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DNPとJTB、総務省の「情報信託機能の社会実装に向けた調査研究」に参加

観光分野はパーソナルデータ利活用の許容度が高く、安全の確保・利便性の提示が重要

 大日本印刷株式会社(以下、DNP)と株式会社JTBは21日、総務省の「情報信託機能の社会実装に向けた調査研究」に参加し、2017年12月~2018年2月に「京都まちぐるみコンシェルジュサービス実証」を実施したと発表した。

 実証は、モニター(情報提供者)が自らの意思で自分のデータを管理する「パーソナルデータストア(PDS)」と、情報提供者の指示や事前に指定した条件に基づいて、本人に代わって妥当性を判断して第三者にデータを提供する「情報信託機能」に関して、観光分野での調査を行ったもの。

調査の概要

 モニターは情報信託機能アプリでデータを集約し、サービス事業者にデータを提供。自分に合ったレコメンドやオファーを受けながら旅行のプランを立て、オファーサービスの利用やレコメンド情報を参考に京都観光を行うという流れになる。

 情報提供者へのアンケートおよび有識者やサービス事業者へのヒアリングを実施し、個人情報の預託に関する受容性や課題、情報信託機能への満足度評価、サービスの使いやすさ、提供された個人情報を利用する事業者間の取引上の課題などについて検証した。

 調査の結果、観光分野ではパーソナルデータの利活用の許容度が日常生活時よりも高いことが判明したと説明。例えば、自分の現状や過去の行動に合った“おすすめ観光情報”を受け取るためにパーソナルデータを提供する許容度は、日常生活時と比べ43.9%も高かったという。

パーソナルデータを提供することの許容度

 また、パーソナルデータを預託し、サービスを利用した人の今後の利用意向は81.8%と高く、観光は高度なパーソナルデータの流通・利活用に適した分野と考えられると分析。一方、旅行関連情報を提供するサービス事業者は、最適な情報を提供するため、旅行中の人々からのリアルタイムなパーソナルデータを求めており、今後はサービス事業者間でのパーソナルデータの連動や循環も必要になると想定できるとしている。

 PDS/情報信託機能に対する期待と安全・安心の担保についてについては、PDSを利用したい情報提供者の80%が、情報信託機能の利用を求めていた。社会実装に向けては、第三者に提供したパーソナルデータが意図しない形で流通しないよう管理する機能や、流通したパーソナルデータを追跡できるトレーサビリティ機能について、80%以上の情報提供者が重要だと考えていると回答。サービス事業者および関係者は、パーソナルデータの提供にともなう損害やコスト負担、クレームなどの受付窓口など、各種データやサービス連携時の責任分担などを明確化する必要があり、さまざまな観点からの検討が問われるとしている。

 パーソナルデータの流通を促す具体的な利便性については、ポイント付与など具体的な利便性の提示によって、人々の情報信託機能の利用意向が高くなることも判明。例えば、匿名化された個人情報を企業が統計分析に利用する見返りにポイントが付与されるサービスでは、利便性を提示しない場合と比べて47.5%高い、84.1%の人が利用したいと回答した。

 また、情報セキュリティやプライバシーの確保に関する説明に加えて、サービスプラットフォームとしての具体的なメリットを訴求することが重要だとして、サービス事業者にとっても、データ利活用のイメージや自社メリットの理解を高めていくことが重要となっていくと分析している。

 DNPとJTBでは今後、観光分野における情報信託機能の利活用を推進し、地域の観光関連のステークホルダーと連携しながら、人口減少時代の新しい旅行体験の創造と観光地の課題解決を目指していくと説明。また、DNPでは、情報信託機能を医療や子育てなどの分野に展開していくとともに、情報信託に関する制度設計などにも積極的に関与し、社会と生活者の安全・安心な情報流通環境を提供するとしている。