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変体仮名も扱える「一太郎2019」発売、“たしかな日本語文書”追及、上位版には「にじみ明朝」も収録

 株式会社ジャストシステムは、日本語ワープロソフトの新バージョン「一太郎2019」を2019年2月8日に発売すると発表した。“平成の集大成”として発表する製品だとし、“たしかな日本語文書”の作成を支援することが、新バージョン開発の大きなテーマだったという。具体的には、日本語文書の作成で「ミスをなくし洗練する」ことをはじめ、「日本語の文字へのこだわり」「レイアウトのたしかさ」「公開文書も安心」「新元号への対応」といった項目を挙げている。また、日本語入力ソフトの新バージョンとして、字についての説明を入力することで該当の漢字に変換できる新機能や、地名の“見たまま入力OK”な新機能を搭載した「ATOK for Windows 一太郎2019 Limited」もバンドルする。

「略称チェック」「脚注参照」などの新機能、一方で誤字脱字の“過剰な指摘”を抑制

 「ミスをなくし洗練する」ために行ったのは「文書校正」機能の大幅強化だ。

 まず、「略称チェック」機能が新たに追加されている。例えば「サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)」のように略称を定義したあとに、一度も略称が使われていない場合や、略称ではなく正式名称が使われている個所、同じ定義を繰り返している個所など、整合性をチェックしてくれる。

 一方で、誤字・脱字の“過剰な指摘”を抑制。新名称や時事用語の解析機能を強化したことで、例えば、前バージョンの「一太郎2018」においては「叡王戦」「ポゼッション」「リファラル」といった言葉や「サ高住」の「サ」が指摘されていたのに対して、新バージョンではこれらの指摘が抑制されているという。

 表記ゆれのチェック機能は、検出精度をアップするとともに、検出範囲を拡大。複数のシートにまたいだ表記ゆれの検出が可能になった。

 また、「脚注参照」も新たに搭載。同じ文献や引用を繰り返す場合の「前掲注」などの個所の脚注番号について、参照元の番号が変わっても連動するようになっており、修正の手間がなくなるとしている。

 このほか、2017年3月に新学習指導要領で示された「学年別漢字配当表」「音訓の小・中・高等学校段階別割り振り表」に対応。これに基づき、文書校正の「漢字基準」で設定した学年ではまだ学習していない漢字・読みが指摘される。

変体仮名を“文字として”扱うことが可能に、縦書きフォントの拡充も

 「日本語の文字へのこだわり」として挙げるのは、約6万字を扱えるようになり、人名・地名も網羅するとしていることだ。これは、文字コードの国際規格化が2017年12月に完了したISO/IEC 10646第5版に準拠した「IPAmj明朝フォント」の最新バージョン(Ver.005.01)を収録したことによるもの。あわせて、変体仮名も文字として扱えるようになり、「一太郎2019」では、ツールパレットの「準仮名」から選択することで文書に入力できる。

 一太郎における変体仮名への対応自体は4年前のバージョン「一太郎2015」ですでに行われていたが、そのときはグラフィックソフト「花子」の機能を活用したものであり、図形として変体仮名を扱う方式だったという。

 「一太郎2019」では文字として変体仮名を扱えるようになったわけだが、対応している文字は256文字のみ(IPAmj明朝フォントを使用する場合)。濁音・半濁音には対応していないため、現代でも店舗の看板などで変体仮名をよく見かける「そば」「てんぷら」といった単語は残念ながら再現できないという。

 また、縦書きの日本語文書を際立たせるフォントとして「AR隷書体M」「AR宋朝体M」「AR教科書体M」「ARゴシック対M」「AR明朝体L」の5書体を追加した。

 フォントとしてはこのほか、上位版パッケージの「一太郎2019 プレミアム」において、大日本印刷株式会社の「秀英体」から8書体を収録。本文用書体として多くの書籍で使われているという「秀英明朝」、フラッグシップ書体として秀英体の魅力を凝縮したという「秀英初号明朝」、活版印刷の“にじみ”や“かすれ”を再現した「秀英にじみ明朝」などがバンドルされる。搭載書体は「JIS X 0213:2004」と、異体字を文字コードのみで表現できる規格「IVS」に対応する。

