ニュース

日本オラクル、AIを搭載した経理・財務領域の拡張アプリケーションを提供

 日本オラクル株式会社は5日、AIを搭載した経理・財務領域の拡張アプリケーションとして、「Oracle Adaptive Intelligent Applications for Enterprise Resource Planning(ERP)」を発表した。

 財務、調達、業績管理、発注管理、生産管理など、日本オラクルの「ERP Cloud」に含まれる既存アプリケーションの機能を強化するように設計しており、高度なデータサイエンスや機械学習を、Oracle Data Cloudやパートナーから得たデータに適用することで、取引業務の自動化やビジネスプロセスの合理化を支援するという。

 また、迅速な判断と業務効率の向上を支援し、企業の収益拡大とコスト削減を実現。財務担当者は、変化に適応するとともに、新たな市場機会を収益に結びつけ、利益率の向上を目指すことが可能になるという。

 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM ソリューション部の久保誠一部長は、「経理・財務部門のユーザーは、技術的な知見がなくても、イノベーティブな技術を具体的な機能としてERPに実装できる。利用者は、業務にフォーカスすることができるメリットがあるとともに、将来の経理・財務システムをすぐにスタートすることができる」とした。

日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM ソリューション部の久保誠一部長

 具体的には、経理および財務業務にアナリティクスやAIを応用することで、売掛業務や買掛業務から、調達、決算業務における業務パフォーマンスの向上や、プロセスの機敏性を高めることが可能。インテリジェント機能により、ベンダー選定における異常値を検知して、ベンダーリスクの回避や不正行為の回避にも役立つという。

 また、ロボットによるプロセスの自動化(RPA)や、AI機能によるタッチレス処理を実現することで、人的ミスの可能性を最少化。あらゆる業務アプリケーションに機械学習を組み込むことによって、業務の迅速化に大きな影響力を発揮できるという。

 さらにAIの活用によって、豊富なインサイトを得られるようになり、ビジネスの先行きを予測した適切な判断が下せるようになることから、最高財務責任者(CFO)をはじめとする財務担当者は、企業内での影響力を高めることができるとした。

 「Oracle Data Cloudやパートナーから得るデータを活用し、財務、人事、プロジェクト管理など複数のチャネルやプラットフォーム全体からインサイトを導き出すことで、ビジネスの戦略的な意思決定を支援することができる」。

ERP Cloudによるデジタル時代の経理・財務業務改革

 なお、「Oracle Adaptive Intelligent Applications for ERP」に提供するAIの「Adaptive Intelligent Apps(AIA)」は、Oracle ERP Cloudの標準プロセスに準拠した形で、事前定義されたAIだ。

 Oracle Data CloudによるWebスケールのサードパーティデータや、企業が所有するデータに高度なデータサイエンスや機械学習を適用することによって、履歴や動的なデータに基づいてリアルタイムに対応。目的に応じて構築した質の高いビジネスインサイトを提供することができ、即時に利用できるという。

 久保部長は、「他社のAIと異なるのは、アプリケーションに組み込まれたAIであること、アルゴリズムの精度を高めるために多くのデータを活用できること、広範なデータ基盤とつながったインテリジェンスを提供できる点が特徴である。ERP Cloudのユーザーであればすぐに利用でき、新たな領域のAIを開発し続けていくことができる点も特徴。世界最大規模のマーケットプレイスのオラクルのデータに加えて、オラクルが購入したデータを活用した学習が可能である」とした。

AIAの特徴
データ・マーケットプレイスの活用

 またRPAとして、Intelligent Process Automationを提供。「経理・財務業務において、今までにない自動化を図ることができる」と位置づけた。

 具体的には、計画および予算管理業務の自動化を行う「Adaptive Intelligence Planning」、単体を含む連結決算プロセス管理全体の自動化を行う「Financial Close Orchestration」、リコンサイル(勘定照合など)業務の自動化を行う「Account Reconciliation」、取引データのタッチレス処理を行う「Touchless Transaction」、データサイエンスや機械学習を利用した不正検知を行う「Automate Financial Controls」を提供することで、経理、財務業務の自動化を実現できるとしている。

Intelligent Process Automation
さまざまな自動化を提供する

 「Adaptive Intelligence Planningでは、最小限の操作でマシンと対話でき、データに基づく計画や予測を実施。Touchless Transactionでは、請求書などのスキャニングおよび取引情報の自動生成が可能になる。また、Automate Financial Controlsでは、リスクの早期検出を自動化する仕組みになる」。

リスクの早期検出を自動化する仕組み
不正の例と、データのパターン
クラスタリング分析で異常値を検出する

 さらにERP領域においてはブロックチェーン技術も採用するとしており、会社間取引での利用のほか、マーケットプレイス上での売買、スマートコントラクトに基づく企業間取引やサプライチェーン管理、雇用記録の分散管理などに活用するという。

ERP領域でブロックチェーンを活用する
ブロックチェーン会社間元帳

 日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド事業本部の桐生卓本部長は、「米Oracleは2018年2月に、ERPの先進的な事例を紹介する『Modern Finance Experience 2018』をニューヨークで開催。これまで提供していた標準定義されたSaaSの中に、機械学習やAI、RPAなどの最新テクノロジーの組み込むことを発表した」と前置き。

日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド事業本部の桐生卓本部長

 「これまでは、自動仕訳ルールの一元管理、複数会計基準と目的別元帳、俯瞰データからのドリルダウンなどの機能にとどまっていたが、新たにグループ会社間取引、連結管理とリコンサイル(Reconcile)、組み込み型BIとアラートといった、これまでにない新たな業務領域をクラウドで提供し、AIおよび機械学習によって、自動化の範囲を拡張していくことになる」とする。

 さらに、「請求書データを自動的に読み取るとともに、機械学習により、その中から、不正や不具合の可能性があるデータを抽出し、それらについて、人が確認するように促す機能を提供できる。これからのERPは、利便性をいかに高めることができるかが重要になる。データの収集、分析にかかる時間を削減し、課題に対するアクションの実施にかける時間を増やすことができるようになる」とした。