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国内企業のデジタルトランスフォーメーションは企業戦略と連携して実施する傾向~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は28日、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みに関する調査結果を発表した。調査によると、DXに取り組む国内企業は、企業戦略との連携を進め、データの収益化を目指す姿勢が強いとしている。

 調査は、2018年5~6月に、DXに取り組む企業に勤務する世界27カ国のビジネスリーダーに対して行ったもので、サンプルサイズは国内が150、国内を含めた世界が1987。調査内容は、DXの進捗状況、推進組織/体制/課題、KPI設定など。

 DXと企業戦略との連携について聞いた質問では、国内企業の98.7%が何らかの形で両者の連携を保っていると回答。連携の仕方については、部分的/短期的な連携にとどまっているとする回答比率が、全体的/長期的な連携を保っているとした回答を上回った。一方、他社に比べてDXの取り組みが進んでいると考えている企業では、DXと企業戦略がより全体的/長期的な形で結び付いている傾向が見られ、DXの先進企業ではDXとビジネスが一体化していることが分かるとしている。

 また、国内企業がDXを進める際に優先事項としていることを聞いた質問に対しては、「データの資本化/収益化」が52.7%と最も高い回答割合となった。IDC Japanでは、ビッグデータやAI(人工知能)といったデータ活用のための技術が大きな進歩を見せていることや、それに伴って企業間でデータを中心とした提携の動きが広がっていることなどを背景に、「DXとはデータを活用したビジネスを行うこと」という認識が広まりつつあると分析している。

 一方、これらの結果は、世界の調査結果とは若干異なる傾向が見られると説明。たとえば前述の「DXを進める際の優先事項」についての回答比率では、世界の企業は、業務の卓越性や顧客体験への回答も、データの資本化/収益化と同等かそれを上回る結果となり、DX実施の目的の多様化がうかがえると指摘する。

 また、DXのKPIの利用方法を聞いた質問では、国内企業が主に従業員の動機付けや社内外への公開といったハイレベルなものにとどまっている一方、世界の企業では四半期ごとや月ごとの業績レビューに使うといった回答が多く、DXを日々の業務と連動させる傾向が強いとしている。

 国内企業のDXへの取り組みは進んでいると考えられるものの、世界の企業の動向と比べると取り組みの優先事項が特定の領域に偏る、DXと企業戦略とは連携しているものの実際のオペレーションとの関連性が弱い(DXと日常業務とが連携していない)といった傾向も見られると説明。これらのことは、DXが一時的な流行で終わってしまい、真に国内企業の変革に結びつかない結果を招く可能性もはらんでいると指摘する。

 IDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤幸治氏は、「『課題先進国』といわれる日本の企業はDXを真剣にとらえ、その成否が今後の企業の成長だけでなく生き残りすらを大きく左右するものと考えなくてはならない。そのためには、企業戦略、事業戦略/戦術、日々の業務など企業のあらゆる活動の中にDXが埋め込まれているような体制を構築していくべきである」と述べている。

国内および世界企業における「DXの優先事項」(出典:IDC Japan)