を混入させないなど、例外が発生しないように周辺環境を整えておくか、専門家がさまざまな状態を想定した作業手順を事前に設定しておく必要があった。一方、目標指向タスクプランニングを用いれば、設定外の事象があっても、作業目標の達成に向けた作業手順をその場で自動的に設定し直すことができ、ロボット用に特別に整備された環境を用意する必要がないという。

 開発した目標指向タスクプランニングの一部は、東京工業大学工学院システム制御系 山北昌毅准教授らのグループとの共同研究の成果で、10月25~29日に米国ラスベガスで開催予定の国際会議IROS2020で発表する。

 また、NECがロボット活用領域の拡大を目指して協力関係にあるオリックス・レンテック株式会社の常設ロボットショールーム「Tokyo Robot Lab.」において、9月初旬からAI技術を適用したピック&プレイス自動化ロボットをデモ展示を行う。さらに、同技術の関連デモは、NEC玉川事業場の「NEC DX Factory共創スペース」にも実装し、公開している。