“新元号”対応はアップデートモジュールで、文書校正機能にも反映

 「レイアウトのたしかさ」を高めるための機能としては、「行取り」「見開き表示」を新たに搭載した。

 行取りは、本文の整数行分のスペースを取り、その中央に文字をレイアウトできる機能だ。本文よりも大きな文字で見出しを入れる場合でも、本文の位置がそろい、段組みの場合も行がずれることがない。

 見開き表示は、冊子を作成する際に、本を開いた状態での見え方を確認できる機能だ。文章の切れ目や、ノドと小口など余白のバランス、見いだした画像のレイアウトなどを確認しながら執筆・編集できるとしている。

 このほか、新機能の「ドキュメント検査」により、文書に個人情報や隠しプロパティが含まれていないかを簡単にチェックできるようにした。外部に公開したり、メールなどで他者に渡す文書を事前にチェックすることで、「公開文書も安心」だとしている。

 2019年5月1日の改元にともなう「新元号への対応」については、後日提供するアップデートモジュールで実施する。文書校正機能においても反映され、和暦と西暦での対応の誤り、書式が設定と異なる個所、和暦の元年表記の統一性をチェックできる機能について、新元号もチェック対象となる。

「まいかた」「たかすぎしんさくのしん」→「枚方」「晋」に変換できるATOK最新版

 「一太郎2019」にバンドルされる日本語入力システムの最新バージョン「ATOK for Windows 一太郎2019 Limited」では、表記バリエーションが多い固有名詞について、「文字の選択に時間がかる」「読みがあいまい」といった問題を解消し、変換する漢字を素早く選択できる2つの新機能を搭載した。

 例えば、「晋二郎」という人名を入力したい場合、従来のATOKでも変換候補には提示されるものの、上から93番目であり、文字の選択に時間がかかっていたという。これに対して新バージョンでは、「漢字絞り込み変換」という新機能を搭載した。

 具体的には、「晋」と「二郎」を分けて変換することを想定したとき、「晋」の字を簡単に選択できるようにするもので、この例では「たかすぎしんさくのしん」と入力することで「晋《高杉晋作の晋》」が提示される。

 いわば、字についての“説明”を入力すると、該当の漢字に変換できるという機能だ。同様に「なつめそうせきのそう」で「漱」に変換するなど固有名詞を使ったパターンのほか、「こうくうきのこう」で「航」、「きゅうじたいのこい」で「戀」、「にんべんのけい」で「佳」といった説明パターンにも対応する。

 もう1つは「地名入力支援」という新機能。読みがあいまいな地名でも“見たまま入力OK”となるものだ。

 例えば、「まいかた」から「枚方」、「くにふつ」から「国府津」、「みのめん」から「箕面」といった具合に変換されるものだ。なお、《読みは「ひらかた」》《読みは「こうづ」》《読みは「みのお」》といった正しい読みも、あわせて表示される。

 ATOKでは以前より、一部の固有名詞については、誤りがちな入力からも正確な表記で変換するようにして入力効率化を図っていたという。例えば、「焼津(やいづ)」について「やいず」でも変換するといった具合だ。今回新たに搭載した地名入力支援では、その入力効率重視の考えを、より広い範囲の地名にも適用したものだとしている。

 「一太郎2019」は、対応OSがWindows 10/8.1/7(SP1以上)。希望小売価格(税別、以下同)は2万円。

 このほか上位版として、前述の秀英体フォントをはじめ、グラフィックソフト「花子2019」、PDF作成・編集ソフト「JUST PDF 4」、音声読み上げソフト「詠太9」、ATOK連携電子辞典「日本語シソーラス 第2版 類語検索辞典 for ATOK」などをバンドルした「一太郎2019 プレミアム」(2万5000円)、さらに表計算ソフト「JUST Calc 4」やプレゼンテーションソフト「JUST Focus 4」、画像データベース「Britannica ImageQuest」なども使える「一太郎2019 スーパープレミアム」(3万8000円)もラインアップする。

画像データベース「Britannica ImageQuest」では、世界有数の美術館などから許諾を得た300万点以上の写真やイラストを提供。最上位版パッケージ「一太郎2019 スーパープレミアム」のユーザーは、登録開始から1年間、この画像データベースを利用できる(商用利用は不可)

 なお、「ATOK for Windows 一太郎2019 Limited」と同等の機能を持った日本語入力ソフト単体製品「ATOK for Windows」の最新バージョンは、サブスクリプション制サービス「ATOK Passport」において、2019年2月1日より提供される。