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レッドハット、国内で「Red Hat OpenStack Platform 15」を提供 「Red Hat OpenShift Service Mesh」も

 レッドハット株式会社は26日、OpenStackディストリビューションの最新版「Red Hat OpenStack Platform(RHOSP) 15」を日本で発表した。また、コンテナプラットフォームのRed Hat OpenShift用の、Istioをベースとしたサービスメッシュソフトウェア「Red Hat OpenShift Service Mesh」も日本で発表した。

最後のショートライフリリースとなるRHOSP 15

 RHOSP 15は米国で9月19日に発表したもので、日本では9月26日に提供開始。OpenStackの「Stein」バージョン(2019年4月にリリース)がベースとなる。また、Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 8上に構築され、RHEL 8ゲストもサポートされる。

 RHOSPでは現在、バージョンごとに、3年間のサポート+2年間の延長サポート購入可の「ロングライフリリース」と、1年間のサポートの「ショートライフリリース」に決められている。

 RHOSP 13がロングライフリリースで、RHOSP 14と今回のRHOSP 15がショートライフリリース。次のRHOSP 16以降はロングライフリリースとなるため、RHOSP 15が最後のショートライフリリースとなる。

 機能面では、AI/機械学習のためのNVIDIA GPU/vGPUサポートや、IPsec VPNにおける暗号処理のNICへのオフロード、ネットワーク性能の向上、IBM POWER9 LE PowerVM ハードウェアのサポート、ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)のサポートがアナウンスされている。

 RHOSP 15の価格は、2ソケット、1年間、9~17時サポートで62万9900円(税別)から。ゲストOSとしてRHELを無制限で利用できる。

 同日開催された記者説明会には、米Red HatのプリンシパルプロダクトマネージャーとしてRHOSPを担当するマリア・ブラッチョ氏が出席した。氏はRHOSPをハイブリッドクラウドにおけるオンプレミスの基盤として紹介。ユースケースとして、NFVや、開発用のクラウド環境、エッジコンピューティング、AI/機械学習/HPC、サービスプロバイダーを挙げた。

 その中でもブラッチョ氏が取り上げたのがエッジコンピューティングだ。ユースケースとしては、リモートオフィスや、通信事業者の5Gプラットフォーム、製造業IoTが挙げられた。なお、日本の事例としては、楽天モバイルがRHOSPによりNFVを構築していることが発表されている。

 ブラッチョ氏はエッジコンピューティングのさまざまな階層を示し、「RHOSPは、あらゆる場所に適用できるため、いい位置にいる」と語った。

米Red Hatのマリア・ブラッチョ氏(プリンシパルプロダクトマネージャー)
Red Hato OpenStack Platform(RHOSP)15を日本で9月26日に提供開始
RHOSPのライフサイクル
RHOSP 15の特徴

Istioなどサービスメッシュに必要な機能をまとめたRed Hat OpenShift Service Mesh

 「Red Hat OpenShift Service Mesh」は、米国で8月22日に発表され、9月11日にGA(正式リリース)となった。OpenShift 4上からOperator(Kubernetes上で動くソフトウェアごとの運用自動化ツール)を導入する「OpenShift 4 Operator Hub」からインストールできる。

 Red Hat OpenShift Service Meshは「サービスメッシュ」を実現するソフトウェアだ。サービスメッシュとは、複数の小さなサービスからアプリケーションを構成するマイクロサービスのアーキテクチャを採用したときに、サービス間の通信の管理やモニタリングなどを実現するもの。

 Red Hat OpenShift Service Meshは、サービスメッシュの管理ツールである「Istio」を中心に、複数のサービスにわたる動作を追跡する分散トレーシングの「Jaeger」、マイクロサービス構成のアプリケーションの挙動を可視化する「Kiali」といったオープンソースソフトウェア(OSS)をベースとしている。そこに、API管理のRed Hat 3scaleとの統合機能や、前述したOpenShift 4 Operator Hubからのインストールなどを加えている。

 ベースとなるOSSプロダクトと、Red Hat OpenShift Service Meshとの関係について、記者説明会に出席した米Red Hatのクラウドプラットフォーム製品担当バイスプレジデントのジョー・フェルナンデス氏は「KubernetesとOpenShiftの関係と同じようなことが言える。Kubernetesはカーネルのようなもので、実際に使うには管理やメトリックス、ストレージ、ロードバランサーなどの機能も必要になる。それと同じような関係だ」と語った。

Red Hat OpenShift Service Meshの概要
米Red Hatのジョー・フェルナンデス氏(クラウドプラットフォーム製品担当バイスプレジデント)

 フェルナンデス氏は、OpenShift自体についても説明した。現在、金融や保険、自動車、小売、輸送、旅行、医療などさまざまな分野で使われているという。

 事例としては、ハイブリッドクラウド基盤としてOpenStackとOpenShiftを採用したキャセイパシフィック航空や、自動車のオンラインサービスであるBMWコネクテッドドライブでOpenShiftを採用したBMWを紹介。さらにグローバルな銀行としては、DBS銀行やドイツ銀行、エミレーツNBDの事例なども紹介された。

各業界でのOpenShift採用
キャセイパシフィックのOpenShift事例
BMWのOpenShift事例
グローバルな銀行のOpenShift事例:DBS銀行、ドイツ銀行、エミレーツNBD

 今年発表された最新版OpenShift 4では、拡張性と管理性が拡張された。中でも、導入時のオペレーションの強化や、CoreOSによるイミュータブルインフラストラクチャ、Operatorの基盤をフェルナンデス氏は挙げた。

 さらに、10月に予定されているマイナーアップデート「OpenShift 4.2」での対応サービスプロバイダも紹介。フルスタック自動化ではAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azure、RHOSPに対応。既存インフラへのインストールではAWS、GCP、ベアメタル、VMware vSphereに対応する。

 Red Hatの買収を完了したIBMのソリューションとの関係についてもフェルナンデス氏は触れた。IBMの用途別統合ソリューション「IBM Cloud Paks」を、IBM Cloudやそのほかのパブリッククラウド、オンプレミスでシームレスに動かすようにするために、OpenShiftで助けているという。

 また、IBM CloudでのOpenShiftのマネージドサービス「Red Hat OpenShift on IBM Cloud」を8月に発表したこともフェルナンデス氏は紹介した。春に発表したMicrosoft Azureでの「Microsoft Azure Red Hat OpenShift」に続くもので、氏は「オープンハイブリッドクラウド戦略の一環」と説明した。

OpenShift 4の概要
OpenShift 4の特徴
OpenShift 4.2での対応サービスプロバイダ
IBM Cloud PaksとOpenShift