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日本ヒューレット・パッカード、「HPE Edgeline」ソリューションの新製品を発表

OTとITを完全統合したコンバージドエッジシステムを実現

 日本ヒューレット・パッカード株式会社は8日、OT(Operational Technology)とITの統合を実現する「HPE Edgeline」ソリューションの新製品を提供開始すると発表した。

 具体的には、IoT・エッジコンピューティング専用コンピュータ「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」、各種OTデバイスとの接続ソフトウェア「HPE Edgeline OT Link Platform Software」、エッジ専用システム管理ソリューション「HPE Edgeline Integrated System Manager(iSM)」、「HPE Edgeline Infrastructure Manager(EIM)」を新たに提供開始する。

 同日に行われた発表会では、IoT・エッジコンピューティング戦略における新ソリューションの位置づけや狙い、各製品の機能概要などについて説明した。

 同社は、エッジでリアルタイムに高度な処理を実現する新カテゴリの製品として、2016年に「HPE Edgeline Converged Edge System」をリリース。2018年に開催した「HPE Discover」では、エッジ領域に今後4年間で4400億円の投資を行うことを発表するなど、IoT・エッジコンピューティング戦略に力を注いでいる。

 今回新たな「HPE Edgeline」ソリューションを提供する背景について、日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 執行役員の五十嵐毅氏は、「現在、企業のデータの約8割がオンプレミスに存在しているとされている。また、今後作られるデータの約7割はエッジ側で発生すると予測されている。そうした中で、これからのIoT・エッジコンピューティングは、より魅力的な体験を創造してユーザーエクスペリエンスを再定義するとともに、よりスマートなOTの運用を推進していくことが求められる。今回、この実現をプラットフォーム側から支援するソリューションとして、3つの新製品をリリースする」としている。

日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 執行役員の五十嵐毅氏

 IoT・エッジコンピューティング専用コンピュータの新製品「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」は、従来製品の「HPE Edgeline EL1000」「同 EL4000」に比べて耐環境性能を高め、大幅なコンパクト化を図ったモデル。

 動作温度は-30℃から70℃、IP50(防塵)に対応し、ファンレスにより優れた耐衝撃・耐振動性能を実現している。CPUは、Intel Core i5/i7、Intel Atomプロセッサを選択可能で、最大32GBメモリ、3TB SSDをサポート。高さ8.6cm×奥行き19.1cm×幅23.2cmのコンパクトな筐体に、通常消費電力は30Wと、エッジの過酷な環境でも大量データを処理できる性能を備えている。

 また、OTデバイスとの通信を行うハードウェアインターフェイスとして「HPE Edgeline OT Link」認定モジュールを用意し、1GbE TSN、CAN Bus A/B/FD、RS232/422/485、1×8 GPIOをサポートする点も大きな特徴となっている。

「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」

 米Hewlett Packard Enterprise(HPE) エッジ・IoTシステム、コンバージドサーバー部門 バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのトム・ブラディシッヒ氏は、「私は、データセンター以外に存在する、あらゆる端末やシステムがエッジであると考えている。そして、当社が今までデータセンター向けに蓄積してきたテクノロジーをエッジへと展開するのが『HPE Edgeline Converged Edge System』となる。特に、今回の新製品『EL300』は、エンタープライズクラスのITと、制御システムやデータ取得システム、産業ネットワークなどのOTを物理的に統合した業界初のシステムであり、データセンターとクラウドのアプリケーションをエッジ側でも修正なしに実行できるようになる。これを機に、他社からも同様の製品が開発され、新たなカテゴリの市場が創造されることになるだろう」と、ITとOTを完全統合したコンバージドエッジシステムの第1号製品であると強調した。

米Hewlett Packard Enterprise エッジ・IoTシステム、コンバージドサーバー部門 バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのトム・ブラディシッヒ氏

 「HPE Edgeline OT Link Platform Software」は、エッジやクラウドのさまざまなOTデバイス、プロトコルをサポートするソフトウェア。「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」と組み合わせて利用することで、各種OTデバイスとの接続を、GUIを利用して容易に実装することが可能となる。

 標準サポートするプロトコルは、国内外主要メーカーのPLC(制御用機器)、産業用プロトコル(GE、OSIsoft、Modbus、OPC UA)、IT/クラウドサービス(AWS、Google、Microsoft Azure、PTC、SAP、SAS)など。また、顧客やISVが提供するDockerベースのアプリケーションのデプロイ管理機能を提供する。

「HPE Edgeline OT Link Platform Software」の機能概要

 日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッド製品統括本部 Edgelineカテゴリマネージャーの北本貴宏氏は、OTデバイスとのデータ連携を実現する仕組みについて、「『EL300』は、各種OTデバイスと接続するインターフェイスを備えているが、収集したデータの中身がわからないとデータ連携することはできない。そこで、『HPE Edgeline OT Link Platform Software』では、PLCや産業用ロボットから収集したデータを解析し、GUIによるコーディングレスでのエッジ処理を実現。必要なOTデータをクラウドに転送することで、エンタープライズITへのシームレスなデータ連携が可能になる」と説明した。

日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッド製品統括本部 Edgelineカテゴリマネージャーの北本貴宏氏

 エッジ専用システム管理ソリューションの「HPE Edgeline Integrated System Manager」(iSM)および「HPE Edgeline Infrastructure Manager」(EIM)は、エンタープライズクラスのシステム管理機能をエッジに拡大するソフトウェア。HPE製エッジコンピュータやその上のアプリケーションを一元的に管理でき、IoTの運用負荷を軽減することができる。リモートから、ハードウェアやBIOSレベルの各種コンフィグレーション、アップデートが可能で、最新のセキュリティ機能を備えている。

 また、同社は、新たな「HPE Edgeline」ソリューションのリリースにともない、今後、ITおよびOTのパートナー企業をさらに拡大していく方針。発表会では、「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」のベータテストに参加したキヤノンの取り組みついて、キヤノン イメージソリューション事業本部 FA事業推進部 ICB本部長室 事業アライアンス推進/IT戦略企画担当主席の荒井毅一氏が紹介した。

キヤノン イメージソリューション事業本部 FA事業推進部 ICB本部長室 事業アライアンス推進/IT戦略企画担当主席の荒井毅一氏

【お詫びと訂正】

  • 初出時、日本ヒューレット・パッカード 北本氏とキヤノン 荒井氏の写真が逆になっておりました。お詫びして訂正いたします。

 「当社は、スマート工場の分野において、日本システムウエアと日本ヒューレット・パッカードとの3社協業を進めている。その中で、当社の映像処理システム『CANON INDUSTRIAL IMAGING PLATFORM』製品である『Vision Edition』と『Monitoring Edition』に最適なプラットフォームとして『HPE Edgeline EL300 Converged Edge System』を採用した。今まで、アナログの情報をデジタルデータに変換するのは難しかったが、これにより、製造現場の稼働状況を自動収集し、画像による高度な分析が可能になる。今後も、『HPE Edgeline』ソリューションを活用し、OTに適用したイメージング製品を展開していく」との考えを述べた。

 今回発表した「HPE Edgeline」ソリューションの価格(税別)は、「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」が47万7000円から、「HPE Edgeline OT Link」認定モジュールが3万2000円から。「HPE Edgeline Integrated System Manager」(iSM)は、無償ソフトウェアライセンスが「HPE Edgeline EL300 Converged Edge System」にバンドルされる。有償機能ライセンスは8万3000円から。「HPE Edgeline Infrastructure Manager」(EIM)は、3月に無償提供および販売開始予定。「HPE Edgeline OT Link Platform Software」は、5月に販売開始する予定。