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セルラーLPWAを利用したIoTサービスでLPガス事業者を支援、KDDIが新サービスを紹介

 KDDI株式会社は、LPガス事業者向けサービス「KDDIガスプラットフォーム」を4月1日から提供すると発表。3月30日に記者説明会を開催し、その詳細を説明した。

 このサービスは、セルラーLPWA(LTE-M)を活用し、ガスの遠隔自動検針、ガス契約者向けメッセージサービスなどをトータルで提供するプラットフォーム。電気、都市ガスに比べスマートメーター導入が遅れているLPガスにフォーカスしており、電力スマートメーターなどで培ったノウハウを活用して、新サービスを提供する。

KDDIガスプラットフォーム

 「LPガスのスマートメーター化が遅れている背景には、電気に比べ事業者数が全国1万000社と多いことや、LPガスのメーター設置場所では電源が取れず電池駆動が必要になることなどがある。今回、消費電力が少ないLPWAを活用することで、低消費電力化、低料金化を実現できる」(KDDI ソリューション事業本部 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT営業推進部長の落合孝之氏)。

KDDI ソリューション事業本部 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT営業推進部長の落合孝之氏
市場の概況

 2019年に実施した実証実験に参加し、今年5月から新サービス導入を決めた三愛石油 ガス事業部 ガス販売部 販売課長兼ガス保安技術室長の宮原潤氏は、「auというコンシューマ向けサービスと連携していることに加え、人員確保が難しくなっている検針員なしに検針できる点が魅力」と説明している。

三愛石油 ガス事業部 ガス販売部 販売課長兼ガス保安技術室長の宮原潤氏

 KDDIガスプラットフォームは、LPWAを活用した自動検針、集中監視システムを提供するサービス。さらに、LPガス事業者がガス契約者(需要家)にメッセージを送れるポータルサイト「ガスポータル」が提供され、これまでは紙や電話を活用してきた事業者と契約者のコミュニケーションにおいて、SMSなどのメッセージ配信を活用できるようになる。

LPWA(LTE-M)による自動検針機能
ガスポータル
LPガス事業者側の管理画面

 サービス開始時点ではポータルサイトを通じた需要家管理機能とメッセージ配信機能が提供され、今後はガス残量予測、配送ルート最適化、24時間・365日の集中監視などのサービスが追加されていく計画だ。

 料金は、LPガス機器に設置するセルラーLPWA内蔵のNCU(ネットワーク・コントロール・ユニット)1台あたり、基本機能を提供するStandardプランが月額130円から、より提供機能が増えるPremiumプランが月額150円から。さらに一時金として、契約事務手数料、NCU購入費用などが発生する。

 なお、LPガス向けのスマートメーターは他社からもサービスが提供されている。これに対しKDDIでは、「全国のLPガス事業者2400社のうち、スマートメーターを採用しているのは600社程度で、ここ数年横ばい状態が続いている。新たな事業者は出てくるものの、利用状況には変化がない」(落合氏)とし、市場に変化が起こっていないと指摘する。

 今回、KDDIガスプラットフォームを提供するにあたり、電気のスマートメーターは電源が取れるが、LPガス設置場所では電源が取れない場所が多いことから、低消費電力のLPWAを利用して電池駆動でも最長10年程度利用可能なNCUを採用することや、利用料金を低価格化することなどにより、需要獲得を見込んでいる。

セルラーLPWA内蔵の3回線タイプのNCU

 電気事業者向けスマートメーター提供で獲得したノウハウを生かしながら、現在は全体の20から25%にとどまっているガスメーターの自動検針化を進めていく考えだ。

 なおガスポータルからは、au以外のキャリアを利用しているユーザーに対しても、+メッセージやSMSを活用した、毎月の利用料金の配信、点検日などの希望日集計といった機能を利用できるほか、今後、アジャイル開発手法で必要な機能を順次提供していくことを計画している。

 現在、提供予定のサービスとしては、前述のように、事業者向けには施工管理アプリ、ガス残量予測、プロパンガス配送ルート最適化などを提供予定。ガスを契約している利用者向けには、ガス利用状況の見える化、auかんたん決済を利用した決済、auIDを利用した認証などを提供する予定だ。

サービス機能拡張

 KDDIの法人向けIoT事業について、KDDI 執行役員 ソリューション事業本部ビジネスIoT推進本部長の永井真澄氏は、「当社の法人向けIoT事業は、2001年のスタート以来、着実に回線数を増やし、2019年11月には1000万回線を突破した。回線数をさらに拡大していくことが今後の目標となるが、その1つが今回のLPガス向けサービスになると期待している。当社のIoTサービスの強みは、IoT利用に必要なソリューションを提供するグループ会社がそろっていることで、エンドトゥエンドでサービスを提供することができる点。さらに5Gサービスがスタートすることで、お客さまの業務改革をより一層進めていく」と、ビジネス拡大に自信を見せた。

KDDI 執行役員 ソリューション事業本部ビジネスIoT推進本部長の永井真澄氏