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三菱地所とSAP、東京・大手町にスタートアップ支援拠点を開設 世界で7番目のSAP.ioに

 2月1日、三菱地所は、東京・大手町ビルの6階に「Inspired.Lab」をオープンした。スタートアップ支援プログラム「FoundX」を通じて東京大学と連携するほか、SAPジャパンとも協業。SAPが全世界で展開するアクセラレーションプログラム「SAP.io」の7番目の拠点として、スタートアップ企業の支援を行っていく。

 Labがある大手町ビルは、外壁などビル全体のリノベーションを進めるとともに、フィンテック企業の拠点となる「FINOLAB」の開設、大企業の最先端技術開発拠点となるオフィスなど、イノベーションを実践するビルとしての機能を強化している。

 今回は、大学との協業や、SAPが持っているアクセラレーションプログラムを活用。デザインシンキングをベースとした実験と検証を繰り返すことで、早期にイノベーションを実現する拠点とすることを目指す。

 三菱地所では、オフィス街だった丸の内に商業施設を誘致することで街の雰囲気を変えることに成功しているが、大手町については「オフィスに入居する企業が持っている問題意識を打破していくために、オープンイノベーションを実践する街となっていくことを目指したい」(三菱地所 執行役員常務の湯浅哲生氏)と説明。スタートアップ企業支援で実績を持つSAPや、東京大学との連携でオフィスに新しい価値を生み出すことを狙う。

三菱地所 執行役員常務の湯浅哲生氏

 Inspired.Labがある大手町ビルは、2016年にフィンテック関連の企業の拠点となるFINOLABがオープン。さらに、KPMGジャパンがデジタル技術を活用するための拠点KPMGイグニッション東京、トヨタ自動車がAIを中心とした自動運転に関連する技術開発の拠点、Preferred Networksのオフィスなど、先端技術開発に関連するオフィスが増えている。

 今回、全世界でスタートアップ支援事業を展開するSAPと連携することで、「デザインシンキングで生まれたアイデアを製品化するために、工房を使ったプロトタイプの開発、実証実験を経て製品・サービスを開発していくプロセスを実践できる拠点として活用してもらう」(湯浅氏)計画だ。

製造機材が置かれている工房

 実証実験の例として、WHILLと三菱自動車が共同開発したパーソナルモビリティ自動運転システム、パナソニックとLiquidが共同開発した無人販売ショーケースが公開された。自動運転システムは、今後はエレベーターを利用する際の手順などを実証実験しながら製品化に向けた開発を行っていく計画だ。

WHILL、三菱電機が開発したパーソナルモビリティ自動運転システムの実証実験
パナソニックとLiquidが開発した無人販売ショーケース。

 今回、三菱地所と連携することになったSAPは、ワールドワイドでスタートアップ支援プログラム「SAP.io」を展開している。今回は世界で7番目、日本では初めての施設となる。

 SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏は、「過去15年、イノベーション創出に取り組んできた経験から、日本国内でイノベーションを起こすために3つの課題があると考えている。1つ目が同質の人から抜け出して異邦人と交わるPeople。2つ目は共通言語、フレームワークを作るProcess。3つ目が創造性を高める環境となる出島を作るPlace。今回は出島としての機能を持つPlaceとなる例となる」と説明する。

SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏

 昨年3月から、日本でBusiness Innovators Networkとして変革を志向する大企業、スタートアップ、ベンチャーキャピタルやアクセラレーター、アカデミーとの連携を行ってきた。

 全世界で展開しているSAP.ioでは、SAPの法人顧客の事業やデータをスケールさせる、アーリーステージのB2Bテクノロジースタートアップへの投資を行うSAP.io Fund、AI、機械学習、ブロックチェーン、IoT、VRなどの先端技術を用いたB2Bスタートアップへのアクセラレーション事業SAP.io Foundryなどの機能がある。

 このLabで実践するのはSAP.io Foundryで、メンターによる事業戦略の構築支援、メンターによる共同営業の推進、SAPテクノロジーの開発環境へのアクセスが可能となるSAPテクノロジーアクセスを提供する。

 「本日から4月1日までの期間、参加企業を募集する。1月31日に開催したローンチセッションには50社の企業に参加いただいた。10社程度をノミネートし、日本発で世界に出て行く会社が誕生することを期待している」(内田氏)

 なお、Labの利用料金は大企業、スタートアップ企業など企業個々に設定するため非公表としているが、三菱地所としては、「通常のオフィスと遜色(そんしょく)ないレベルの収益獲得を目指していく」(湯浅氏)とのことだ。

打ち合わせスペース、プレゼンテーションスペースをはじめ、オフィスとして利用できるスペースも提供されている
ラウンジスペース