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IDC Japan、2018年の国内ERM市場調査を発表 企業規模が小さくなるほど成長率が高い結果に

 IDC Japan株式会社は22日、国内ERM(Enterprise Resource Management)市場に関して、2018年の市場規模、ベンダーシェアなどの調査結果を発表した。一般的にはERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれる基幹業務が該当するとのことで、同社ではERM市場を、財務、人事管理、給与計算、販売管理、購買管理など、8種類の機能市場で定義している。

 今回の調査によると、2018年の国内ERM市場全体のシェア首位はSAP、2位は富士通、3位はオービックとなった。現在のIT市場においては、2018年9月に経済産業省が発行した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」による、企業へのデジタルトランスフォーメーション(DX)変革の圧力が高まっているものの、2018年時点ではレポートの直接的な影響は見られず、2018年の国内ERM市場は前年比3.0%増、市場規模(売上額)は2140億9700万円になったとのこと。

 IDC Japanでは、2019年10月の消費税増税と、インバウンドで活況を呈する流通/小売業界の需要増に加えて、パブリッククラウド製品の成長率が前年比32.0%増と好調だったことなどが、市場の成長に影響したと分析している。

 従業員規模別に見ると、従業員1000人以上の大企業での成長率は前年比1.7%増、同100人~999人の中堅企業が同3.2%増、同100人未満の中小企業が同7.1%増となり、成長率は企業規模が小さくなるほど高くなった。同社は、パブリッククラウド製品による影響を最も受けたのは中小企業であり、新興ベンダーによる競合状況が激しくなっている点を指摘している。

 また従業員規模別でのシェア首位は、大企業がSAP、中堅企業がオービック、中小企業がオービックビジネスコンサルタント(OBC)となった。一方、前年比成長率が高かったベンダーは、大企業がオービック、中堅企業がオラクル、中小企業がオービックとなっている。

 なお現在の基幹業務システムは、ヒト、モノ、カネの企業の経営資源データの管理から、リアルタイム意思決定による経営を支えるための、データ活用で得られるインサイトを提供する総合デジタルツールへの価値の変わり目にあり、DXの実現シナリオの1つとして期待されているという。

 しかしIDC Japanの調査では、ユーザー企業のIT投資は、セキュリティ対策や機械学習/AIを優先する傾向があり、基幹業務システムへの投資優先度は低くなっているとのこと。こうしたことから、ユーザー企業のIT投資が最適配置されず、部門間で予算を取り合う「DXデッドロック」の状況を引き起こす可能性があると、IDC Japanでは指摘している。

国内ERM市場ベンダー別 売上額シェア実績、2018年(出典:IDC Japan)