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VMware、新たなネットワークビジョン「Virtual Cloud Network」を解説
2018年5月18日 11:50
米VMware クラウド&ネットワーキング担当最高技術責任者(CTO)のグイド・アッペンツェラー氏は17日、都内で会見し、VMwareのネットワークに関する新たなビジョンである「Virtual Cloud Network」について説明した。
VMwareは先ごろ、米ラスベガスで開催した「Dell Technology World 2018」で、Virtual Cloud Networkのビジョンを発表しており、今回の会見は、その内容を補足するものになった。
アッペンツェラー氏は、「Any Device、Any Application、Any CloudというVMwareのビジョンは基本的には変わらないが、ネットワークについては一部変更がある」とし、「アプリケーションとデータが存在するすべての場所で実行できる、次の20年に向けた新たなネットワークアプローチを提供することになる。それがVirtual Cloud Networkであり、その基盤になるのがVMware NSXだ」と位置づけた。
今回の会見で、アッペンツェラー氏は、「従来は、すべてのデータがデータセンターに置かれていた。ファイアウォールが囲まれた中にあり、セキュリティは、その環境にだけ対応していればよかった。だが、いまではデータやアプリケーションが、パブリッククラウドに置かれるなど、さまざまな場所にある。一方で、データは、石油と同じように世の中を動かしていくものになり、ますます重要性が増している」と前置き。
「データが特定の場所に置かれていた状況では、ネットワークは特定のデータセンターや、特定のアプリケーションのために用意すればよかった。だが、データやアプリケーションがさまざまなところに置かれるようになったことで、ネットワークもさまざまなところにつながる必要が出てきた。まさに、ネットワークが、ソフトウェアやサービスと同じような使われ方をすることになる」と話す。
また、今後20年に向けた新たなネットワークアプローチとして、「柔軟でフログラムが可能なネットワークファブリックを設計し、データとアプリケーションが存在するすべての場所とつながらなくてはならない。データセンターから支社、クラウドまでエンドトゥエンドでの一貫性を確保し、最初からセキュリティを埋め込んだ、透過性の高い組み込み済みのセキュリティを提供し、さらに、サービスのようにして提供できるソフトウェアによるネットワークを実現しなくてはならない」と主張。それを実現するのがVirtual Cloud Networkになるとした。
VMwareでは、こうしたビジョンを実現するためにNSXのポートフォリオを拡張。特に、買収したVeloCloudによるNSX SD-WANが重要な役割を果たすことになるとする。
「従来のネットワーク環境は、MPLSのような高額な専用線を敷いているため、設備投資コストや運用コストが高かった。さらに複雑なコンフィグレーションが必要であり、管理も煩雑になるといった課題があった。だが、SD-WANを活用することにより、ブロードバンドやLTEといって低コストの複数の通信手段を活用できるようになり、設定も管理も簡素化できる。小売店であれば、ネットワークの専門知識を持たない店長でも設置を行える。データセンターから支社、クラウドへのアクセスの最適化や、アプリケーションのパフォーマンス確保も可能になる」とアピールした。
VMware NSX SD-WAN by VeloCloudにより、すべてのデバイスとユーザーのエンドポイントの完全な可視性を実現するほか、コントロール、自動化を実現。これまでよりも低コストで、クラウドとアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができる。
また、VMware NSX Data CenterやVMware NSX Cloudと連携させることで、顧客は一貫したネットワークとセキュリティのポリシーをデータセンターから支店、クラウドにまで拡張できるとともに、運用の可視化とエンドトゥエンドのコントロールを提供できるという。
SD-WANは、すでに2000社以上で導入しており、今後は、VMware NSX SD-WAN by VeloCloudの名称で展開。「VeloCloudは優れたブランドであり、当面、このブランドを使うことになる」とした。
現在、開発チームはパロアルトに移転したが、依然として独立した組織のなかで開発を行っているという。
VMwareや全世界60社を超える通信事業者がサービスとして提供するほか、オンプレミスのソリューションとしても提供することができるという。
ただし国内では、少し事情が異なる。
ヴイエムウェア株式会社の進藤資訓CTOは、「回線の品質が悪くコストが高い米国では、SD-WANの導入により、導入や運用に伴うトータルコストが10分の1になるといった例もある」とするが、「日本では高品質のネットワーク環境が低コストで提供されているため、そこまでのコストメリットは生み出せない」とも指摘する。
ヴイエムウェア ストラテジックアライアンス本部の名倉丈雄本部長も、「日本においては、WAN接続という切り口よりも、セキュリティの確保、管理の一元化といった点で、SD-WANのメリットが発揮されることになるだろう」とみている。
NSXのポートフォリオは、VMware NSX SD-WAN by VeloCloudに加えて、ネットワークの仮想化プラットフォームの「VMware NSX Data Center」、マルチクラウドネットワークの「VMware NSX Cloud」、ハイブリッドクラウド環境において一貫したネットワークを実現する「VMware NSX Hybrid Connect」が用意される。
VMware NSX Data Centerは、ネットワークの仮想化とセキュリティを実現。すでに4500社以上が導入しているという。コンテナ化したクラウドネイティブアプリケーションと、ベアメタルアプリケーションをサポートし、分散ワークロード向けの通信事業者/NFVと、ネットワークパフォーマンスの最適化を実現するという。
ポリシーベースで稼働する次世代型データセンターを、設計、構築、運用できるほか、従来のアプリケーションや最新のアプリケーションの接続、保護、自動化を可能にする。またインフラに組み込まれたセキュリティにより、アプリケーションやデータを保護できるという。
「NSX Data Centerでは、Kubernetes、Pivotal Container Service、OPENSHIFTに対応し、どんなコンテナでも使うことができる。パワフルでセキュリティの高いアプリケーションを実現できる。また、あらゆるワークロードに対応するネットワークとセキュリティを実現する」などとした。
またVMware NSX Cloudは、VMwareベースのプライベートクラウドのデータセンターで稼働するアプリケーションや、ネイティブなパブリッククラウド上のアプリケーション向けに、一貫したネットワークとセキュリティを提供するもの。複数のパブリッククラウドを利用することにより発生する固有の運用課題にも対応し、セキュアなエンタープライズクラウドを実現するという。
「これまではAWSに対応していたが、今年から新たにMicrosoft Azureもサポートし、オンプレミスとクラウドを一貫したポリシーで管理できる」と語った。
そしてVMware NSX Hybrid Connectでは、データセンターからクラウドに至るワークロードの可搬性とマイグレーションを実現。複数クラウド間のネットワークの接続性とトラフィックの最適化を図ることができるという。
ユーザーは同一のガバナンスやコントロールを維持しながら複数のデータセンターやクラウドを相互接続して、一貫性の実現や優れたパフォーマンスの達成、安全性を備えたソフトウェアファブリックを構築できる。また、あらゆるVMware環境から、オンプレミス、パブリッククラウド、VMware Cloud Providerパートナーが運用するクラウドなど、最新のSDDC環境へと移行できる。
「これまではvSphereのバージョンが異なるとマイグレーションできないといったことがあったが、VMware NSX Hybrid Connectではそれを吸収できる」という。
アッペンツェラー氏は、「Virtual Cloud Networkによって、顧客はアプリケーションやデータの所在地を問わず、エンドトゥエンドのソフトウェアベースのネットワークアーキテクチャを構築できる。あらゆるインフラ、あらゆるクラウド、あらゆる通信手段、あらゆるアプリケーション、あらゆるプラットフォームで運用できるネットワーク環境を実現することになる」と語った。