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NTT東日本埼玉支店など3社、清酒製造工程における技術伝承に関するIoTを活用した実証実験を実施

 東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)埼玉支店と、埼玉県熊谷市の権田酒造株式会社、埼玉県さいたま市の株式会社渡辺製作所は26日、清酒製造工程にセンサーを導入し、データを自動的に取得・遠隔確認を可能にするとともに、蓄積・解析により、技能の伝承を図る実証実験を実施すると発表した。実施にあたり、権田酒造は埼玉県産業振興公社からIoT補助金の交付を受け、環境を構築する。

 実証実験の背景と目的については、自然環境を考慮しながら作業をすすめる清酒製造工程では、熟練技術者の勘や経験に頼る部分が大きく、また、技術者の減少に伴い、酒造りの技能やノウハウの伝承が喫緊の課題となっていると説明。IoTの技術を活用した実証実験により、品質の安定化・生産性の向上に加え、データの収集・分析による熟練技術者のノウハウの見える化に向けた効果検証を行う。

 実証実験では、清酒製造における仕込み工程において、仕込蔵とタンク内部の3カ所に温度センサーを設置し、醪(もろみ)の温度や室温を24時間自動的に計測するとともに、ネットワークに接続し、異常を検知した際にはインターネット経由でアラーム通知を受け、自宅や外出先などから遠隔で状況を確認することで、計測作業の効率化と品質の安定化を図る。

 同時に、手動で計測したアルコール度数や糖度、および作業記録を計測されたデータにひも付け、継続的にクラウドに蓄積することで、熟練者の手法や、高品質の製品が出来たケースを分析、温度管理モデルを作成し、以降の清酒製造に活用する。実証実験時期は2018年10月上旬~2019年3月下旬(予定)。

 権田酒造は、温度測定、遠隔確認システムを用いた清酒製造を実施。清酒製造工程において、センサーにより収集した酒造タンク内の醪の温度データと、対応した作業記録を蓄積し、振り返り・分析、および、外部機関とのデータ共有や情報交換により、モデルパターンを作成し、若年技術者への技能の伝承を図るとともに、遠隔確認による、温度管理の作業効率化を実現する。

 渡辺製作所は、ファイバーセンシングによるリアルタイムでの数値収集システムの開発・測定・運用の技術を支援。従来の電気センサーと異なり、清酒の品質に影響を与えない光ファイバー技術を用いた温度センシングを実現するとともに、温度変化を時系列で把握しやすく、作業記録とひも付ける管理ソフトウェアを開発し、作業者の負担を少なくし、継続的なデータ蓄積が可能なシステムを提供する。

 NTT東日本埼玉支店は、測定データのクラウドへの蓄積、および遠隔からの確認を可能とするネットワークサービスを提供。仕込み蔵内の光温度センサー機器で収集した温度データを、光アクセスサービス、「ギガらく Wi-Fi」およびリモートアクセスサービスにより、インターネット経由で自宅や外出先からリアルタイムでの状況確認を可能とし、「フレッツ・あずけ~る Pro」により、クラウドへのデータ蓄積を可能とする。

 3社では今後、環境構築や実施体制の整備をすすめ、下期から権田酒造での清酒製造工程でのトライアル実施に向け、準備を進めるとともに、関係団体や研究組織などとの情報交換により、同様の課題を抱える可能性がある清酒製造事業者への展開や、さらなるデータの活用方法について検討を進めていくとしている。