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日立、制御システムの運用・保守を24時間365日体制でサポートする「安定稼働サービス」

 株式会社日立製作所(以下、日立)は、制御システムの最適な生涯保全計画(ライフサイクルプラン)を実現する「制御システム安定稼働サービス」の販売を、4月2日から開始する。

 顧客に納入した制御システムの運用・保守を、24時間365日サポートする体制を「Hitachi Control System Service Center(HCSSC)」として新たに構築。OT(Operational Technology)とITに関する技術、ナレッジを結集した独自のサービスプラットフォームを活用し、専門知識を持った日立グループの技術者が迅速に対応するという。

制御システム安定稼働サービスの特徴
ワンストップで対応する
サポートプラットフォーム

 今回のサービスの主体は、日立の大みか事業所となる。日立 制御プラットフォーム事業本部副統括本部長兼大みか事業所長の小林毅氏は、「大みか事業所は、従来の『総合システム工場』から『お客さまの価値創造工場』へと転換を図っており、これまでの制御システムの設計、構築だけにとどまらず、ショーケース・教育サービスを開始。さらに、課題分析・定義といった上流コンサルティングから、運用支援までの業務改革全体サポートする方向を目指している。今回のサービスは、大みかで培ったノウハウ、技術をもとに、顧客とともに、新たな価値を創造することになる」とした。

日立 制御プラットフォーム事業本部副統括本部長兼大みか事業所長の小林毅氏
大みか事業所の事業内容
大みか事業所が提供する制御システム
『総合システム工場』から『お客さまの価値創造工場』へ

 また、制御システムのオンサイトサポートについては日立パワーソリューションズが、IT関連製品のオンサイトサポートは日立システムズがそれぞれ担当する。両社は、HCSSCにおける障害原因分析などでも協力し、日立グループとしてワンストップで対応するとのこと。

 「制御システムは長期稼働が前提で、PCサーバーの製品サイクルが5~7年であるのに対して、制御システムは10~15年のライフサイクルになる。一方で、市場から調達する制御装置や構成部品のライフサイクルが、従来は10年単位だったものが、3~7年と短命化。システムを長期に維持、保守するためのコストが増大傾向にある。また、現場の人員不足や高齢化が課題となっているほか、IoTの浸透に伴い、今後、情報システムと制御システムが密接につながることになり、保守に関しても広範な知見が求められるようになっている」との状況を説明。

 今回の新サービスにより、「障害発生時に迅速な対応が求められる産業・社会インフラ分野の制御システムにおいて、顧客自身が対応してきた運用・保守業務を効率化するとともに、システムの安定稼働に貢献できる」と述べた。

 同社による制御システムの納入実績をみると、2000年から2010年が新規システム納入のピークであり、それらのシステムに関するシステム維持改修に関する相談が増加しているという。

 「国内では、設備の新設案件が減少し、既存設備の高度化と延命化へのニーズが高まっている。また、制御系計算機が10年、制御コントローラが15年の寿命であることと、制御システム納入のピークから逆算すると、2020年以降には、制御システムの維持や保守に関するニーズが急増すると見込まれる。今回のサービスは、制御システムの保守に対する重要度が高まっていくことを想定した取り組みになる」とする。

制御システムを取り巻く概況
制御システム保守に関する概況

 今回は第1弾として、鉄鋼、火力発電、鉄道といった分野向けに展開。今後は、水環境システム、電力流通システム、産業・道路交通分野にも広げる。

 さらに、「まずは自社製品だけに対応するが、将来的には、他社の情報系システム、制御系システムを含めて、システム全体をワンストップで運用、保守できるようにしていく。最終的には、現在納入しているすべてのユーザーに、このサービスを活用してもらいと考えている」とアピールした。

 大みか事業所では、今後、サービス事業の比率を高める考えであり、「長期的には、3~4割をサービス事業にしていくことが望ましいと考えている」と述べた。

 なお制御システム安定稼働サービスは、制御システムを構成するハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションをワンストップでサポートすることになる。

 HCSSCでは、数十人の体制で、24時間365日の問い合わせに対応。障害内容を切り分けし、一次回答を行う一方で、障害内容の分析による障害個所の特定を実施。さらに、原因調査によって対策を検討し、専門チームと開発チームが連携した障害対策や復旧対応を行う。

 オプションでは、顧客の制御システムの稼働状況をリモートで監視するサービスも提供する。へき地や遠隔地の制御設備の監視が可能になることから、高齢化が加速する保守員の配置最適化も支援できるという。

 また、サポートプラットフォームを活用することで、迅速な回答や重要情報の提供、顧客専用部品管理を行うほか、ユーザーポータルの活用による情報提供サービスも用意した。

 「サポートプラットフォームでは、制御システムの運用、保守にかかわるさまざまな技術情報や対応履歴を蓄積し、共有できるものになっている。運用、保守作業の対応履歴や作業マニュアル、システム構成図面をデータベース化し、顧客自身や日立の技術者が、いつでも閲覧、活用できる」という。

 なお、制御システム安定稼働サービスのメニューは、オンサイト保守や引き取り修理、要因調査報告書作成など、安定稼働を支えるための「問題解決の支援」と、定期点検、巡回点検自動化支援、安定稼働モニタリングレポートなどにより、効率的な運用、保守を支える「運用の支援」で構成。今後、メニューを拡充していくほか、AI技術の活用などにより、制御システムの運用、保守の高度化にも取り組むとのこと。価格は個別見積もりになっている。

サービスメニュー
将来的にはシステムライフサイクルのトータルサポートを目指す

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 これまで、制御システムの運用や保守については、正式な契約がなく、トラブル発生の都度、対応チームを編成。「顧客の指示を待ち、それに対応する形で保守を行ってきた」のが実態だった。

 今回の制御システム安定稼働サービスは、事前に契約することで、速やかな対応を可能とするほか、経年劣化への対応や、短命化した構成部品の適切な在庫確保なども可能になり、長期の安定稼働に向けたサービスになると位置付ける。

 メインフレームを中心としたITシステムでは、1990年代にサービスの有償化の動きが始まり、オープン化やダウンサイジングの動きとともに、それが現在の主流となっている。制御システムにおいても、約25年遅れでサービス有償化の動きが始まったともいえよう。

都度対応だった、従来の保守対応体制