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インテル、5Gネットワークインフラ向けポートフォリオを発表 無線基地局向けのAtom P5900など

オンライン記者発表会レポート

 インテル株式会社は17日、5Gインフラ向け新製品として、無線基地局向けの10nmベースのシステムオンチップ(SoC)である「Intel Atom P5900」など、ハードウェアからソフトウェアに至るまでのポートフォリオを発表した。

 これらの取り組みについて、インテル 執行役員常務 技術本部 本部長の土岐英秋氏が説明を行っている。

 土岐執行役員常務は、「データセントリックの世界においては、5G、AI、エッジ、クラウドの4つが大きなトレンドになっている。データの可能性を最大限に引き出すためには、データ移動の高速化、より多くのデータを保存すること、あらゆるデータを処理することが求めているからだ。これをサポートするために、インテルは新たなポートフォリオを提供し、変革やワークロードをサポートする」と前置き。

 「5Gは、生成されたデータをどう使うか、データを受け取るかという点において重要なトレンドとなっており、データセンターからコア、エッジに至るまでのネットワークの変革に貢献する。インテルは、5Gインフラストラクチャー向けの比類のないシリコンポートフォリオを実現するとともに、ソフトウェアを活用し、ネットワークインフラの変革を最前線で推進することになる。ネットワーク向けシリコンプロバイダーとしてナンバーワンを目指す」と、自信をみせた。

インテル 執行役員常務 技術本部 本部長の土岐英秋氏

4つの新製品を発表

 今回、インテルが発表したハードウェアは、業界で唯一、AI機能を内蔵したCPUの「第2世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー」、世界初の5G基地局向けIA SOC「Intel Atom P5900」、インテル初の5G対応ストラクチャードASIC「Diamond Mesa(開発コード名)」、初の5G最適化ネットワークアダプタ「インテル イーサネット700シリーズ(開発コード名:Edgewater Channel)」の4製品だ。

4つの新製品

第2世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー

 第2世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサーは、3000万台を超える販売台数を誇るXeonスケーラブル・プロセッサーの新たな製品で、前世代のインテル Xeon Goldプロセッサーと比較して、平均で36%のパフォーマンスの向上を実現。1ドルあたりでは、平均42%高いコストパフォーマンスを実現した。また、インテル ディープラーニング・ブーストにより、競合するCPUと比べて、AI性能が6倍になっているという。

 さらには、ネットワーク向けにチューニングした「N SKU」も用意されており、前世代のインテル Xeon Goldプロセッサーと比べ、58%の性能向上を達成したとのこと。

 こうした特長から、「史上最速のXeon。これまで以上に、さまざまな場面でお役に立てる」と位置づける。

第2世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー

 また、ハードウェアで強化されたセキュリティと組み込みの暗号化アクセラレータにより、データとプラットフォームの整合性を保護。さらに、優先するワークロードにおけるパフォーマンスを発揮できるよう、18個のインテルSelectソリューションを提供する。

Atom P5900プロセッサー

 Atom P5900プロセッサーは、10nmベースのSoCで、高帯域幅や超低遅延といった、5G基地局に必要とされる機能を満たすように設計、実装している。

 インテルアーキテクチャを、コアからアクセス、ネットワークのエッジまでを拡張。ネットワーク環境向けのインテルのシリコンポートフォリオを強化するとともに、インテル製シリコンを無線基地局市場における基盤として導入することができる。

 整数スループットにおいては、最大1.8倍の性能を実現したのに加え、インテル ダイナミック・ロードバランサーにより、パケット処理のスループットを最大3.7倍に、インテルQuick Assistテクノロジーにより、暗号化のスループットも最大5.6倍にまで性能を高めている。

 「インテルは、基地局の主要なシリコンプロバイダーとして、2020年に40%のシェアを獲得する予定でいたが、2021年までに達成できる」とし、Atom P5900は、2024年までに600万の5G基地局に導入する予定だ。

Atom P5900プロセッサー

Diamond Mesa

 Diamond Mesaの開発コード名で呼ばれるインテル初のストラクチャードASICでは、5Gネットワークに求められる高いパフォーマンスと低遅延を実現。インテルのプロセッサーおよびFPGAのポートフォリオを補完するように設計。前世代製品と比較して約2倍の性能向上と、50%の消費電力削減を目標にしているという。

 ストラクチャードASICは、FPGAに比べてパワーとコストを少し向上させ、カスタムASICの複雑さを低減できる。2021年後半には出荷する予定だ。

 インテルは、Diamond Mesaの投入により、ネットワークインフラ市場において、全方位的なシリコンプラットフォームを提供する唯一の事業者、というポジションを確立できるとアピールした。

Diamond Mesa

インテルイーサネット700シリーズ

 また、イーサネットNICであるインテルイーサネット700シリーズは、コードネームでEdgewater Channelと呼ばれているものであり、インテル初の5Gに最適化したネットワークアダプタだ。2020年第2四半期に量産を開始する。

 GPSベースのクロス・ネットワーク・サービスに、ハードウェア的な機能強化を図ったPrecision Time Protocol(PTP)を搭載。ハードウェアおよびソフトウェア両面での機能強化を組み合わせることで、5Gネットワークに必要なタイミング精度の向上を実現する。

インテルイーサネット700シリーズ

 さらにソフトウェアでは、Open Network Edge Services Software(OpenNESS)に新たな機能を統合した。

 スタンドアロンの5G NR(New Radio)とEnhanced Platform Awareness(EPA)の展開をサポートでき、より柔軟であり、容易にクラウドネイティブなエッジ向けマイクロサービスの展開が可能になるという。

 またインテルは、カスタム化された5G展開を加速できるように、カスタマイズしたOpenNESS体験キットを提供。OpenNESSは、インテルのOpenVINOとOpen Visual Cloudを補完し、エッジにおけるワークロードの開発ニーズに対応する。

 インテルでは、5Gへの移行によって、2023年までに、250億ドル規模のネットワークインフラに対する半導体市場機会が創出されると予測している。

 インテルの土岐執行役員常務は、「データセンターで培った技術をネットワークで使い、5Gの新たなサービス、体験を少しでも速く提供するのがインテルの役割である。世界を変えるテクノロジーが、地球で暮らす、すべての人々の生活を豊かすることを目指す」とした。