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NEC、毎秒10万件超の取引を可能にするブロックチェーン技術を開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)とNEC欧州研究所は15日、取引記録に参加するノード数200ノード程度の大規模接続環境下で、世界最速となる毎秒10万件以上の記録性能を達成するブロックチェーン向け合意形成アルゴリズムを開発したと発表した。

 ブロックチェーンは、参加者がインターネット上でデータの記録と共有を行うための仕組みで、信頼できる組織や中央サーバーを介さなくても改ざんされていないデータを共有していることを保証できるという特徴がある。

 現在、ビットコインを始めとする仮想通貨の処理に活用されているほか、セキュアな情報共有の手段として注目を集め、世界各地で証券取引、貿易取引、エネルギー取引、サプライチェーン、公文書管理など多岐にわたる用途での実証実験が活発に行われている。

 一方で、ブロックチェーンには合意形成アルゴリズムに起因する、記録速度や参加ノード数の限界性という課題がある。ビットコインのブロックチェーンは誰もが自由に活用できるが、毎秒7件の書き込みが性能限界とされており、ビジネス向け用途を想定した参加者限定型のブロックチェーンにおいても、参加ノード数が数十ノードを超えると性能が極端に悪化する。

 また、ブロックチェーンのもう一つの課題としては、データの秘匿性の問題があり、すべての参加者がすべての記録を見ることができるため、個人情報や企業秘密を記録するには支障がある。

 NECではこうした課題に対し、記録性能でも参加ノード数でも従来を上回る拡張性を持ち、データの秘匿性についても従来にない保証を与えるソフトウェアを開発。参加ノード数が200ノード程度の大規模環境下で、毎秒10万件以上の記録性能を実現した。これは、近年の汎用プロセッサが備えるトラステッドハードウェアTEE(Trusted Execution Environment)のセキュリティ機能を最大限を活用して、参加ノードが合意形成するために必要な通信量ならびに通信回数を削減することで実現した。

 また、取引情報を全参加ノードに一律に公開するのではなく、取引情報の公開範囲を限定できる仕組みを開発。これにより、特定グループ内の取引情報はグループに属するノードにのみ公開するという制御が可能になる。

 さらに、IoTデバイスからも高速で安全なデータ参照を実現できる技術も開発。IoTデバイスがブロックチェーンのデータを参照する際には、個々の参加ノードが故障や悪意により記録と異なる情報を回答する場合があるため、複数の参加ノードに問い合わせて検証する必要があり、処理能力が限られるIoTデバイスには負担になる。この課題に対して、参照の際にも各参加ノードのTEEを活用して、IoTデバイスでも高速な検証を可能にした。

 NECでは、開発した技術により達成された性能は、世界規模のクレジットカード取引を支えるシステムに必要とされる毎秒数万件を上回っており、記録性能やノード数の制約によってブロックチェーンの適用を断念していたケースへも対応が可能になると説明。また、取引情報のセキュリティとプライバシーを保証することで、個人情報や企業秘密にあたる取引の取扱も可能になるとしている。

 NECでは、現在取り組んでいる金融機関との実証実験を進めるとともに、今後は金融以外への応用も視野に入れ、社会インフラに要求される性能や機能を実現するブロックチェーンおよび上位レイヤーの研究開発を進めるとしている。