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UTMベンダーから包括的セキュリティプラットフォームベンダーへ――、ソニックウォールが変革をアピール

 ソニックウォール・ジャパン株式会社(以下、ソニックウォール)は7日、同社の新戦略について説明会を開催した。

 来日した米SonicWall プラットフォームアーキテクチャ担当 バイスプレジデントのドミトリー・アイラペトフ(Dmitriy Ayrapetov)氏は、これまでUTMを中心とした事業を展開していた同社が、包括的なセキュリティプラットフォームを提供する企業へと変革したことをアピールした。

米SonicWall プラットフォームアーキテクチャ担当 バイスプレジデントのドミトリー・アイラペトフ氏

 アイラペトフ氏は、まずサイバー攻撃のトレンドを解説。暗号化された攻撃や非標準ポートからの攻撃が増加傾向にあることや、マルウェアの変種が増え、2019年前期に同社のCapture ATMが発見したものだけでも19万4171件と前年同期比で45%も増加したこと、さらには、このところプロセッサの脆弱性を突いてデータを窃盗したり改ざんしたりするサイドチャネル攻撃が見受けられるようになったことなどを挙げた。

 こうしたトレンドに対し、アイラペトフ氏は「リアルタイムの侵害検知と防止は自動化されなければならない」と話す。そのため同社では、「機械学習という言葉がない時代から、同等の技術を駆使して自動化を実現していた」という。

 また、特許申請中の「Real-Time Deep Memory Inspection(RTDMI)」という技術を2018年1月より稼働させているとのことで、「危険なサイドチャネル攻撃を軽減している。脆弱性が告知された当日にRTDMIが検知を確認したケースもある」と、アイラペトフ氏は述べた。

RTDMIにより危険なサイドチャネル攻撃を軽減

 国内では、このRTDMIに加え、2002年に特許を取得した「Reassembly-Free Deep Packet Inspection(RFDPI)」という技術も推進する。ソニックウォール 代表取締役社長の本富顕弘氏は、RFDPIについて「検査パケットを再構築することなくスキャンするため、遅延を抑えることが可能。スキャンするファイルサイズは無制限だ」と説明する。

ソニックウォール 代表取締役社長 本富顕弘氏

 また本富氏は、国内で特に注力していく予定の製品を5つ紹介。機械学習とクラウド型サンドボックスを組み合わせてマルウェア分析を自動化する「Capture ATP」、ソニックウォール製品すべてのセキュリティ管理をクラウドダッシュボードにて実現する「Capture Security Center」、エンドポイントセキュリティ対策としてUSB制御機能やロールバック機能を備えた「Capture Client」、クラウドアプリケーションにてCASB(Cloud Access Security Broker)のような機能を提供する「Cloud App Security」、分散したWi-Fi機器を一元管理し、公共アクセスポイントへのセキュリティ対策が可能な「SonicWave」の販売を強化するとした。

 なおCapture Clientのロールバック機能とは、マルウェアに感染した場合、感染前の状態にまで戻すことが可能な機能で、「このような機能は業界初だ」と本富氏。Capture Clientは今月にも日本語化を予定しているという。また、Cloud App Securityについては、「CASBの導入は非常に高価だが、Cloud App Securityを利用すればCASB的な機能が安価に利用できる。中堅・中小企業にとっての価値は大きい」と語った。

国内戦略における優先事項

 本富氏によると、同氏がソニックウォールに参画した2018年第4四半期以降、四半期ごとの業績は順調に成長しているといい、今後はグローバルの戦略同様、「国内で90%を占めるUTMの売上比率を50%にまで下げ、ほかのソリューションを成長させる」という。また、これまで300万円を超える案件は全体の35%で、65%は300万円以下の案件だったが、「今後2~3年で300万円以上の案件の比率を65%にまで高めたい」としている。

成長を続ける日本市場

 そのために優先することとして、本富氏はまずチャネルの強化を挙げた。現在ソニックウォールのビジネスを支えるパートナーの中でも、特に貢献度の高いトップ30社とさらに連携を深めるほか、同社のパートナープログラムである「SecureFirst Partner Program」においてもハンズオントレーニングや認定試験の日本語化などを行う。また、特定の製品のみを扱うパートナーや、特定の業界に強いパートナーとの協業も視野に入れる。

日本市場ではチャネルを強化

 ほかにも、ソニックウォールのソリューションを、パッケージやサービスの一部として組み込んで提供するプロダクトパートナーとの取り組みも強化する。また、本富氏が「特にソニックウォールの強い領域」としている自治体や大学などを中心に、ミッドマーケットへのハイタッチセールスをより推進していくという。

 ソリューション面においては、「ソニックウォールをSecure SD-BranchおよびSecure SD-WAN分野のソリューションベンダーとして認識してもらうこと」、そして「包括的なセキュリティプラットフォームとして『Capture Cloud Platform』を推進すること」(本富氏)を優先事項として挙げている。これも、同社が提供しているのはUTMだけではないと周知させる取り組みの一環といえる。

 「ソニックウォールはUTMベンダーから進化し、セキュリティプラットフォームのベンダーとして、モバイルエンドポイントからIoT、さらにはクラウドまでもセキュリティ保護の対象として安全なプラットフォームを提供していく」と本富氏は述べた。

Secure SD-BranchおよびSecure SD-WAN分野のソリューションベンダーへ
包括的なセキュリティプラットフォームとなるCapture Cloud Platform