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VMware幹部、クラウドにおける共通プラットフォームの重要性を強調

 ヴイエムウェア株式会社は11日、同社のクラウド戦略について記者説明会を開催した。米VMware グローバルフィールド&インダストリー担当 バイスプレジデント 兼 最高技術責任者 クリス・ウォルフ(Chris Wolf)氏は、同社がフォーカスしていることとして、「顧客がクラウドを最大限に拡張し、クラウドネイティブのアプリケーションを最大限活用してもらうことだ」と述べた。

米VMware グローバルフィールド&インダストリー担当 バイスプレジデント 兼 最高技術責任者 クリス・ウォルフ氏

 ウォルフ氏が特に重要視しているのが、クラウドのオペレーションに一貫性を持たせること。「アプリケーションがどこで実行されていても、インフラは同じように見えなくてはならない。そうすることで、インフラの管理が統一され、どのアプリケーションがどこで実行されていようと、統一したセキュリティポリシーが適用できる」とウォルフ氏。

 また、さまざまなクラウドアプリケーションを利用している企業でも、「すべてのアプリケーションをシングルサインオンで使えるようにするべきだ」と述べ、「VMwareにとって重要なのは、企業アプリケーションがiPhoneやAndroidデバイスといったコンシューマー向け製品と同様、簡単に使えるようにすること。これがVMwareの価値であり、戦略でもある」とした。

VMwareのクラウドポートフォリオ

 このような価値を実現するにあたり、「VMwareでは共通プラットフォームを提供している」とウォルフ氏。共通プラットフォームがあれば、新たなサービスを採用しても同じポリシーを適用させ、簡単に利用開始できるとウォルフ氏は主張する。また、他社とパートナーシップを組む際にも、新たなソフトウェアやハードウェアを導入する必要がなく、「すべての業界でイノベーションの民主化が実現し、イノベーションが加速する」と語る。

 またウォルフ氏は、VMwareが最近注目しているテクノロジーとして、クラウドをエッジに拡張する「Cloud-Enabled Edge Services」を挙げた。これは、クラウドサービスがクラウドデータセンター外で実行できるというテクノロジー。クラウドデータセンターからクラウドサービスを切り離すことで、ハイブリッドアプリケーションが構築でき、「機能によってKubernetesやAzure、Googleなどのサービスを使い分けることが可能だ。ひとつのサービスに制限されることなく、自社のニーズに合わせてサービスが選べるようになり、ベスト・オブ・ブリードが実現する」(ウォルフ氏)という。

Cloud-Enabled Edge Servicesについて

 「例えばAmazon Echoに天気を聞くと2秒で返答が返ってくるが、自動運転システムのように瞬時の判断が必要な場合、データが生成される場所とクラウドサービスは同じ場所にあるべきだ。そこでVMwareでは、VMwareが稼働しているところであればどこでもパートナーのクラウドサービスが実行できるようにしている。AWSのサービスもAWSのデータセンター外で一部実行できるほか、Amazon Relational Database Serviceも間もなくVMwareでサポートされるようになる。AzureやGoogleのサービスも数多くサポートするなど、さまざまなパートナーのサービスとの連携を図っている」(ウォルフ氏)。

 具体例としてウォルフ氏は、VMwareとMicrosoftが相互サポートするソリューション「Azure IoT Edge on VMware vSphere」を挙げる。同ソリューションを利用することで、「開発者は、VMwareハイパーバイザーのある場所であればどこでもAzure IoT Edgeサービスが実行でき、ネイティブなAzure体験ができる。また、運用担当者も、慣れ親しんだツールでセキュリティやパフォーマンス、可用性が管理できる」という。

Azure IoT Edge on VMware vSphereの利点

 このほかにもウォルフ氏は、VMwareがネットワークの仮想化によってネットワークにも一貫性を持たせていることを強調した。同社のネットワーク仮想化技術といえばVMware NSXだが、2017年に買収したVeloCloud Networksのソフトウェア定義型WAN(SD-WAN)もこの分野で重要な役割を果たしているという。

VMwareのSD-WANについて

 SD-WANにより、自動的にトラフィックのルーティングができるようになり、ネットワークを経由したアプリの性能が保証されるという。ウォルフ氏は、特にVMwareのSD-WANで特徴的なこととして、パケットベースでルーティングを判断していることを挙げる。

 「例えば、ビデオ会議で回線の状態が良くない場合、いったん接続を切ってからつなぎ直すことが多い。これは、ルーティングのプロトコルがセッションベースとなっており、トラフィックの流れがセッションごとに決まるためだ。しかしVeloCloudの技術は、回線の状況が悪くても再接続する必要はなく、自動的にルーティングをやり直してくれる」とウォルフ氏は説明する。

 すでにVeloCloudによるVMwareのSD-WANには、2000社以上のユーザーと2500社のサービスプロバイダが存在し、同技術を活用したアクティブサイトは8万以上にのぼる。ウォルフ氏は、SD-WANが「この10年で最もエキサイティングな技術だ」と述べており、この技術を今後も推進していく意欲を見せた。