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東京大学とIIJ、パブリックLTEとプライベートLTEの統合連携に関する実証実験を開始

 国立大学法人東京大学大学院情報学環中尾研究室と株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は5日、IIJがフルMVNOとして提供する公衆無線通信ネットワーク「パブリックLTE」と、通信事業者以外の企業等が自営する無線通信ネットワーク「プライベートLTE(sXGP)」の統合連携に関する実証実験を開始したと発表した。実証実験の期間は2020年3月末まで。

 プライベートLTEとは、自ら無線基地局やコアネットワーク設備を運用する自社専用の無線通信ネットワークのことで、プライベートLTEを活用することにより、たとえば、スタジアムやショッピングモールなど大規模な建物や施設の中で、一部のユーザーしかアクセスできない独自のネットワークを構築できる。

 一方で、1台のデバイス(1枚のSIM)で、パブリックLTEとプライベートLTEのエリアを行き来する場合に電波受信の自動切り替えができず、シームレスなハンドオーバー(無線網の切替)を確立できないといった課題がある。

 実証実験では、中尾研究室とIIJが検証環境を構築し、シームレスにパブリックLTEとプライベートLTEの通信経路を確保できるよう、動作検証やフィールド試験などを行う。両者は実証実験の結果をもとに、コストを抑えながら通信品質や信頼性を備えた新たな無線通信技術の創出を目指し、5Gのネットワークスライスに関わる今後の調査研究にも役立てていくとしている。

 IIJでは、フルMVNOのインフラを利用したパブリックLTEの環境を構築した上で、プライベートLTEとの連携に必要な運用技術やノウハウの取得を目指す。加えて、パブリックLTEとプライベートLTEを1枚のSIMで連携可能とするSIMの設計および製造を行い、中尾研究室に提供する。

 中尾研究室では、ソフトウェアベースのLTE基地局を用いて、パブリックLTEとプライベートLTEの柔軟な運用方式の検討と、さらに高度な運用技術の提案と実装・検証を進める。前者は、IIJのフルMVNOと東京大学内のプライベートLTEを1枚のSIMで認証する際の認証方式の設計・実装、テストベッド(実証環境)上での検証をIIJと協力して進める。後者は、アプリケーションやデバイスごとにネットワークスライスをコントロールする仕組みを実装し、標準化に向けた提案や、今後、ローカル5Gに向けた新たなサービスのユースケースの探究を進める。

 また、近い将来には、プライベートLTEの延長線にあるローカル5GとパブリックLTEの発展系となるキャリア5G(公衆網)との連携を見据え、今回のLTE網の柔軟な運用技術の知見を5G網へ展開するための検討も開始するとしている。

 実証実験については、6月12日~14日に幕張メッセで開催される「Interop Tokyo 2019」において、東京大学大学院情報学環中尾彰宏教授が講演を行う。