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東京エレクトロン デバイス、米Cerebrasの超高速ディープラーニングシステム「CS-1」を受注開始
2019年12月20日 11:43
東京エレクトロン デバイス株式会社(TED)は19日、米Cerebras Systemsと販売代理店契約を締結し、超高速ディープラーニングシステム「CS-1」の国内受注を開始したと発表した。同日には、「CS-1」の製品概要および日本市場での販売戦略について記者説明会が行われた。
説明会の冒頭であいさつした東京エレクトロン デバイス代表取締役社長の徳重敦之氏は、「今回、Cerebras Systemsと国内初の販売代理店契約を締結できたことをうれしく思う。AI市場が拡大し、今後さまざまな分野に導入が広がることが予想される中、より高度で高精度なAIを実現するための演算機能の提供、および超高速ディープラーニングシステムのサービス導入は先進的な顧客のニーズに応えることができると確信している。当社では、導入から構築、サポートに至るまで、一気通貫でシステムを提供できる体制を整えており、経験豊富なエンジニアのサポートとともに、ディープラーニングを活用する幅広い顧客でのAIサービスの提供に貢献していく」との考えを述べた。
超高速ディープラーニングシステム「CS-1」を開発したCerebras Systemsは、コンピュート・システムのパイオニアやコンピュータサイエンティスト、ディープラーニング・リサーチャーが参集し、2016年に米国で設立したスタートアップ企業。Cerebras Systems CTO and Co-FounderのGary Lauterbach氏は、「当社は創業当初から、AIのワークロードを加速化することを目的に、『演算能力を永遠に変えてしまう』という大きなミッションを掲げている。現在は、200人以上のソフトウェア、ハードウェアのエンジニアをワールドクラスで抱えており、機械学習のリサーチャーやプロダクトおよびテクニカルリーダーなども含めて、チーム一丸となって超高速ディープラーニングシステム『CS-1』を開発した」と説明した。
「CS-1」は、ディープラーニング専用に設計された21.5cm角の大型半導体「WSE(Wafer Scale Engine)」を搭載している点が大きなポイント。「WSE」は、積和演算を実行する40万個のコアと18GBのSRAMのオンチップメモリを実装しており、Cerebras Systemsの調べでは、現在の最大のGPUチップと比較して56倍の面積、78倍の演算コア、1万倍のメモリバンド幅、3万3000倍のファブリック帯域を持ち、GPUベースの従来システムに比べて学習時間を大幅に短縮することができるという。
Cerebras Systems Director, Product ManagementのAndy Hock氏は、「『WSE』は、地球上で最大のコンピュータチップであり、AIの演算能力で最もパワフルなプロセッサとなっている。特にディープラーニングにおいては、シングルチップでクラスタ構成を組んだプロセッサと同等の演算能力を発揮する。また、現在使われている機械学習のフレームワークでも『WSE』をプログラミングできるよう、『Cerebras Software Platform』を提供している。さらに、より低いレベルでのAPIを用意しており、オペレーションをユーザー側でカスタマイズできるほか、ディープラーニング以外の適応分野に対しても『WSE』を拡張することができる」としている。
「WSE」を搭載し、ディープラーニング専用システムとして最適化したことで、「CS-1」の設置面積は標準19インチラック15U相当、最大消費電力は20KWと、従来システムに比べて大幅な小型化、低消費電力を実現している。また、TensorFlowやPyTorchなどの主要なマシンラーニングフレームワークを統合するため、ユーザーはワークフローを変更せずに学習を開始することができる。
日本市場に向けた販売戦略について、東京エレクトロン デバイス 執行役員 CN BU 副BUGMの上善良直氏は、「当社は、プラットフォームビジネスにおいて、これまで国内市場で数々のプロダクトやマーケットを立ち上げてきた。また、ソフトウェア開発の面でも、5年以上前からAI・機械学習の技術を自社開発ソフトウェア製品やサービスに適用してきている。こうした実績やノウハウをベースに、『CS-1』の国内販売にあたっては、製品単体ではなく、サーバー、ネットワーク、ストレージを組み合わせたシステムでの提供を行うとともに、導入から構築、検証支援までをトータルでサポートする。これにより、Cerebras Systemsの日本でのビジネス展開を強力に支援していく」と述べた。
さらに今後、AIラボセンターとして「TED AI Lab」を開設し、「CS-1」のデモ機をデータPoC用に有償でサービス提供するなど、サービスビジネスも展開していく計画を明らかにした。
上善氏は、「当社では、今後3年間で国内のAI関連ハードウェア市場は1000億円規模に達すると見込んでおり、『CS-1』の販売で、その10%となる100億円を目指す」と、日本市場での販売拡大に意欲を見せた。