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NII、大学や研究機関のクラウド計算環境を容易に構築できる「学認クラウドオンデマンド構築サービス」の本運用を開始

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)は1日、大学や研究機関の教職員・研究者が、研究や教育活動で利用するクラウド計算環境を容易に構築できる「学認クラウドオンデマンド構築サービス」の本運用を開始した。

 NIIでは、大学や研究機関向けのクラウド導入・活用支援サービス「学認クラウド」を提供しており、これまでに、大学や研究機関がクラウドを導入するための情報提供やコンサルティングを行う「学認クラウド導入支援サービス」、教育・研究でクラウドを利活用するためのツール「学認クラウドゲートウェイサービス」を提供してきた。

 新たに開始した「学認クラウドオンデマンド構築サービス」では、大学の認証基盤を学内サービスだけでなく連携する他大学や商用サービスにも活用するための仕組みの「学術認証フェデレーション」による利用権限管理を用いることが可能。あらかじめ用意されたテンプレートを指定して実行するだけで、大学・研究機関が契約しているSINETと連携したクラウドに計算資源を確保し、その上で動作するアプリケーション環境のインストールや設定までを自動的に行えるとともに、SINETに接続した複数のクラウドを連携したインタークラウド環境に対する教育・研究環境の構築もできる。

 大学や研究機関では、「SINETクラウド接続サービス」により、各機関と各種クラウドサービスを仮想プライベートネットワーク(L2VPN)で安全に接続して、クラウドの計算資源を利用できるようになった。一方、クラウドを利用して教育・研究環境を構築するには、ネットワーク構築の煩雑さや、複数クラウドの計算資源の利用や切り替えの煩雑さ、アプリケーション環境設定、環境再構築の煩雑さといった課題があった。

 学認クラウドオンデマンド構築サービスは、こうした課題を解決するために開発されたサービスで、「初期導入支援」「オンデマンド構築機能」「情報共有・問い合わせ」から構成される。

 初期導入支援では、利用機関の計算資源とクラウドの計算資源をSINETクラウド接続で安全に連携させて使用するための設定作業を、NII担当者が後方支援する。

 オンデマンド構築機能では、クラウドごとに異なる利用方法を統一し、複数のクラウドが利用可能なソフトウェア(仮想クラウドコントローラー)を提供する。入力パラメーターを変更するだけで、異なるクラウドの計算資源をオンデマンドで起動、停止が可能。利用者はアプリケーション環境の構築手順をテンプレートとして記述でき、計算資源の起動からアプリケーションの配備までを自動的に行える。

 配備するアプリケーションの実行環境は、コンテナ技術を利用してパッケージ化する。この構築手順のテンプレート化と、アプリケーションのパッケージ化により、再現性の高い環境の構築を可能とし、テンプレート化されていないアプリケーションに対しては、利用者が独自のテンプレートを作成するための開発キットを提供する。

 情報共有・問い合わせでは、サービスを利用するための有用な情報の共有と各種問い合わせに対応。このうち情報共有では、基本的な計算環境といくつかの教育・研究目的やSINETを利用したアプリケーション環境のテンプレートを公開する。当初は、1)ゲノム解析環境、2)eラーニングシステム、3)仮想デスクトップを利用した講義演習環境、4)HPC(高性能計算)クラスタ環境――の4つのテンプレートを、各アプリケーションコミュニティと協力して開発・提供する。

 サービスは、短期大学を含む大学や高等専門学校、国公立試験研究機関、研究または研究支援を目的とする独立行政法人や特殊法人、学会、学術研究を目的とする公益財団・社団法人及び一般財団・社団法人、並びに大学に相当する教育施設などが無料で利用できる。なお、クラウドの利用料は利用機関の負担となる。また、利用にあたっては、学認に参加していることが必要。

 NIIでは、こうしたサービスの開発・提供を通じて、大学・研究機関におけるクラウドの導入から活用まで、すべてのステージに対する支援活動に継続して取り組んでいくとしている。